合同会社ZONE | 米粉商品開発等支援対策事業 取組事業の紹介

南幌の若者たちが生産するゆめぴりか。おいしさと農業の魅力を米粉で発信

南幌の若者たちが生産するゆめぴりか。おいしさと農業の魅力を米粉で発信

道内の米どころと呼ばれる空知郡。水田風景が広がる南幌町で、農業で町おこしをする若者たちのチーム「農猿」が活動しています。そのメンバーが自ら生産した北海道ブランド米・ゆめぴりかを使って、ホットケーキ用のミックス粉を新たに開発。チームを運営する合同会社ZONE(ゾーン、以下ZONE)から、2023年10月に発売されました。その開発ストーリーを、同社事務局の城地真吾さん、橋本壮吉さんに聞きました。

米粉を農産加工の第一歩に、そこから広げる可能性

米粉は農猿が初めて手掛けた農産加工品です。もともとはメンバーが生産したゆめぴりかをブレンドした精米「農猿ゆめぴりか」を催事やイベントで販売していました。
「おいしい米なら空知のどこにでもあり差別化ができません。雑談から米粉で麺をつくりたいという話が出て、加工品をつくるために、まず米粉にしてみることにしました」と城地さん。ノリの良さとフットワークの軽さは農猿の身上。2018年、道内の製粉会社ツカモトミルズで製粉してもらったゆめぴりかの米粉を催事で販売すると、風味がよく、製菓用に向いていると評判は上々。その米粉を「ゆめぴり粉」とネーミングして売り出しました。

ゆめぴり粉の二次加工品として、まず企画したのはドーナツでした。町に洋菓子店がなくなって久しい南幌町の手土産をつくりたいと考えてのことでしたが、量産したドーナツは冷凍で納品され、常温に戻してからの日持ちが短く、ロスが出やすいなどの課題もありました。そこで、新たに企画したのがホットケーキミックスです。本事業への応募で、その商品開発に弾みがつきました。

米粉を農産加工の第一歩に、そこから広げる可能性
グルテンフリーを求める人へ、材料は無添加・オール北海道

グルテンフリーを求める人へ、材料は無添加・オール北海道

農猿では、1袋400gのミックス粉を販売していましたが、容量が大きいぶん価格が高くなるため、今回の商品開発では買う人が手に取りやすいように使い切りの200gに。材料の配合とパッケージも新たに開発しました。ホットケーキミックスの配合は、パティシエの沖浩二さんが農猿のメンバーと一緒に考えてくれました。

「米粉をつくってみたら、グルテンフリーだったり、切実に小麦アレルギーで困っている人が僕らの商品を求めてくれたので、米以外の材料も妥協せず、オール北海道産で無添加にこだわりました」と橋本さん。新商品では、砂糖をてんさい糖に変更し、道産のバターを使用しています。販売価格を抑えるためにバニラビーンズは不使用ですが、シェフが遜色のない風味に仕上げてくれました。

「つくり方の工程はできるだけシンプルにしてもらいましたが、卵はLサイズ、牛乳は室温に戻すなど、おいしくつくるためのシェフのこだわりがパッケージ裏面のレシピに表れています」と城地さん。そのパッケージは南幌町への移住者が立ち上げたデザイン会社、サッポロッカのデザイナーに依頼。上質な暮らしを連想させるおしゃれな雰囲気に仕上がりました。

グルテンフリーを求める人へ、材料は無添加・オール北海道

「このミックス粉にはアレンジ用途がいろいろあり、クッキー、チーズケーキ、ロールケーキの生地にもなります」と橋本さん。「うちではアメリカンドッグの衣にしています」と城地さんが言葉を続けます。同時に制作した商品リーフレットでは、南幌と農業を盛り上げる農猿の活動を紹介。こうして完成した「南幌ゆめぴりか米粉ホットケーキミックス」と販促ツールを携えて、いざイベントへ出陣です。

商品開発への取り組みで成長し、農業の楽しさを広げたい

商品開発への取り組みで成長し、農業の楽しさを広げたい

農猿は、南幌町の農業や農産物の魅力を伝えるために結成されたチーム。その最大のイベントが、毎年9月に開催される野祭(やさい)です。こうした主催イベントをはじめ、札幌市や北広島市の商業施設などで行われる催事での直売が主な販路。お客様の声を次の企画に生かすのが農猿のスタイルです。

2023年10月、札幌の百貨店・丸井今井での物産展が、新たに開発したホットケーキミックスの初陣。1週間の会期中にリピートしてくれるお客様もいるほどの評判でした。
「買ってくれたお客様に、原料は南幌産のゆめぴりかで、お米自体がおいしいことを伝えています。このホットケーキミックスのおいしさを知って、ゆめぴり粉を使って商品開発をしてくれる人や事業者を増やしたいです」と城地さん。ゆめぴりかの米粉といえば南幌と認知される存在を目指します。

「これを売るぞという精神よりも、商品開発をすることで自分たちが勉強できて、まだまだ成長できると思うので、やってみようというノリを大事にして、そこからいろんな楽しいことへどんどん広がっていったらいいですね」と橋本さん。ホットケーキミックスから、その原料である米粉、さらには米づくりにさかのぼり、南幌町で農業の可能性が広がりはじめています。