海外版TFシリーズ、
『TRANSFORMERS POWER CORE COMBINERS』
を日本に導入した
『トランスフォーマー ユナイテッド EX』は、
カラーリングの変更だけにとどまらず、
キャラクター設定も一新された。
各キャラクターは従来のTFシリーズで
活躍したTF達をモチーフにしており、
いわゆる『正体』が設定されている
アイディアは多くのファンを惹き付けた。
キャラクターによっては易々と
正体が思い付かない様な難儀な例もあり、
タンクマスターはTFユナイテッドEXの中でも
非常に難易度の高いTFであった。
◆ 名前 : タンクマスター
◆グループ: マスターカオス
◆ 役割 : 暗殺兵
◆ 変形 : イスラエル国防軍・メルカバ
◆シリーズ: トランスフォーマー ユナイテッド EX
◆ 発売日: 2012年11月17日
◆ 価格 : 4500円
パッケージ
プライムモード(合体ロボットモード)の
ボディを形成するTFが2体と、
それぞれにパートナーのターゲットマスターが
付属する対決セット。
オートボットとディセプティコンが
パッケージされている日本独自のセットだ。
ビークルモード
イスラエル国産戦車のメルカバは、
それまでの戦闘の経験から乗員の生存を考慮し、
防御力の強化を主軸に開発された。
通常の戦車と異なり操縦席や砲塔の前方に
エンジンルームが設置されており、
正面攻撃を受けた際はこれが障壁となって
乗員の生存確率が上がる設計。
リア
平たく先端がすぼまっている
特殊な形状の砲塔はメルカバの特徴であり、
タンクマスター型のトイはメルカバ Mk.Ⅱや
メルカバ Mk.Ⅲに類似したスタイル。
車体本体はアメリカのエイブラムス的な
要素も見られ、厳密にはメルカバと
全く同形という訳ではないが、
TFトイ用にアレンジしながらも実車の様な
リアルさを造り出している所は見事。
サイド
駆動輪や履帯の造形もリアルで、
ガンメタルの成形色と塗料を
組み合わせて使用している事も
戦車として納得の仕様である。
パーツの噛み合いが良く、
戦車モードが容易く崩れない事に加え、
クローラーの底面には合計四つの車輪が
設置されており、転がし走行も可能。
又、砲塔は旋回可能という、
戦車として楽しめる可動も備わっている。
ライト部分はゴールドに塗装、
青と緑の迷彩模様もプリントされている等、
戦車モードのカラーリングも
手を抜かない仕様は好感が持てる。
トランスフォーム!
ロボットモード
クローラーが配置される事で
手足にボリュームがあり、
ロボットモードも戦車と同様に
パワフルな体型。
砲塔を背負ったスタイルや張り出した胸部、
マスク顔の四角い頭部等から、
G1期のコンバットロン・ブロウルを
思わせる要素が各所に見られるTFである。
リア
ロボットモード専用のダミーパーツは無く、
戦車の各パーツが全身に配置されている
正統派な変形が魅力のトランスフォーマーだ。
背中に砲塔全体が収まるスタイルだが、
重さが背部に集中する訳ではないので
バランスは良く、足の裏もコの字型に
造られているので安定性に優れている。
首と肩にボールジョイントを使用、肩は上下に動く可動軸も併用している。
上腕、肘が前後に曲がり、股関節は前後左右に動く二重関節、
膝は深く曲げる事が出来、前腕と腰、大腿部にはロールも組み込まれている。
非常に優秀な可動を誇るが、金属ピンを打って繋ぎ留めている
関節が多い為、製品状態で既に緩めの関節がある所が難点と言える。
元々は海外で展開していた合体TFシリーズの
『TRANSFORMERS POWER CORE COMBINERS』で
2011年に登場した戦車型のヘビートレッドが原型。
PCCシリーズは2010年から展開がスタートしているが、
日本ではパートナーのミニコンのみがキャンペーン配布用の
限定マイクロンとして登場しており、本体の合体TFは見送られていた。
『トランスフォーマー ユナイテッド EX』は、約2年の時を経て
漸く日本に導入されたPCCシリーズのトイである。
消防車のスモールダー型とレーシングカーのレッドフット型の
2種のみ日本未発売となったが、それ以外の全ての
PCCトランスフォーマーが日本国内でも発売された事は大いに評価出来る。
