「日本再興戦略」と「誤解だらけの人工知能」を読んだ
ちょっと前に「日本再興戦略」と「誤解だらけの人工知能」という本を読みました。
- 作者: 落合陽一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/01/31
- メディア: 単行本
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誤解だらけの人工知能?ディープラーニングの限界と可能性? (光文社新書)
- 作者: 田中潤,松本健太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: Kindle版
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「日本再興戦略」は、科学者・アーティストと色々な肩書きを持つ「落合陽一」さん(最近メディアの露出も多いので知っている人も多いかもしれません)が、書いた本で、「これからの日本は、こうしたらよくなるはず」「少子高齢化はチャンス!」といった、日本を良くしていく方法やアイディアに関して、技術的側面、文化的側面、教育的側面と多くの観点から自身のアイディアや考え方を述べています。全体的にポジティブな内容で、これから日本を支えていく人に対して、落合先生なりのエールを送っているような本、と私は感じました。
落合先生だと、以下の動画とかも面白かったです。研究室でROS使ってるんですね
追記:動画削除されていたので、リンク削除しました。公式だと思っていたのですが、無許可の動画だったのかもしれません
「誤解だらけの人工知能」は、ディープラーニングと音声認識の専門家である「田中潤」さんと、データ分析の専門家である「松本健太郎」さんが、ディープラーニングに関する技術的解説と、ディープラーニングが今後世の中でどのように使われいくか、どのように社会を変えていくのかについて語った内容をインタビュー形式でまとめた本です。ちなみにこの本は「人工知能=ディープラーニング」という定義で書かれています。本の中で、人工知能の定義は定まっていないと言いながら、ディープラーニング以外を人工知能と認めないという書き方はちょっとどうなの?と感じましたが。ディープラーニングの専門家の田中さんの説明を、松本さんが専門家以外にも分かるように翻訳しているような形なので、専門家でない方でも理解しやすい内容と思います。また、将来予測に関してもデータや論理に基づいた説得力のある内容が記載されていると感じました
両書とも、全然違うきっかけで買って、たまたま同じようなタイミングで並行して読んでいたのですが、両書とも日本の将来予想で自動運転とロボットに関して記述があるのですが、その内容のテイストが違って面白いなと思ったので、今回はその部分を少し紹介してみようと思います。
自動運転の将来
「日本再興戦略」では、「2025年にはある程度自動運転車が走っている」とかなり楽観的に書かれているのに対して、「誤解だらけの人工知能」では、2030年までは待たないと街中は走行できないと、結構慎重気味に書かれています。
また、ロボットに関しても「日本再興戦略」では、ロボットがどんどん人の作業を代替できるから、少子高齢化をカバーできる。そうなれば、日本のロボットは品質が高いから海外にも売り放題と、かなりハッピーな予想が書かれているのに対して、「誤解だらけの人工知能」は、アマゾン・ピッキング・チャレンジ、アマゾン・ロボティクス・チャレンジの例を挙げて、まだロボットで出来ることというのは限定的ということを書いています。ただ、両書とも基本的には今後ロボットが社会に浸透していくのではないかという予想は共通しています。
ここらへん、私はどう思うかというと…よくわかりません(笑)分かるのは、基本的に人は楽な方に流れるので、自動運転だったりロボットの人の代替が進んで行く方向性は間違い無いと思います。分からないのはその普及する時期ですね。
自動運転は、技術的には人より事故しない自動運転技術を確立するのは十分可能だと思います(一部はすでに出来ているかも?)。ただ、事故の確率はゼロにはきっとできなくて、そのときの事故の責任や補償をどうするかという責任問題だったり、自動運転車が人を轢き殺す社会を、人は許容できるのかという哲学的な問題だったり、多くの問題が絡んでくるのが本当の難しさなのかなと思います。そして、それらの問題は技術的というよりは、政治的な要素が強いので、私にはさっぱり分からないですし、正直あんまり興味もなかったりします。
