1985年、日本でもスタートした
『トランスフォーマー』は瞬く間に大ヒットし、
数え切れない程の関連グッズが製作された。
メインとなる変形玩具以外の非変形フィギュアや
他社製のライセンシーアイテム、
食玩や日用品のキャラクターグッズ等、
TFの関連商品は数多く生み出されてきたのだ。
G1初期、日本国内のみで登場していた
ガチャガチャ用カプセルトイは、
チープトイでありながらも驚くべき完成度の高さと
独自性を有する稀なTFトイであった。
◆シリーズ: 戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー
◆メーカー: タカラ `
◆ 発売 : 1985年 `
◆ 価格 : 100円 `
※1985年当時のカプセルは
所有していなかったので、
写真の物は近年のカプセルで代用した。
ロボットモード
『トランスフォーマー』の人気を反映し、
比較的早い時期に登場したのが、
ガチャガチャ用ミニプラモデルのTFトイだ。
サイバトロン戦士の代表格の一人として、
ランボルが選ばれている。
リア
ミニサイズの組み立てモデルながら、
各部の造形やパーツ構成は
メイントイシリーズの変形玩具版ランボルを
受け継いでいるという拘りのトイだ。
成形色はパステルグリーンだが、
ランボルとして認識出来る納得の造形だ。
『任務に忠実であり、
危険な行動も平気である。
レーザーガン装備。』
『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』
が日本で展開した1985年~1986年は
昭和の終盤期で、「町の駄菓子屋」は
普通に存在し盛況を誇っていた。
その駄菓子屋の店頭には必ずと言ってよいほど、
玩具自販機『ガチャガチャ』が設置されていた。
ウルトラマン怪獣の
ミニ消しゴム人形等の小さい物は20円、
3体入りのキン消し(キン肉マン消しゴム)や、
各ロボット作品のミニプラモデル等は
100円という若干高級なタイプで、
これ等の大小のカプセルトイが主流だった。
他にも30円、50円のガチャガチャも存在し、
様々なチープトイがチャガチャで
販売されていた。
当時のトランスフォーマーのガチャガチャでは
消しゴム人形が代表格で、
左のミニサイズの物が初期版。
初期版より一回り大きい後期版消しゴム人形は
箱詰めにしてセット販売されたり、
海外展開でもTFトイのオマケで付属した
『デコイ』として使用されたので認知度が高い。
TF消しゴム人形の初期版と後期版の
中間の時期に登場したアイテムが、
ミニサイズのTFプラモデルのガチャガチャで、
本家タカラが発売した正規TFグッズの一つだ。
一部を除きランナーから切り離されたパーツが、
バラバラの状態で説明書と共に
カプセルに封入されている。
10個前後のパーツを説明書の手順に従って
組み立てると、全高5.5cm.程のロボットになる。
ガチャ版プラモデルTFはアニメ設定ではなく、
基本的にタカラが発売した変形トイのデザインを
踏襲しているのだが、ランボルのみ
ガチャ版独自の特殊なスタイルとなっている。
ガチャガチャ・ランボルの最大の特徴は、
胸部に配置されたカウンタックのフロント部分が
上下逆さまに取り付けられている事である。
これは設計ミスでも組み間違いでもなく、
意図して逆さの向きにしているのである。
逆さの胸部に合わせたのか、
背中のルーフも逆向きで、
本来のG1ランボルの
デザインとは異なっている。
更にカーモードのリア部で構成される
脚部の向きも前後上下逆になっており、
ガチャ版ランボルは多くの面が
『逆』という奇妙なスタイルなのだ。
数十年に渡るTFの歴史の中で
ランボルのリメイク版は数々造られてきたが、
胸部に逆さになったフロント部が
取り付けられているのは、
ガチャガチャ・プラモデル版ランボル
だけなのである。
ランボルと認識出来る姿ながらも
胸部デザインが逆向きという違和感により、
独特な異彩を放っているのだ。
1985年の時点では、後々数十年以上も
TFシリーズが続くとは
考えていなかった筈なので、
少々乱暴とも言える自由なデザイン変更が
可能だったのかもしれない。
今後、ランボルのリメイク版は
増え続けると予想されるが、
胸部が上下逆向きのランボルが
現れる事は無いだろう。
ここで何故、カウンタックのフロント部を
逆向きに設置したのかが問題となる。
それはガチャガチャ・ランボルが
ロボットモードのみならず、
カーモードに「トランスフォーム」出来る
優れたトイだからなのだ。
トランスフォーム!