更に単なる日本導入ではなく、全てカラーリングを変更し、
海外版とは異なるキャラクター性とストーリーを設定している事も特徴の一つ。
『メガトロンの敵を始末する為に
裏で行動する残忍な刺客。
ローラーマスターと同じく、マスターカオス総統の
動向を探る目的で入隊した。』
テックスペック
・体力 : 8
・知力 : 7
・速度 : 6
・耐久力: 9
・地位 : 8
・勇気 : 5
・火力 : 10
・技能 : 8
パッケージ裏面に掲載されているストーリーでは、
グリムマスターを暗殺する任務を担った兵士として登場する。
グリムマスターは元デストロン・恐竜戦隊の兵士カクリュウが
オートボット(サイバトロン)側に寝返ったTFであり、
タンクマスターがグリムマスターにとどめを刺す際に
『裏切り者に、死を…』という彼のモットーを口にしている。
そこにスピードボートに変形するマリンマスターが奇襲を仕掛け、
グリムマスターを救出、タンクマスターは追い詰められてしまう。
トイでもタンクマスターとセットになっているマリンマスターとの
バトルを描いたストーリーは非常に面白く、各人のキャラクター性が
示されているので感情移入し易くなるメリットも備えている。
ロボットモード
無機質な印象を受けるデザインの顔、
ウイングの様な腕部と長い脚部という、
特殊なスタイルのミニロボット。
TFユナイテッドEXではマイクロンではなく、
ターゲットマスターとして設定している。
リア
基となったTFは、PCCシリーズ・ヘビートレッドの
パートナーミニコン・グラウンドスパイクで、
戦車型TFとセットという所は海外版、日本版共に同じ。
ホイゼルのカラーはパープルを主体とし、大腿部にグリーンが入る
寒色で纏められており、ディセプティコンらしさが感じられる。
日本に於ける、この型のTFトイの初出は、
2011年のキャンペーンで配布された限定マイクロン・ブロウパイプで、
一般発売されたアイテムではタンクマスターとセットのホイゼルが初となる。
又、2014年には誌上限定トイ・ショウキのパートナーである
ダニエルのエクセルスーツとしても使用されている。
肩と股関節のボールジョントに加え、膝と足首も可動するので
ポージングの自由度が高く、足の裏の面積が広いので接地性も良い。
又、パッケージ裏面のイラストやストーリーでは武器として描かれているが、
ホイゼルのTFとしてのキャラクター性に関して記した文面は無く、
明確なキャラクター設定が作られなかった事が惜しい所だ。
ウェポンモード
海外版TF パワーコアコンバイナーズ シリーズでは、
『ロボットウェポンモード』と呼称される大型TFが装備する武器モード。
接近戦で威力を発揮する二つの長いクローを備えた武器は、
暗殺者のタンクマスターが扱う武器として相応しい。
ボディと腕部はグリップ部分に変形、クローを形成する
長い脚部は武器形態で活かされている事が分かる。
リア
PCCミニコンの各モードは些か強引な形態もあるが、
ホイゼルのクローモードは武器として認識出来る範囲であろう。
見立て変形のイメージはある物の同じ型のTFを使用して、
ジェネレーションズ・ダニエルの様に弓矢やパンタグラフモードまで
考案してしまう開発者の想像力には驚くばかりだ。
ウェポンモードのグリップは5ミリジョイントに対応しているので、
タンクマスターを始め、様々なTFトイに装備させる事が出来る。
大型のクローなので見映えする姿となり、
『武装強化』されたというイメージが視覚的にも分かり易い。
パッケージイラストでもタンクマスターがクローモードのホイゼルを
装備している姿が描かれており、トイでも同様に再現可能。
アーマーモード
PCCミニコンでは『パワーアップアーマーモード』と
呼称される形態で、大型TFのボディに合体させる事が出来る。
タンクマスターの胸部のジョイントを起こして装着させるが、
ボディに対してかなり大型のアーマーとなってしまう。
4体のドローンと合体したプライムモードでは丁度良い大きさとなる。
ウェポンモード
海外版PCCシリーズでは『ビークルウェポンモード』とされる形態。
戦車モードのフロント部に設置されたマイクロンジョイントを起こし、
マインプラウモード(地雷除去装置)のホイゼルをセットする。
