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作家が語る「わたしの新刊」

4作目の表紙はツタンカーメン! 読み聞かせで大人気「おめんです」シリーズの作者、いしかわこうじさんインタビュー

2024.10.25

おめんをめくると、かわいい動物たちが登場! あかちゃんから楽しめる読み聞かせで大人気の「おめんです」シリーズに、いよいよ4作目が登場しました。作者のいしかわこうじさんに、この絵本についてお話をうかがいました。

2013年に発売以来大人気の絵本『おめんです』今回はじめてこのコーナーでいしかわさんにお話をうかがいます。そもそもこの企画はどのようにはじまったのですか?

僕は子どもの頃から、お祭りなどに出店しているおめん屋さんが大好きでした。鬼、お多福、ひょっとこなど和風なおめんもあれば、仮面ライダーや鉄腕アトムのおめんもある、カラフルなゴチャ混ぜ感が楽しかったですね。小学1年生の時に自分で作った鬼のおめんを、今も持っているんですよ。

僕が親になってからは、子どもにおめんを買ってあげて、一緒に遊んでいました。おめんをかぶると、強気になったり、かわいくなったりと、人格もちょっぴり変わっちゃうのが面白いですよね。おめんは、人間が簡単に変身できる、不思議な力を持っているんです。

ちなみに、僕の尊敬する絵本作家レオ・レオニさんは「仮面は人類最大の発明である」との言葉を残しています。僕も全く同感ですね。こうした僕の長きにわたるおめんへの興味から思いついたのが「おめんです」という絵本なのです。

『つくってあそぼう! おめんブック』のカッパのお面をかぶる娘さん

毎回、登場する「おめん」を描くために、実際におめんの資料もたくさん集められているとうかがいました。このシリーズを作るための取材の背景をぜひ教えてください。

「おめんです」シリーズでは、手に取れそうなほどのリアルな質感のおめんを描きたいと考えました。その方が『おめんです』の楽しさを最大限に引き出せる!と思ったからです。それには実物の観察がかかせません。

いろんな国の博物館に行って、各地のおめんをたくさん観てきましたし、各地の民芸品店などで、鬼やお多福、狐など、手作りの本物のおめんをいろいろ集めてきました。秋田の男鹿にある「なまはげ館」では、館内で職人さんが手彫りで制作したおめんを購入することができて、とても嬉しかったです。

イタリアのポンペイの売店では、『おめんです2』に登場する太陽のおめんの原型になるテラコッタを見つけました。

手作りのおめんを実際に手にとると、ダイナミックな立体感、絵の具の盛り上がりや光沢、筆の勢いやかすれなど、職人さんの腕の冴えに驚かされます。こうした僕自身の感動をおめんの絵の中にこめ、自分ならではのデフォルメも加えながら、長い時間をかけて仕上げていきました。

「おめんです」シリーズが、お子さんだけでなくおとなの皆さんも一緒に楽しんでもらえているのは、こうした僕の「本気さ」が絵本の画面から伝わってくるからなのかもしれません。

『おめんです4』の表紙は迫力のツタンカーメンですね! 今回はどのように登場するおめんを決めていったのですか?

僕は、昔からエジプトのピラミッドや古代文明に興味があったのですが、20年前にエジプトを旅行し、カイロのエジプト考古学博物館で、ツタンカーメンの黄金のマスクを見ることができたんです。

実に3300年前のものですが、その精緻で華麗な造形に本当に感動しました。また3年前に再訪した大英博物館では、エジプト王家のマスクや棺の展示をたくさん観ました。このような鑑賞体験を通じて、僕の中でツタンカーメン愛がふくらんでいったんです。たくさんの資料も集め、じっくりと描いたので、リアルで親しみが感じられるツタンカーメンのおめんにできたと思います。

そして、そのツタンカーメンのおめんをかぶっているのはトラさんにしてみました。こちらは、しましま模様、という共通点から発想しました。

『おめんです 4』で、いしかわさん一推しのページはありますか?

モアイのおめんのページです。モアイは子どもの頃から好きで、よくマンガで描いていたんです。

でも今回、リアルなおめんにして描いてみると意外と難しい。灰色の石の質感を出すのに苦労しましたね。大阪の国立民族博物館に巨大な実物大のモアイがあり、これがとても参考になりました。

最後の見開きページのおめん屋さんには、2枚のモアイのおめんがならんでいるので、どこがちがうか、見比べてみてくださいね。

それから、モアイのおめんをかぶっているのはアルパカさん。ちょうどこの絵本を制作しているときに『ビッグブック おめんです3』が、第33回けんぶち絵本の里大賞の「びばからす賞」を受賞! という、うれしいニュースが飛びこんできたんです。

それで、北海道剣淵町での表彰式に出席したのですが、現地の牧場ではじめて、本物のアルパカさんに出会って大変感激したんです。飛行機で東京に帰ってきた時にはもう、「モアイのおめんをかぶっている動物はアルパカさん!」と決めていましたね。

本物のアルパカさんとじっくりふれあえたので、美しく波打つ毛なみや優しいお顔をうまく描くことができました。

いしかわさんの絵本作品はこれまでにない斬新なしかけも魅力ですよね。どんなときにアイデアがうかんでくるのですか?

僕は生活の中でいつも、絵や絵本のことを考えている気がします。いろんなものを見ながら、インプットと思考を常に行っているんですね。そうして得たモヤモヤした思いの無数の断片が、頭の中に溜まってきて、ふとした時に結晶化し、アイデアとして雪のように降ってくる感じです。

読者の方から届いてうれしかった感想などはありますか?

「『おめんです』に子どもが夢中です!」とか、「シリーズを全部集めて楽しんでいます!」などの報告をいただくと、絵本を作っていて本当によかったなあ!と思います。新しい絵本作りの励みにもなりますね。

絵本のしかけなどで、ものとしての絵本を大切にするいしかわさん。絵本を楽しむ読者や親子にメッセージをお願いいたします!

これは僕が講演会等でよく話していることですが、絵本は「もの」、物体なんですね。お話と絵が絵本の面白さの中核ではありますが、記憶に強く残るのは、表紙のデザインだったり本の匂いや手触りだったりもすることもある。1冊の美しい絵本が、生きていく上での心の支えになることもあると思います。

僕は自分の絵本の装丁も、自分でデザインしています。そして絵本作り全体をとっても楽しんでいます。読者の皆さんにも、絵本を全体で受けとめて、愛でていただけたら嬉しいです。

それから、お子さんと一緒に楽しんだ絵本、夢中になった絵本は、ぜひ取っておいてほしいと思います。お子さんが大きくなった頃に一緒にその絵本を見たら、楽しかった思い出が、きっと鮮やかによみがえってきます。そしていつか、お子さんがご自分の子どもを持った時に、その絵本を自身で読み聞かせてしてあげられたら……。本当に幸せですよね!

たくさんのおもしろいお話をお聞かせいただき、ありがとうございました! ぜひ多くの方にシリーズで楽しんでいただきたいですね。

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