ビークルモード
メーカーライセンス取得の必要が無かった
G1当時だが、非常にリアルな
ランボルギーニ・カウンタックに
仕上げられている。
手の平サイズのガチャガチャ用アイテムで、
更にロボットにも変形出来るにも拘わらず、
これ程の再現度の高さを実現している事に驚く。
サイド
ウィンドーやドアにも細かくモールドが施してあり、
カウンタックらしさを表現している。
パーツが細かく分割されているので、
フロントフェンダーと前タイヤが
別パーツという所もリアルさを引き立てている。
これに合せて後輪とリアフェンダーの間も
スペースを空けている拘りの造形だ。
リア
フロント部のヘッドライトやボンネット、
ルーフ、ウィンドー、車体リア部に加え、
ミッドシップに位置したエンジンルームの
カバーやリアウイングに至るまで
凄まじい程の造り込みに目を奪われる。
1985年製で極小サイズのガチャガチャトイ
である事を鑑みれば、ガチャ用TFトイが
如何に優れていたかが分かるだろう。
カーモードの底面から見ると良く分かるが、
ガチャガチャ・ランボルは
一度バラバラにしたパーツを組み替えて
ロボット、ビークルモードを構築する
いわゆるブロックトイの様な構造である。
ガチャガチャ・ランボルの頭部が四角形なのは、
カーモード底面のシャーシ部分にぴったりと
嵌る様に意図的に四角くしている事が分かる。
組み替え変形でリアルなカーモードと
ロボットモードを両立させる上で必要な措置が、
ロボット時にフロント部を逆向きに
取り付ける事だったのだ。
各パーツは凹凸に造形された
ジョイント部分で組み合わせるのだが、
突起の凸部と凹部の穴の
設置箇所には限りがある。
凸部ジョイントはフロント部裏側の
前方に設けられており、
更にその外側には腕部のジョイントを差し込む
凹部も造形されているパーツ形状。
フロント部後方の半円型に
へこんだフェンダー部では、
凹凸のジョイントを設置する
スペースが無いのである。
この様に前方にジョイントを設けなくてはならない
必要性から、ロボットモードでは胸部を
本来とは逆向きに変更しているのだ。
元々赤いボディのランボルには似合わない
パステルグリーンの成形色が目新しい。
パステルグリーン成形色のカウンタックは、
後々の海外展開でキャンセル品となり、
紆余曲折を経てボットコン94の限定トイとなった
G2ブレークダウンを想起させる。
しかしガチャガチャ・ランボルは
1985年に発売されたトイであり、
G1ブレークダウンも
存在していなかった時期である。
当然ながら後のG2
(GENERATION 2・第二世代)という
言葉や概念すら無かった時代なので、
G2ブレークダウンとの関連性は全く無い。
G2展開期のハズブロが、
ガチャガチャ・ランボルを意識して
G2ブレークダウンの配色を
決めるという事は有り得ないので、
カラーリングが類似しているのは
完全な偶然である。
この様な例が稀に発生する所が
トランスフォーマーの面白さだ。
ガチャガチャ・ランボルの成形色を
パステルグリーンに限定していた訳ではなく、
ガチャTFにはブルーやグレーの
成形色も存在する。
ガチャガチャTFのプラモデルは
数タイプの成形色があり、
ランダムに選ばれている。
レーザーガン
極小サイズの専用武器が付属するという、
昭和のガチャガチャトイとは思えない程の精密さ。
ジョイントでランボルの拳に装備可能。
変形玩具版ランボルに付属する
NCビームライフルのデザインを
意識している様だが、比べてみると
デザインは大幅に異なるライフルだ。
更に凄いのは、カーモードの側面に
レーザーガンを装備可能な所だ。
ドア部には専用の穴が設置してあり、
銃のジョイントを差し込む事で
武装カーモードにする事が出来る。
これは変形トイ版ランボルには無い
ガチャガチャ版独自のギミックである。
余剰パーツを減らすという発想は希薄だった
G1初期なので、遊びの幅を広げるという
一点を考慮した追加ギミックであり、
チープトイであろうと真摯に
開発していた事が窺い知れる。
100円のガチャガチャアイテムで、
これ程のプレイバリューの高さを備えている
ガチャ版トランスフォーマーは驚くべき存在だ。
このミニサイズのトランスフォーマープラモデルは
タカラが発売したガチャガチャ用アイテムなのだが、
同時期に発売されたカバヤの食玩である
『トランスフォーマーチョコ』にも、同じ物を
流用していたと誤解されている向きがある。
カバヤの食玩版は設計や構造を
踏襲した物であり、造形は類似していながらも
全くの別物で造り直している。
↑
ガチャガチャ版は数回に渡り再生産されており、
プラモデル自体は同じだが、
説明書は大幅に改良されている。
当初はトランスフォーマーロゴと組み立て図のみが
印刷されたシンプルな説明書だったが、
後に片面にカラー印刷でキャラクター設定が
掲載されたバージョンへと発展している。
写真は後期版のカラーバージョンの説明書。
『トランスフォーマー』の名に相応しく、
組み替え変形でロボットとカーモードを両立し、
類稀なアイディアによるデザイン変更にも
拘わらず、ランボルとして
納得させてしまう絶妙な造形と
リアルさも実現したガチャガチャ・ランボル。
しかし後年、書籍等で
取り上げられた事は無いに等しい。
長い歴史の中に埋もれたTFグッズは多く、
脚光を浴びる事も叶わないとは言え、
その優れたアイテム達は
今も輝きを失う事は無い。
◆参考にならない比較◆
⇒ トランスフォーマーG1 04 ランボル `
⇒ 変形!ヘンケイ!トランスフォーマー C-09 ランボル `
⇒ キュートランスフォーマー QT-05 ランボル `
⇒ TFバイナルテックアスタリスク BTA-02 サンストリーカー
⇒ TFユナイトウォリアーズ UW-05 サンストリーカー ` `
⇒ TFロボットヒーローズ サンストリーカー `
⇒ TFクレオン マイクロチェンジャー 3 サンストリーカー `
⇒ キュートランスフォーマー QT-12 サンストリーカー `
トランスフォーマー マスターピース
MP-12 ランボル