実際の戦車でもマインプラウを装着した車両は存在し、
パートナーロボットが変形合体するアイディアは秀逸。
タンクマスターの戦車モードには大きめのサイズだが、
迫力あるスタイルを構築しており楽しめるモードだ。
トイ付属の説明書では表裏逆の向きで設置する様に指示されている。
こちらの方がドーザーブレードが下面にあり、作業用アームが上になるので、
本来意図していたスタイルはこちらのモードという事が窺える。
しかしブレードにシルバー塗装が無く、ボールジョイントも露出して
少々見映えが悪いので、どちらの装着方法を選ぶのかは各人の好み次第だ。
『トランスフォーマー ユナイテッド EX』に登場する
「~マスター」という名称のTFは全員で13名存在するが、
それぞれ過去の作品に存在したトランスフォーマー達を基としている。
モチーフとしている各キャラクターの情報は、パッケージ裏面に
掲載されているTFユナイテッドEXのストーリーの中にヒントがある。
モチーフTFはG1期~G2期までのキャラクターから選ばれており、
コンバットマスター(オンスロート)やアサルトマスター(ダブルクラウダー)の様に
分かり易い物から、マニアでも忘れている様なマニアックな物まで様々。
その中でもタンクマスターは最も難易度が高いキャラクターと言える。
理由は簡単で、G1期~G2期には存在すらしていないキャラクターだったからだ。
タンクマスターのモチーフとなったキャラクターは、海外で展開している
IDWコミックス用に新たに想像されたTF・グラインドコアだ。
コミックオリジナルキャラクターなのでトイは存在しておらず、
キャラクター的にも2000年代後半に新登場した歴史の浅いTFである。
2008年発売の『TRANSFORMERS SPOTLIGHT』のサイクロナス編で
初登場したグラインドコアはIDWコミックス・オリジナルキャラクターで、
その後のTFスポットライトシリーズに何度か登場している。
IDWコミックスの『トランスフォーマー スポットライト 』シリーズは、
G1TFの各キャラクターを描いた物なので、この作品に登場する
グラインドコアもG1時代からのTFと見做していると考えられる。
TFユナイテッドEXでもグラインドコアをG1TFの一人と捉えている様で、
IDWコミックスの設定を取り入れている所もあり、グラインドコアの仲間である
ストラクサスがローラーマスターとなっている事もIDW版を意識した物と思われる。
『トランスフォーマー ユナイテッド EX』では、基としている
キャラクターが異なる世界観の作品から選ばれているが、
それ等を全て統合してストーリーを構成している。
トイパッケージの設定を始め、海外版G1アニメ、海外版マーベルコミックス、
日本版G1アニメ、日本のテレビマガジン、更に海外のIDWコミックス等、
本来はパラレルワールドと考えられる各作品のTF達を
同一世界に存在する物と解釈し、ストーリーを纏めている。
日本オリジナルTFと海外のTFシリーズは別物と捉える場合が多い中、
その様な垣根を取り払ったTFユナイテッドEXは非常に面白いシリーズだ。
モチーフとしているTFの、いわゆる『正体』を探り当てる趣向も興味深い物で
大いに楽しめる物であったが、タンクマスターの場合は
TFスポットライトの邦訳版コミックスが発売されていないという事もあり、
マニアック過ぎて最も分かり難かった例と言えるだろう。
海外より大幅に遅れて日本に導入されたパワーコアコンバイナーズ シリーズの為、
熱心なファンの多くは既に海外版のトイを入手しており、メーカー側も
単にPCCトイを発売しただけでは厳しいと自覚していたのだろう。
トイ自体はリカラー版ながら、TFマニアの琴線に触れる様な
キャラクター設定やストーリーを加えた事は予想外であると共に
驚きに満ちており、瞬く間にファンを魅了してしまった事は間違いない。
タンクマスターの様なIDWコミックスの設定まで持ち込む事で、
古参のファンのみならず、新しい世代のファン層も楽しめる世界観を構築した
『トランスフォーマー ユナイテッド EX』は、非常に面白味のあるシリーズであった。
⇒ ◆参考にならない比較◆
トランスフォーマー レガシー ユナイテッド
リーダー クラス
オーバーチャージ