「厚生年金に40年間加入して、その期間の平均収入(月額換算した賞与含む)が月43.9万円の場合、受給額は月額約9.0万円の老齢厚生年金と、月額約6.5万円の老齢基礎年金を合計した約15.5万円(2021年度)になります」。
厚生労働省の運営するホームページ『いっしょ一緒に検証!公的年金』には、このような例が受給額としてあげられています。
月15.5万円……これを多いとみるか少ないとみるかはさておき、「厚生年金に40年間加入」「その期間の平均収入が月43.9万円」というのは、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。
厚生労働省が運営するホームページ、『就職氷河期世代の方々への支援のご案内』によると、「就職氷河期世代」とは、「バブル崩壊後の1990~2000年代、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い、現在も様々な課題に直面している方々」をさす言葉です。
就職氷河期世代の置かれてきた厳しい環境は、厚生労働省のレポート「平成21年版 厚生労働白書」にも記されています。
“バブル経済崩壊以降、厳しい雇用情勢の中で、若者の就職環境も厳しいものとなり、いわゆる就職氷河期が続いた。
この間の状況を概観してみよう。
まず、就職率・就職内定率(就職希望者のうち就職(内定)者の占める割合)と求人倍率を見てみると、大卒では求人倍率は1990(平成2)年の2.77から2000(平成12)年には0.99に、就職率は調査を開始した1997(平成9)年の94.5%から2000年に91.1%まで落ち込みました。
高卒についても、求人倍率は1990年の2.57から2003(平成15)年の1.21に、就職内定率は1990年の99.2から2002(平成14)年の89.7に落ち込みました。
完全失業率を見ると、もともと若年層は、中高年層と比べると失業率の水準が高い傾向にある中で、全年齢では2002年に5.4%、15~24歳層では2003年に10.1%、25~34歳層では2002年に6.4%のピークを記録した後、低下する傾向にありましたが、25~34歳層では全年齢の動きに比べて、失業率の改善に遅れが見られており、2008年には再び前年より上昇し5.2%となるなど全体的に高止まりの状況にあります。
また、年齢階級別に長期失業者数(失業期間1年以上の失業者数)を見ると、25~34歳層の長期失業者が最も多くなっており、長期失業者全体に占める割合は、1998(平成10)年までは10%台後半から20%台前半で推移していたところが、1999年頃から上昇し、20%台半ばから後半で推移するようになりました。
就職氷河期世代の年金問題は、正規社員になれず、厚生年金に加入していなかった期間が長いというだけではありません。
当時、「年金制度は破綻している。
どうせ自分たちの時代にはもらえないのだから、払うだけ損だ」という考えが若いフリーターを中心に流行しました。
そのため、実際に国民年金を支払っていなかった層がある程度いるです。
今も、フリーターや非正規雇用の人は、国民年金を全額免除申請している人も多いのです。半分の年金がもらえるとはいえ、当然もらえる年金も少なくなります。
コロナかでは、「新たな就職氷河期世代」が形成されてしまう可能性について、言及されることがしばしばありました。
とはいえ、1990年代から2000年代までとは決定的に違うことがあります。
「働き方改革」の存在です。
厚生労働省の運営する『働き方改革 特設サイト』には、以下のように書かれています。
“日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上や、就業機会の拡大、意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが不可欠です。
働く方の置かれた事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。
1990年代から2000年代の就職氷河期時代には、体のいい「フリーター」なる言葉がはやりましたが、「働き方改革」という政府主導のもと、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」が進められています。
「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」にも取り組まれているほか、令和2年の5月29日に成立した「年金制度改正法」では厚生年金保険の適用範囲も拡大されました。
ネットを活用した「会社に頼らない稼ぎ方」の選択肢も、就職氷河期と比較すると幅広くあります。
法的制度と社会的システムが整いつつあり、まさに黎明期です。
「多様な働き方」が許容される時代になろうとしています。
内閣官房による「就職氷河期世代支援プログラム」によると、支援対象となる「正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者」は少なくとも50万人におよぶといいます。
『就職氷河期世代への、支援ポータルサイト ゆきどけ荘』では、ハローワークへ相談へ赴き、“就職”に成功した先輩たちの成功話が並びます。
なかには「コロナ禍で解雇されたのをきっかけに」のような新しい話もあります。
彼らが正規社員となり、厚生年金に加入できたとして、将来どのくらいもらえるのでしょうか。
「年金受給例」では「厚生年金に40年間加入して、その期間の平均収入(月額換算した賞与含む)が月43.9万円の場合……」とありました。
就職氷河期世代は20~30年はロスしています。
それでももちろん、加入しないよりは、加入期間は多いほうがいいのは間違いありません。
例えば、厚生年金に20年間加入して、その期間の平均収入が20万円ならば、月額約2.5万円は受給できます。
「年金だけでは、老後2,000万円不足する」という問題が取り沙汰されたことがあるが、受給できる年金は人それぞれ金額が違います。
もちろん払っている期間が多く、正社員になって、払っている額が多いほうが、多く受給されます。
「年金なんて、どうせ自分たちのころにはもらえない」と言っていた、就職氷河期世代のなかには、働かず、国民年金すら払っていなかった者たちもいるが、「本当にもらえなく」なってしまったのです。
最終的には「生活保護」という制度が用意されてはいますが、そこに至った人たちのなかには、「割りを食った世代」という社会的背景がある人もいます。
「誰が、誰を、どのように支えるか?」。
改めて政府の采配に期待したいですが、今の政府は高齢者と子育て世代しかみていないので、見て見ぬふりするのがせいふのやりかたでしょう。