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健康

加齢性難聴を改善 専門医が考案5つの体操とマッサージ方法

 加齢に伴う難聴は老化現象の一種であり、誰にでも起こりうる。しかし、日常生活の少しの工夫で、「聞き取る力」は改善できるという。難聴の名医に、耳の老化が深刻化する前に「聞き取る力」を自力で改善する5つの体操&マッサージを教えてもらったのでご紹介する。

教えてくれた人

坂田英明さん/川越耳科学クリニック院長・埼玉医科大学客員教授

認知症やうつ病とも深く関係する加齢性難聴

 年齢とともに聞こえが悪くなる症状は、医学的には「加齢性難聴」と呼ばれる。

 聞こえづらさを訴える数多くの患者を治療し、「難聴の名医」と呼ばれる川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師(埼玉医科大学客員教授)が言う。

「『加齢性難聴』の患者は65才以上から増え始め、同年代では男性の40%近くが『軽度難聴以上』の症状があると推計されています」(以下・坂田英明さん)

 難聴を放置すれば症状が悪化するばかりか、アルツハイマー型認知症や不眠、うつなど別の疾患の引き金になることもあるという。

「耳と脳は聴神経でつながっており、耳に異常がなくても、脳や神経の異常で難聴や耳鳴りが生じたり、内耳の異常が影響して脳や神経の障害を起こすことがあります。

 なかでも難聴が大きなリスク因子として指摘されているのが認知症です。20年、国際アルツハイマー病協会は世界的に権威のある医学誌『ランセット』で、認知症のリスク要因の筆頭に“難聴”を挙げました。高血圧や飲酒・喫煙などよりも、難聴のほうが認知症のリスクになると分析されたのです」

 様々なリスクを抱える難聴だが、直接的要因である「有毛細胞」の損傷は元通りになることはないという。

「有毛細胞は再生しないため、低下した聴力を回復させることは今の医学では不可能です。ただし、数値上の聴力が低下しても、音を素早く伝達する『神経』、正しく理解する『脳』を鍛えることで、『聞き取る力』を維持し、高めることができます」

 そこで、坂田医師が考案した加齢性難聴対策に効果が期待できる体操やマッサージ5種を本文最後に示した。

 こうした体操を実践し、症状が改善したケースを多数見てきたと坂田医師は話す。

「難聴の患者さんでも、これらの取り組みを続けるうちに『聞き取りやすくなった』と喜ばれるケースがあります。日常生活の少しの時間で難聴の改善は可能なのです」

 耳の衰えを諦めて放置してはいけない。

耳の老化を遅らせる5つの体操&マッサージ

 坂田医師が考案した加齢性難聴対策に効果が期待できる5つの体操をご紹介。

【1】<しこ踏み体操>耳石の衰えが回復

※<1>〜<3>の動きを左右5回(1セット)を朝と晩に行う。

<1>力士の「しこ踏み」のように両足を大きく開く

<2>片足を上げ、もう片方の足に重心をかける。足を上げたまま2秒キープ

<3>上げた足を下ろし、骨盤を立てた状態でゆっくり腰を下ろす

<ポイント>

「体や頭を傾かせることで内耳全体に刺激を与えて血流とともに活性化させることが狙いです」

 ポイントは力士のように両足を大きく開くこと。足を下ろす際は、骨盤を立てた状態で行なうことが大切だ。

【2】<タオル踏み>血液とリンパの流れを促進

※片足50回ずつ足踏みを朝と晩に行う。

タオルに2つの結び目を作り、床に横向きに置く。結び目に足の裏が当たるように踏む

<ポイント>

 足腰に不安がある人にはタオルを踏むのが良いと坂田医師は言う。

「前庭脊髄反射(※)の仕組みを利用して耳を刺激する方法で、足裏からの刺激を脊髄神経を通じて内耳に届けることができます」

※姿勢を調整しようとする反応

【3】<耳つぼマッサージ>つぼの刺激で聞こえを改善

<1>両手で耳全体を包み込むように30秒間マッサージ

<2>人差し指の腹を使い、「耳珠(じじゅ)」を3秒間×3回押す

<3>親指と人差し指で「翳風(耳たぶ)」を3秒間×3回つまむ

<4>耳の上部にある「神門(しんもん)」を親指と人差し指でつまみ、親指の腹で3秒間×3回押す

<ポイント>

 耳周辺を指などでマッサージし、聞き取る力を改善する。

「神門(しんもん)、翳風(えいふう)、耳珠(じじゅ)の3つのツボが有効です(イラスト参照)。人差し指や親指の腹を使い、優しくマッサージすることを意識してください。まずは耳全体を30秒間マッサージし、3つのツボに移ります」

【4】<顎関節トレーニング>咀嚼筋(そしゃくきん)をほぐし聞こえを改善

※<1>〜<3>の動きを20回(1セット)。1日5セット行う

<1>こめかみに人差し指と中指を当て、奥歯を噛みしめ「イー」と口を横に広げる

<2>「イー」の口で顎を前に突き出す(下の歯が前に出るように)

<3>「アー」と口を大きく開ける

<ポイント>

 物を噛む時に使用する咀嚼筋(そしゃくきん)をほぐすことも血行を促進させ、聞き取る力が改善するという。

「『イー』と『アー』の口の形が基本です。『イー』の際は奥歯を噛みしめる、『アー』の際は大きく口を開けることを意識しましょう」

【5】<耳裏ほぐし>血液のリンパの流れを促進

耳の裏を両手で優しくなでるように1分間ほぐす

<ポイント>

 耳周辺の血液とリンパ液の流れを促進する。

「両手で優しくなでるようにほぐしていきます。くれぐれも強い力で押さないように注意しましょう」

イラスト/河南好美 写真/PIXTA

※週刊ポスト2024年11月29日号

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