自作全方向移動型ラジコン戦車完成までの記録 ~外装編~
自作全方向移動型ラジコン戦車完成までの記録、2回目は外装について。
今回は趣味丸出しのデザインと、3Dプリンタ造形物の表面処理のノウハウについて書く。
ちなみに1回目はこちら
デザインについて
コンセプトは、狭い市街地を縦横無尽に移動できるステルス自走砲。
ポーランドのステルス戦車「PL-01」のあまりにも近未来的でスタイリッシュなフォルムを参考に、メタル○アなアレとか、3DSのマイナーな全方向STGの自機とかを取り込みつつデザインした。
なぜ三脚なのか?
完全に予算の都合。
モーターやオムニホイールが高いので、ケチる為に最低限全方向移動が可能な三脚にした。
脚の外装は何度も3Dプリンタで出し直したりしたし、最終的にモーターとオムニホイールを変えるはめになり、脚のフレームをモデリングからやり直したりしたので、四脚にするよりはコストは抑えられたはず…。
モデリングと3Dプリンタ出力について
モデリングにしようしたソフトは、無料で使える「Autodesk 123D Design」
初めてCADっぽいソフトを使ったが、機能がシンプルだった為、ネットで調べながら使い方を覚えていくのはそんなに時間がかからなかった。
紙に3面図のラフを描いてから123D Designでひたすらゴリゴリモデリング。
モデリングにはなんだかんだで3ヶ月位かかった。
その中でいくつか苦労した点がある。
モーターなどの実物との寸法合わせ
モーター等、実体が存在するパーツと3Dモデルのサイズやネジ穴の位置を合わせないと接続できない。
丸や四角の単純なものでも良かったのだが、ネジ穴の位置を合わせる必要があるため、結局ノギスで寸法を測って3Dモデルを作ったものもある。
それが、このサーボモータ。
筋彫り
メカのリアルさと密度感を出すには筋彫りは欠かせない!ということで3Dモデルに筋彫りを入れることに。
筋彫りしたいモデルの表面にPolylineを生成、Polylineの末端に0.5x0.5x0.5mm程度のBoxを配置して、sweepを掛けると、Polylineにそって四角い線形オブジェクトができる。
それと筋彫りしたいモデルを選択し、Subtractして削り取って完成。
平面上はそこまで苦労しないが、曲がり角もまたいで続く筋彫りは、面毎にPolylineを生成してうまく繋げるのが難しかった。
また、出力してわかったが、市販のプラモデルほど細かい筋彫りを作っても、積層式の3Dプリンタで出力すると膨張して筋彫りが埋まってしまう。
何回かやり直してだいたい0.5mmくらいの幅と深さがあれば筋彫りが見えるように出力できる事がわかった。
これも3Dプリンタの精度や出力方式に寄って変わってくると思うので余り参考にならないかもしれないが。
組み立てやすさ、強度
組み立てる時に、ねじとドライバーが入り込めるか、しっかり固定できるかなど結構考える事があった。
最終的に、組み立てられは出来たが強度的に不安が残る結果になってしまった。
一応動かす分には問題ないが耐久力は低そうだ。
普段何気なく分解したり組み立てたりしている電化製品やおもちゃも、少ない部品数で簡単に組み立てられるよう、職人の手によって設計されている事が見に染みてわかった。
3Dプリンタ造形物の表面処理
3Dプリンタで出力したものは出力方式によるが大なり小なり表面がなめらかではない。
今回3Dプリンタで外装を造形するに辺り、いかにも3Dプリンタで出力しました感が出るのを避ける、という目標を立てた。
今回、足回りや砲塔等の小さめのパーツは自宅の3Dプリンタ(ダヴィンチJr)、胴体などの大きいパーツは外部サービス(DMM.make)を利用して出力した。
それぞれ材質が違うので、個別に表面処理について書いていく。
まず、足回りや砲塔等の小さめのパーツから。
小さなパーツは自宅にあるダヴィンチJrで出力した。
ダヴィンチJrは積層式の3Dプリンタで、フィラメントの素材はPLAのみ使える。
PLAは、通常のプラスチックよりも硬めの素材で、特に透明のものはかなり硬い。
また積層式で出力した造形物は、積層痕というレコードの表面のようなスジができる。
表面処理の方法は、まず軽くサーフェイサーを吹いて乾かす。
乾いたら、ラッカーパテや溶きパテを厚く盛って積層痕を埋める。
ラッカーパテは乾燥後のヒケが大きいので、ポリパテやエポキシパテとかのほうがよいかもしれないが、臭いやAB液の混合などが面倒くさそうなので今回はラッカーパテを使用した。
パテが乾いたら当て木をした紙やすりで研磨する。
紙やすりは、280番くらいの粗さがよさ気な感じだった。
400番だとなかなか削れず、100番以下だと荒すぎて傷が残る感じだった。
あとは積層痕が消えるまでこれを繰り返す。
1つのパーツに付き3~4回ほど繰り返した気がする。
ひたすら盛って磨いてを繰り返して、手触りがツルツルになると、脳汁が出るようになってしまった。
反省点としては、脚のミサイルハッチ風のでっぱり群が隙間が狭いせいでヤスリがけが非常にしづらくなってしまった点。
別パーツとして出力するか、筋彫りだけにしておくかにすればよかったと思う。
どちらにしろモデリングの段階で表面処理について考える必要があることが分かった。
DMM.makeに発注したパーツは、一番安いナイロン(ポリアミド)で出力した。
それでもサイズが大きかったため、1つのパーツに付き1万円前後かかっている…。
ナイロンは、PLAに比べると柔らかく、表面がザラザラしている。
2mmくらいの厚みにしたが、若干柔らかくてしなってしまうことがある。
もう少し厚くするか、裏地に凹字のような骨っぽい造形をいれたら強度が増すかもしれない?
表面処理については、ナイロンは柔らかさ故に普通に紙やすりでゴリゴリ磨いても全然なめらかにならなかった。
これには溶きパテをかなり厚く盛って、乾燥後に非常に優しく表面を磨く感じで対応した。
ただ、パーツが大きいので全体に厚く盛ることができなくて仕上がりにムラが出てしまったのが残念。
塗装について
表面処理が終わったら、次は塗装。
流石に自宅で塗装するわけに行かず、新宿マルイの模型ファクトリーで塗装した。
塗装に使用したスプレーは、タミヤのガンシップグレイと、NATOブラウン。
ボディ全体にガンシップグレイ、フレーム(っぽいパーツ)にNATOブラウンを使用した。
流石に全長40cm超えの模型なので、ガンシップグレイの缶スプレーを3缶ほど使い果たした…。
最後のパーツ組み合わせの時に気づいたが、表面の見える範囲だけ塗装していたが、連結部の隙間から中の下地が見えてしまっていたりしてちょっと残念な感じになってしまった。
見える範囲だけじゃなくてなるべくまんべんなく塗装したほうが良いようだ。
塗装が済んだら、塗膜の保護と質感を良くするためにトップコートのつや消しをまんべんなく各パーツごとに3回ずつくらい吹いて外装は完成とした。
完成写真
完成写真は、Maker Faire Tokyo 2016で展示した時のもので。
塗装してから気づいたが、ぶつけると塗装が禿げてしまうため、ラジコンのくせに操縦に神経を使う高級車のようなラジコンになってしまった。
だから3Dプリンタで造形したラジコンやロボットはあまり塗装しないんですね!