株式会社米シスト庄内 | 米粉商品開発等支援対策事業 取組事業の紹介

生産者が米からつくる米粉100%かりんとう、尖った新フレーバーで潜在層を刺激

株式会社米シスト庄内(以下、米シスト庄内)は、山形県の米どころ庄内町の生産者8人が1998年に組織し、米の生産、加工、販売を手がける六次産業化した農業生産法人です。同社が自社栽培米でつくる代表的な加工品が、米粉100%の「かりんと百米(ひゃくべい)」です。

庄内産の特別栽培米、かりんとうに加工して全国へ

「かりんと百米」の販売開始は2012年。前年に発生した震災の影響で輸出用米の流通がストップしたため、新規需要米の生産を米粉用に切り替え、自社商品をつくろうとかりんとうの開発に取り組んできました。

事業立ち上げ当初から開発製造の責任者を務める國本琢也さんは、「かりんとうは社長が好きで、お土産の需要もあるだろうとその開発を始めました。米粉入りは他社でもたくさんありますが、米農家のプライドにかけて米粉100%にこだわりました」と話します。

庄内産の特別栽培米、かりんとうに加工して全国へ

米粉だけでつくってみようと商品開発に着手したものの、小麦粉を米粉に替えてつくることは難しく、試行錯誤を重ねてようやく現在の製造方法を見い出したそうです。そのひとつが「米粉を湯ごねしてアルファ化させて生地をまとめる方法に気づけたことです」と國本さん。さらに「揚げ油をサラダ油から米油に切り替えたことで味が各段にレベルアップしました」と言葉を続けます。
もともと米粉には小麦粉と比べて吸油率が低く、その生地をくせがなく他の油と比べて経時酸化しにくい米油で揚げたことで、米農家がつくるかりんとうは商品化へと大きく前進しました。

「かりんと百米」に使われる米粉は自社で生産した特別栽培米の「はえぬき」。米シスト庄内では会社発足以来、全量・全品種を特別栽培米にこだわり、農薬と化学肥料の窒素成分を県の一般的な慣行農法と比べて5割以下に削減。現在、同社が管理している田んぼの総面積は100ヘクタールに及びます。

新商品はマサラ味、本格スパイスで打って出る

新商品はマサラ味、本格スパイスで打って出る

「かりんと百米」は小袋サイズで、従来は黒糖、白糖(きび糖)、胡麻、庄内青きなこ、海老塩、ピーナツ、庄内野菜(赤パプリカ、タマネギ、ゴボウ、ホウレンソウのミックス)の7種類があり、単品でお土産に、詰め合わせでギフトにも好適です。首都圏や東海での物産展、地域にバイヤーを招いての商談会などを通して、販路は全国へと広がりました。OEMの取引先も全国10事業者以上にのぼります。

「米粉かりんとうは地場のお米でつくることができ、フレーバーの幅も広いので地域の特産物と組み合わせてお土産品にしやすいアイテムです。そうしたニーズで製造委託の声をかけてもらうことも多いです」と國本さん。自社商品には、庄内特産の青大豆でつくる青きなこや遊佐町の赤パプリカなどを使用しています。さらにOEMの試作・製造でも商品開発のノウハウを蓄積してきました。

そして、自社商品で8種類目のフレーバーとして新たに開発したのは、意外にもインドのブレンド香辛料「MASARA(マサラ)」です。
「今までとは違う層へ広げるために、しょっぱい系のかりんとうをつくろうとカレーライスのイメージで模索していました」と國本さん。スパイスやカレー商品の企画・開発・販売を手がける合同会社TSUNOKAWA FARM(東京都)とのコラボレーションの実現で方向性が決まりました。「お家需要やキャンプ飯でスパイスの需要が高まっていて、これなら私たちが逃している10~30代の潜在層にリーチできると思いました」と商品開発の背景を語ります。

新商品はマサラ味、本格スパイスで打って出る
商品開発で米粉の優位性を実感、効率化とコスト削減で消費拡大へ

商品開発で米粉の優位性を実感、効率化とコスト削減で消費拡大へ

新しいフレーバーへのチャレンジは、初めて扱うスパイスに苦戦を強いられました。「生地にマサラを練り込んで揚げますが、熱で香りがすべて飛んでしまうんですよ」と國本さん。だからといって、マサラをまぶしただけでは生地との一体感が出ません。そこで、マサラを生地にも練り込み、仕上げにまぶす製法を採用。難しいのはその配分です。
「辛すぎないもののマイルドに抑えることはぜず、スパイス感を際立たせて濃いめのパンチのある味に仕上げました」と國本さん。その言葉から絶妙なバランスと微妙なさじ加減が伝わってきます。
2024年1月の本格販売で新たに商品ラインナップに仲間入りした「MASARA」が、発売12年目を迎えた「かりんと百米」にスパイスを効かせてくれることでしょう。

一方で、油脂の値上がりや人材確保の難しさから、コストダウンや作業効率化が課題でした。同社は、今回の新商品の開発に合わせて濾過器によって油のコストを従来の約3分の2に下げ、新型の印字機の導入でパッケージの印字にかかる時間を3分の1に減らしました。また、OEMの受託元から譲り受けた製粉機も近々稼働させ、米の生産から製粉、加工、販売までの一貫体制の強化を目指しています。加工所がグルテンフリーに対応していることからも新たな需要が見込まれ、伸びているOEM需要にも対応し国産米粉の消費拡大につなげる構えです。

米の生産者でもある國本さん。「小麦粉の価格が上がったり、手に入りにくくなっても、日本には米粉があるので安心です。米粉の製粉技術やそれを使う技能も上がり、米粉だからおいしい商品をつくれたという自信もあります。まだ広がっていない米粉の優位性を発信していきたいです」と米粉のポテンシャルを語ってくれました。

商品開発で米粉の優位性を実感、効率化とコスト削減で消費拡大へ