エンジニア勉強会で間違った情報を発表してもいいのか?WeJSで考えるコミュニティの価値と運営
こんにちは、gamiです。
この記事は『We Are JavaScripters!【執筆初心者歓迎】 Advent Calendar 2018』の18日目の記事です。
今年は僕が書いたサイ本についてのブログ記事がバズったりしました。
なのでJavaScript自体のことを書いてもよいのですが、せっかくWe Are JavaScripters!(以下、WeJS)も2周年を迎えたことなので、WeJSから考えるコミュニティの在り方みたいなことを書きたいと思います。
僕とWeJS
最初に自分語りをします。
たみー in セブ
僕は「新卒のときに就活で都庁の公務員採用試験しか受けずに爆死する」という若気の至りによって、大学卒業後に1年間フリーター生活をしていました。
その人生最後?のモラトリアム期間で、「留学というものをしてみよう」と思い立ち、セブ島に英語留学に行きました。
選んだのは、NexSeedという「エンジニア留学と英語留学が一緒にできる」という触れ込みの語学学校でした。 nexseed.net
そこにはフィリピン人講師だけではなく学校運営メンバーもいて、学校を運営しているギークス株式会社からもインターンが何人か来ていました。 geechs.com
その中の1人が、WeJSの創始者であるたみー(@ta__miyan)でした。
学校に通う日本人生徒は基本的に同じ寮に住むのですが、寮と学校との間は「ジプニー」という乗合タクシーで移動します。
たみーはジプニー担当で、毎日学校にジプニーが到着する度に「ジプニー!ジプニー!」と生徒に呼びかけていました。 5時のジプニーが来た時は、「5時プニー!5時プニー!」とも言っていたような気がします。
超ドメスティック思考だった当時の僕は、「海外まで来てインターンをする凄い人がいるもんだ」と感動していました。
初めてのWeJS
フリーター生活の末に富士通という会社に入社しCOBOLを書いていた僕は、なんと1.5年で会社を辞めてWebエンジニアとしてベンチャーに転職しました。 (最近、その経緯を書いたブログが「1.5年で何がわかんの?」とプチ炎上しました) jumpei-ikegami.hatenablog.com
転職先はNode.jsとVue.jsをメインで使っているPLAIDという会社で、転職当初は必死にJavaScriptを勉強していました。
また、しがないラジオというポッドキャストを富士通同期の@zuckey_17と一緒に始めることになり、そのネタ作りや宣伝のために、「勉強会というものに行ってみよう」という気運が高まっていました。
そんなとき、Twitterか何かでWeJSの情報が流れてきて、「初心者向けのJS勉強会とか最高かよ」と思って詳しく調べました。 主催者をよく見てみると「これ、ジプニー使いのたみーさんでは?」と気付き、その偶然に驚きながら、気づくとconnpassの参加申し込みボタンを押していました。
最初に参加したのは、今から1年半以上前、2017/3/11の休日もくもく会でした。 ポッドキャストの相方である@zuckey_17も一緒で、なんならしがないラジオep.1の収録をした、まさにその日の午後でした。
今思うと、いきなりもくもく会から参加するのも変な感じですが、変な内輪ノリとかも無くとても居心地よく作業できました。 すでに主催者に加わっていたふかみん@fukamiiiiinmin)さんが、@zuckey_17にReact.jsについて質問をしにきて、「説明マジでわかりやすいっすね!お金取れますよ!!!」とハイテンションで言っていたのが印象的でした。端的に言って、「コミュ力おばけ」でした。
今思い返すと、初参加の私たちに気を使って話をしにきてくれたのかもしれません。
WeJSとの1.5年間
そこからは、「毎回参加するわけでもないが暇だったら行く」くらいのゆるーい参加者として、3ヶ月に一回以上は参加していたような気がします。
登壇も、WeJS@10thで1回だけしました。
継続的に参加している勉強会はWeJSしかなかったのですが、 「勉強会に何度も参加していると主催者や常連と顔見知りになってさらに楽しくなる」という気づきを得られました。
また、最近では僕が窓口になって弊社PLAIDのオフィス@GINZA SIXを会場としてWeJSに提供することもあります。 wajs.connpass.com
WeJSでエンジニアコミュニティについて学べたと思っているので、少しでもその恩返しができていれば嬉しいなあと思います。
WeJSで考えるコミュニティ運営
WeJSを外から見ていたり主催者のみなさんから話を聞いて、コミュニティ運営について考えたことを書きます。 完全に外部の立場から勝手に言ってるだけなので、私見です。
「マルサン・コミュニティの法則」とWeJS
コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさんという方がいるのですが、その人がブログに「マルサン・コミュニティの法則」というコミュニティ運営の法則を書いています。
要約すると、「コミュニティ・ベースからイベントに動員する人数比を、『コア:常連:新人』で1:1:1にすると、コミュニティが育ちやすい」ということらしいです。 特にWeJSでは「初心者歓迎LT大会」を標榜しているので、一定割合を「新人」に保つというのが重要な気がします。
ここはWeJS主催者側でも意識しているようで、2018年1月からは「ビギナー登壇枠」を設けて、登壇3回未満の人が優先的に登壇しやすいように参加枠の設計をしています。
2年もコミュニティが続き、常連さんもかなり増えている印象ですが、同時に新しい人の登壇も良く見るので、この辺りのバランスは流石だなといつも思っています。
WeJSの裏にある思想
WeJSの歴代主催者4人にはしがないラジオというポッドキャストにゲスト出演していただいているのですが、清水(@chikoski)さんが出演回で話されていたことがすごく印象的でした。
勝手にまとめると以下です。
- コミュニティは書籍と違って、正確で体系的な知識を与えてくれるわけではない
- コミュニティの存在意義を、「安定した状態のモノに対して外部から刺激を与えること」に置きたい
- 曰く、「ヒルクライム項でありたい」
- 「何を言ってもいい状況」を維持することで、コミュニティの中で様々な刺激が得られる
WeJSでは「マサカリ」(登壇者に対して技術的な指摘を強めにすること)を禁止し、「安心して発信できる環境」を大切にしているそうです。 この点は、WeJSの「アンチハラスメントポリシー」にも明記されています。
極端な話をすると、コミュニティでは「間違った情報を登壇者が話す」ということがあっても、その現象自体が刺激になれば許容されるべきとも言えます。 もちろん、参加者の今後の学習のために軽く指摘した方がいいことはあるでしょう。 しかし、「なぜ間違った情報を信じてしまったのか?」ということを題材にして、議論が深まったり、新しい課題が見つかったりすれば、それは1つのコミュニティにとっての価値でしょう。
こうした「様々な刺激が得られる」環境を維持するためには、先ほどの「マルサン・コミュニティの法則」で言った「一定割合を新人に保つ」ということも重要に思えます。 常に同じ人が参加し続けていると、似た考え方や知識量の人が増えていき、一参加者が得られる刺激としては減っていきます。 そこに全く新しい視点を持ち込むためには、コミュニティにとって異質な「新人」を温かく迎え入れ、内部に取り込んでいく必要があります。
「WeJSというコミュニティはどんな価値を提供すべきか?」という思想が背景にあって、それを実現するための運営ポリシーがあるからこそ、WeJSはみんなに長く愛されるコミュニティになっているのだなあと、強く感じます。
宣伝
散々WeJSを持ち上げたところで、宣伝です。
前述のように、WeJSの歴代主催者4人には、僕がパーソナリティの1人をしている「しがないラジオ」というポッドキャストにゲスト出演していただいています! コミュニティ運営の裏話なども聴けるので、ぜひ各種ポッドキャストアプリで聴いてみてください。