ケニアで恐れられていた人食いライオンの歯をDNA解析、人間を食べた証拠を発見|カラパイア
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ケニアで恐れられていた人食いライオンの歯をDNA解析、人間を食べた証拠を発見

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image credit:Field Museum of Natural History in Chicago

 1898年、アフリカ、ケニアのツァボ川で橋の建設中だった作業者の野営地にライオン2頭が忍び込み、少なくとも28人を殺害した。

 彼らが今日にいたるまで恐れられている「ツァボの人食いライオン」だ。

 この2頭はオスだが、なぜかたてがみがなかった。その後2頭は射殺され、はく製にされ、シカゴのフィールド自然史博物館に展示された。

 最近の研究で、彼らの歯に残されていた毛からDNAを抽出したところ、彼らがどんな獲物を食べていたのかが判明、そこにはやはり人間が含まれていた。

人間を次々と食い殺したツァボの人食いライオン

 1898年3月から12月にかけて、ライオンのオス2頭が、ケニアのツァボ川で建設中だった鉄道橋の作業者のテントに忍び込み、襲いかかるという事件が起きた。

 ライオン2頭は9ヶ月にわたって次々と人間を狩り、労働者たちを恐怖に陥れた。

 やがて彼らは鉄道現場総監督のジョン・ヘンリー・パターソンによって射殺されたが、最終的に犠牲になった人たちは少なくとも28人(35人と言う説も)にのぼるとされている

 「ツァボの人食いライオン」として知られる彼らの遺体は1925年に剥製にされ、アメリカ、イリノイ州シカゴのフィールド自然史博物館で保管されている。

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フィールド自然史博物館に展示されている「ツァボの人食いライオンのはく製 image credit:Superx308 / WIKI commons

ツァボの人食いライオンは人の他にどんな動物を獲物にしたのか?

 今回、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校をはじめとする研究チームは、このライオンの歯に残されていた毛からDNAを抽出し、おそらく彼らが食べただろう獲物について探ってみることにした。

 ミトコンドリアDNAの解析から明らかになったのは、たてがみのないこの2頭は兄弟である可能性が高く、その呼び名のとおり、共に確実に人間を食べていたということだ。

 他にもキリンやシマウマ・ウシ科のウォーターバック、オリックスや・ヌーを食べていたこともわかった。

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シマウマを襲うライオン Photo by:iStock

 研究チームにとって、ヌーを食べていたというのは意外な事実だった。

 というのも、もしこのライオンがヌーを食べたのならば、90kmは移動しなければならなかったからだ。

 これが本当ならツァボの人食いライオンは、想像以上に広い範囲を移動していたということになる。

 あるいは、当時ツァボにヌーはいないとされていたが、じつはそこにも生息していたのかもしれない。

 どちらのケースが正しいのか定かではない。だがツァボの人食いライオンは、ツァボ国立公園の13kmの区域に設置されていた労働者施設で目撃されている。

 そこで彼らは9ヶ月にわたり人間を襲ったが、そこから離れていた時期も数ヶ月ほどあったのだという。

 だとすると、この期間に彼らはもっと獲物が多い地域へと移動し、その時にヌーを食べたのかもしれない。

 ライオンの縄張りは50~1000km2とされるが、獲物や水が乏しい時には遠出をすることもあるのだ。

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川越えをするヌーの群れ Photo by:iStock

ツァボのライオンが人食いになった理由を考察

 もう1つの意外な発見があった。アフリカスイギュウのDNAが見つからなかったのだ。アフリカスイギュウは、ツァボ地域のライオンにとって主要な獲物の1つだ。

 にもかかわらず、人食いライオンがそれを口にしていなかった理由は、ウイルスが関係している可能性があるという。

 当時、ツァボ地域の動物たちに「牛疫」というウイルス性の感染症が広がっていた。 そのせいで家畜の9割が死亡し、アフリカスイギュウにも同様の影響が出た。

 獲物が激減したために飢えていた人食いライオンは、代わりに人間を食べていた可能性があるという。

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現在のツァボ地域に生息するたてがみのないライオンのつがい  image credit:Michael Jeffords and Susan Post

 もう1つの可能性としては、歯痛が指摘されている。

 じつは2頭のライオンの歯には、痛みをともなっただろう損傷がある。そのせいで大きな獲物を捕らえられなかったとも考えられる。

 ちなみにツァボの人食いライオンは、一説では135人のもの人間を食べたとされる。

 だが彼らの毛と骨の安定同位体を分析した研究では、最大で約35人であることが確認されている。片方のライオンの食事の35%、もう片方の13%に相当する量だ。

 これほどの人間を食い殺し、人々を恐怖に陥れたツァボの人食いライオンも、当時の状況を鑑みると、必死に生きていただけなのかもしれない。

 この研究『Current Biology』(2024年10月11日付)に掲載された。+

References: Genomic study identifies human, animal hair in ‘man-eater’ lions’ teeth | Illinois / These 19th century lions from Kenya ate human | EurekAlert! / New DNA findings shed light on Tsavo's infamous man-eating lions | Live Science

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この記事へのコメント、15件

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  1. たてがみの無いライオン?とググったら高温多湿で藪地帯のマサイライオンは元からたてがみが無いのね

  2. 本当だろうか?

    強力な胃酸で消化された肉の情報が歯に残っているなんて信じがたい

  3. 人を食べた理由か……
    北海道のヒグマのように、人間の味を覚えたからという可能性もあるのだろうか。

  4. 映画ゴースト&ダークネスの元ネタってこれか? まぁ野生動物に比べて足速くないし狩りやすい標的だな

  5. 人間は毛もないし皮膚も薄いし食べやすそう。
    なんでタテガミないのかわからんね。

    1. 人間なんて食えない「衣類」を漏れなく着てる上に、骨だらけの上に、骨も硬くてデカくて食べにくいと思うんだが。映画の怪物とかよく服ごと食えるよね。俺はスーパーで馬刺し買ってもパッケージごと食べるとか無理だし、小骨の多い魚は好き好んで飼わないかな。

      あとタテガミ少ないのたぶん地域性です。ケニアあたりのライオンのタテガミはそもそも薄くて少ない特徴あるから、それ顕著に出たんじゃないかと。

  6. 武器があるとは言っても採り易さで言ったら四つ足動物より遥かに楽だろうに滅多に食べないんだから他に選択肢が無かっただけなんだろう
    人間不味そうだもんな…仕方なく食べたんだろうな

  7. 欠けた犬歯の周りの下顎骨が変形しているから歯髄からばい菌が入ってひどい感染症を患っていたのかも

  8. 「毛と骨の安定同位体を分析」ってのが何のことか分からんけど、
    それを調べたら何人の人間を食べたかなんてわかるもんなのか

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