秀句鑑賞-秋の季語: 鳳仙花(ほうせんか)
2023/08/20 Sun
秀句鑑賞・秋
鍵掛けぬ村の昼餉や鳳仙花 /中村零城
(kagi kakenu mura no hiruge ya hōsenka)
鳳仙花は暑さもまだ盛りの頃に咲く。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と兼好法師が徒然草に記したように、家屋は夏過ごしやすいように建てるのが日本の伝統だった。
開閉が自由で取り外しさえ可能な襖で部屋を仕切る理由の一つは、風通しを良くして夏を涼しく過ごすことだった。
日本文化はこうした開放的な住空間の中で育まれてきたと言えよう。
気密性重視の現代家屋では、家も家族も風通しが悪くなる。
節電に励んだ東日本大震災後の夏は、兼好法師が「暑き頃わろき住居は、堪へがたき事なり」と徒然草に続けた言葉の真実を実感した人が多かったのではないか。
鍵を掛けなくても不用心にならない暮らしは、羨ましくもあり懐かしくもある。
「水と安全はタダ」と自慢できた日本はどこへ行ってしまったのか、と問いかけてくる一句。
鳳仙花 (Hōsenka - Impatiens balsamina)
Attribution: 123RM
【『惜春』2013年12月号より】
(本ブログの2013年12月27日掲載記事を改稿の上再掲載)
中村零城: 岐阜県在住(2013年当時)
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