アルファ電子株式会社 | 米粉商品開発等支援対策事業 取組事業の紹介

産学連携で商品開発、福島県産米粉100%パスタを新発売

電子・機械部品メーカーのアルファ電子株式会社(以下アルファ電子)が、事業再構築補助金を活用して福島県須賀川市に米粉麺を製造する自社工場を構えたのは2022年。原材料の仕入れから、製粉、製麺、包装までの一貫体制で、福島県産天のつぶを使用した自社ブランド「う米めん(うまいめん)」のほか、OEMでも米粉麺を製造しています。

宮城学院女子大学とのコラボが開発を後押し

宮城学院女子大学とのコラボが開発を後押し

今回の新商品開発は、同社代表取締役の樽川千香子さんが、コープ東北系列の震災復興ブランド「古今東北」のバイヤーから、宮城学院女子大学との産学連携で米粉100%のパスタの商品開発ができないかとの依頼を受けてスタートしました。

しかし、グルテンを含まない米粉だけでの製麺は容易なことではありません。産学連携プロジェクトに着手した当初、アルファ電子は米粉100%麺の開発途上でした。「本来はでんぷんをつなぎにすることで麺の生地が強固になりますが、使わなければ生地が柔らかく製造が難しくなります」と樽川さん。女子大生に試食してもらうと、「つなぎを使用した麺よりも100%の麺のほうがもっちりとしておいしい」という感動の声。その期待に応えようと、開発を最終段階からゴールへと推し進めてきました。

「自社ブランドの『う米めん』では、つなぎに馬鈴薯でん粉を数%使用していますが、今回の産学連携事業では米粉100%がテーマ。福島県産天のつぶ米粉95%に別の米粉5%を配合したことで、まとまりのある、もちもち食感のパスタができました」と、樽川さんが企業秘密の一歩手前まで打ち明けてくれました。

国産米粉で小麦粉の生パスタに近い食感も

「古今東北」は、東日本大震災からの復興への思いを込めて、東北各地のえりすぐりの食品や加工品を集めたブランドです。販売元の株式会社東北共同事業開発が、毎年、宮城学院女子大学の現代ビジネス学部の学生に授業の一環で、つくりたい商品のアンケートを取ってきたなかで、2022年には「米粉パスタ」という意見が複数上がってきたと言います。

「学生のみなさんも、昨今の食料自給率の問題や社会的な通念から米粉に注目したそうです。また、米粉を使用した麺はもちもちしているとの認識があり、その特性を生かしたパスタができないかと考えたそうです」と樽川さんが、女子大生の思いを代弁してくれました。

国産米粉で小麦粉の生パスタに近い食感も
国産米粉で小麦粉の生パスタに近い食感も

宮城学院女子大学の学生とは商品の企画段階から打ち合わせ、何度も試食を繰り返し、目指すもちもち食感が出るように米粉の配合や麺の太さを決め、量産体制を築きました。商品のネーミングとパッケージは女子大生が考案。2023年8月24日、オファーから1年半をかけて開発した、米粉100%の「古今東北 福島県産天のつぶ使用 もちっと米粉パスタ」が満を持して発売されました。

麺1人分90gは一見すると少なめですが、食べ応えがあるのも米粉の特徴で、お腹を満たしてくれる量。米粉ならではの風味や食感がありながらも、試食した関係者からは「小麦の麺に近い印象がある」といううれしい評価もありました。

「小麦の麺に近いにもかかわらず原料は国産米なので、グルテンアレルギーの方はもちろん、そうでない方でも普段のパスタとそれほど変わらずおいしく食べていただけて、健康面でもプラスアルファ。生活者にも選んでもらえると期待しています」と樽川さんは新商品の展望を語ります。

メーカーのものづくりで米粉の普及に貢献する

「米粉麺の製造はまったくの異業種からの参入でしたが、ここへきてメーカーのものづくりの強みが生かされていることを実感しています」という樽川さん。医療機器・精密機械のOEMを本業とするアルファ電子が、米粉麺の開発に着手し、自社製造するようになったきっかけは、2011年の東日本大震災にさかのぼります。娘を連れて新潟県に避難した樽川さんが、米粉商品の開発・製造する企業からその紹介を受けました。家業を継ぐためにアルファ電子に入社し、景気に左右される受託製造業の弱さを痛感し、自社商品をつくろうと取り組んだのが米粉麺でした。

メーカーのものづくりで米粉の普及に貢献する
メーカーのものづくりで米粉の普及に貢献する

「日本一おいしい米粉麺をつくることを目標に、おいしさの根拠を追求してきました」という樽川さん。工学院大学の山田昌治教授に米粉の評価試験を委託し、天のつぶやコシヒカリの粘土特性から、粘りが出る時期と硬化する速度が製麺に適していることを確認しました。科学的根拠に基づくものづくりはメーカーの信条です。

また、「従業員にも品質意識が根付き、食品の安心・安全へも高い意識で取り組んでいます」と樽川さん。原材料の調達は、新規需要米の申請をサポートしながら生産者から直接仕入れ、製粉、製麺、カット、包装まで一貫体制でできる数少ない米粉麺メーカーです。現在、同社須賀川工場での生産規模は、日産2000~2500袋、米粉の製粉は400kg。OEM生産を受託し、学校給食への供給も始めています。

「さまざまな形で米粉の普及に貢献したい。今回の米粉100%パスタの開発は他社との差別化になる大きな一歩です」と事業を通しての抱負を語ってくれました。