なお、この記事を書いたのは2週間くらい前なのですが、記事が公開される直前、自動運転による痛ましい事故が起きてしまいました。
Uber、アリゾナで自動運転試験中に人身事故。史上初の死亡事例に | ギズモード・ジャパン
結局はこういう事故を、社会が、我々が受け入れられるようになるまで、どれだけの時間がかかるのかという問題なのだと思います。
ロボットの将来
ロボットに関しては、日本の少子高齢化がヤバイのでロボットに頼るしかない。というのが、実情なんじゃないかなと個人的には思っています。
ただ、日本のロボットって工場とかの決められた環境で、決められた作業を高速・高精度で行う産業用ロボットでは、落合先生の言う通り一日の長があるのですが、人の作業を代替するような知的なロボット(サービスロボット)の分野に関しては、日本って実はどちらかというと既に後進国なのですよね。「誤解だらけの人工知能」で出てきた、アマゾン・ロボティクス・チャレンジでも、DARPAロボティクスチャレンジという世界的なロボット競技会で、日本の順位は低い方だったりします。そこらへんの実情は、以下の論文が詳しいので興味ある方は参照ください。
DARPA ロボティクスチャレンジ決勝戦でのロボットシステム開発と教訓
あと、そもそもロボットはそこまで役に立たないという根本的な問題(笑)もあります。そこらへんは、以前以下記事で書いたので興味ある方はどうぞ。ちなみに、このロボットは海外製ですね。
ロボットだと、最近Twitterで弱いロボットというのが話題になっていました。
技科大が開発してる「弱いロボット」が愛おしい。ゴミ箱ロボットは自分ではゴミを拾う事が出来ず、ゴミを見つけるとアワアワして周囲の人にアピールする。誰かが拾って入れてくれたらお辞儀をして去っていく。人の助けを促して一緒に共存する為の「弱さ」を持つロボットって発想が素敵すぎる。 pic.twitter.com/tnRkSEGPUT
— まみぴよザダークネス (@mamipiyo666dark) 2018年3月10日
実は私も、去年のRoboCupで実物を見たのですが、非常に面白いコンセプトだなと思いました。
動きを見ると、これめちゃ可愛く思えます
今の技術進歩のペースからすると、少なくともあと10年〜20年以上は、ロボットは人の手を借りながらなんとか仕事をするという状況が続くはずなので、今後の労働不足をロボットの共存で乗り切るためには、実はこういう研究が重要になってきたりするのかもしれないなと思ったりします。こういう感性や発想って、日本ならではという気がするので、日本で頑張って欲しいですね。コストではもう日本は勝てないので。
まとめ
「日本再興戦略」と「誤解だらけの人工知能」を読んだ感想と、両書で共通して書かれていた自動運転・ロボット技術に関して少しコメントしてみました。両書とも色々な気づきがあったので読んで良かったなと思いました。そして、注意しないといけないのは、どの本もある意味その人のポジショントークであるということですね。もちろんこのブログも例外ではないです。大切なのは、それを理解した上で自分で考えることだと思います。
落合先生は、色々分かっている上で、敢えてそのポジションから非常にポジティブな表現をされていると思うのですが、日本の将来って、客観的に数字で捉えると悲観的な要素が多いと思っています。作家の村上龍さんが、2000年の初めに書いた「希望の国のエクソダス 」という本の中で
「この国には何でもある。ただ、『希望』だけがない」
というフレーズを書いて話題になりましたが、この言葉って、20年近く経った、今も同じ(もしくはそれ以上)の重みを持って存在しているような気がしています。
「希望の国のエクソダス 」では、世代間の断絶だったり、今の仮想通貨に通ずる地域通貨の話などもあり、今再読しても面白い本かもしれません。
果たして日本に希望はあるのでしょうか?個人として、日本人として、どう生きていくのか。難しく悩ましい問題ですが、少しでも良い方向になるようなことをしていきたいですね。
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/05/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 落合陽一
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誤解だらけの人工知能?ディープラーニングの限界と可能性? (光文社新書)
- 作者: 田中潤,松本健太郎
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