倉敷市の野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)で大人の文化デート!江戸時代の建築美と庭園を堪能
この記事では、岡山県倉敷市児島にある「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」を紹介します。地元に伝わる塩作りの伝統に触れながら、江戸時代以来の日本建築・庭園の美を堪能するデートプランをご案内します。
野﨑家塩業歴史館は、江戸後期から製塩業と新田開発で財を成した野﨑武左衛門が建てた邸宅で、瀬戸内地方を代表する歴史的建造物です。
国の重要文化財に指定されており、知的好奇心を刺激するデートを楽しみたいカップルや、地元の歴史・文化に触れたい二人にとって、魅力的なスポットとなっています。
今回は、野﨑家塩業歴史館の展示内容や魅力、デートでの楽しみ方などについて、同館の学芸員・三宅さんにお話を伺いました。
野﨑家塩業歴史館が誇る江戸時代の邸宅
▲表玄関は、岡山藩主(お殿さま)など貴賓をお迎えするのに使われていた。江戸時代からの姿をそのまま保存している
足袋(たび)の製造・販売を広く手掛ける野崎家は、江戸時代後期に入浜式塩田(※1)を用いた製塩業に進出しました。経営する塩田の規模は約170ヘクタールにも及び(東京ドーム約36個分に相当)、現在のJR児島駅周辺にまで塩田が広がっていたそうです。
(※1)江戸時代以来の製塩方法で使われる塩田。満潮時の海水面よりも低い場所に塩田を作り、海水を流し込んで乾燥させ、塩分を含んだ砂を集める。その後、さらに海水をかけて濃い塩水を作り、それを煮詰めて塩を製造する。
それでは、「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」の展示内容について、具体的に見ていきましょう。
圧巻の敷地面積!ジーンズストリートに隣接する野﨑家の邸宅
編集部
今回初めて野﨑家塩業歴史館に伺いましたが、想像していた以上に規模感のある和風のお屋敷で、日本の伝統的な雰囲気を十分に味わえる印象を受けました。
まず、施設のコンセプトやロケーションの魅力について教えていただけますか?
三宅さん
当館は、江戸時代に製塩業と新田開発で財を成した大庄屋・野﨑武左衛門が築いた屋敷です。敷地の広さは約3,000坪で、建物面積が1,000坪ほどにも及びます。これは一般的な住宅の数十倍の規模になります。
▲広大な敷地内には、風情ある茶室も設えられている
規模の大きさだけでなく、来館者それぞれが自分の興味に合わせて楽しめることが当館の最大の魅力だと考えています。江戸時代の建築様式や庭園の美しさを堪能したり、展示されている繊細な意匠の調度品を鑑賞したり、さらには瀬戸内地方の重要産業であった製塩の歴史について学ぶことができます。
カップルの方々も、それぞれの興味や好みに合わせて自由にお過ごしいただけます。
また、当館の前から約400mにわたって、人気スポット「児島ジーンズストリート」が続いています。独創性と高品質にこだわる国産ジーンズのショップが集まっており、近年は海外からの観光客も急増しています。
江戸時代の建築美と庭園を堪能できる常設展示
編集部
野﨑家塩業歴史館のメインの展示について教えてください。メイン展示の魅力にも触れていただけると嬉しいです。
三宅さん
年間を通して見学できるのは、国の重要文化財に指定されている建物や庭、そして製塩に関する資料館です。これらが当館のメイン展示となります。
▲製塩に関する資料を展示した展示館の内部。江戸期の蔵を改装したもの
入口の幅24mほどにもなる壮麗な長屋門(ながやもん)(※2)をくぐると、本瓦葺きの豪壮な建物群が目に入ります。奥には枯山水(かれさんすい)(※3)の日本庭園が広がり、なまこ壁(※4)の堂々たる6棟の蔵が立ち並ぶ様子は圧巻です。
(※2)日本の伝統的な門形式の一つで、江戸期に多く建てられた。諸大名の城郭や陣屋、武家屋敷の門として発生した形式。
(※3)水を使わずに、石や白砂を用いて水の流れを表現した日本庭園の一形式。鎌倉期に禅宗が伝来すると、本格的な広まりを見せた。
(※4)平瓦を貼り付け、目地を漆喰で海の生物・なまこのように盛り上げた壁。防火性や保温性、保湿性に優れている。
▲敷地入口の豪壮な長屋門。幅は約24mにも及ぶ
▲なまこ壁も見事な土蔵群。野崎家が豊かな大庄屋だったことが偲ばれる
そして、野﨑家の人々の生活や仕事の中心であった主屋(おもや)は、約42mもの長さがあり、9つの座敷を見通すことができます。その圧倒的なスケール感は、ぜひ実際にご覧いただきたいものです。
▲主屋(おもや)は、約42mもの長さを誇る。9つの座敷を見通せて、まさに圧巻の眺め!
編集部
野﨑家塩業歴史館をデートの一環で訪れた際に、三宅さんおすすめの見学方法などありましたら、ぜひ教えてください。
三宅さん
建物の周囲をぐるりと回って見学できるようになっていますが、順路上にご自身のスマートフォンで読み取るQRコードをご用意しています。そのQRコードを読み取ると、各場所に合った音声ガイダンスをお聞きいただけますので、ぜひご活用ください。
音声ガイダンスでは、それぞれの建物や庭園について初めての方にも分かりやすく解説されています。お二人で一緒に聞きながら回ることで、目の前の対象をより深く理解し、楽しんでいただけると思います。
注目の企画展!雛人形展示と別邸特別公開の魅力
編集部
三宅さんが特にお好きな展示やコレクションがありましたら、ご紹介いただけますか?
三宅さん
私のお気に入りは、先日の企画展にも出品した藤井松林(ふじいしょうりん)(※5)の「福山左義長図」です。
(※5)幕末~明治期の画家で、元福山藩士。花鳥画、人物画、山水画のいずれにも優れた才能を発揮した。
▲藤井松林(ふじいしょうりん)の手による「福山左義長図」。観衆の表情が生き生きと描かれている
明治21(1888)年に描かれたもので、左義長とはいわゆる「とんど祭り」を意味しています。使い終えた正月飾りや御守などを焚き上げて、無病息災を祈るお祭りです。
福山城を中心とした周囲の様子が描かれており、大きな櫓(やぐら)飾りの迫力に惹き込まれ、生き生きと描き込まれた人々の姿に気持ちが和みます。実際に展示できる機会は限られていますが、公式サイトのブログ記事でも作品の魅力をご覧いただけます。
>>公式サイト・ブログ「もう一つの左義長図と藤井松林from福山の美術」
編集部
野﨑家塩業歴史館で過去に人気があったり、繰り返し開催されたりするような企画展・特別展などがありましたら、お話しいただけますか?
三宅さん
毎年開催している企画展では、野﨑家に代々伝わる雛人形や雛道具の展示、そして普段は非公開の別邸の特別公開を行っております。2~3月を中心とする寒い時期ですが、毎年多くの方にご来館いただく人気の企画展です。
▲野崎家に伝わる雛人形や雛道具。ていねいな仕事が光る、味わい深い作品が多い
野﨑家縁(ゆかり)の雛人形の精緻な造作をじっくりとご覧いただけますし、別邸「迨暇堂(たいかどう)」では、100畳敷の大広間いっぱいに、地域の方々から寄せられた雛人形が飾られます。当館ならではの見応えある光景をお楽しみいただけます。
編集部
今お話しいただいた企画展について、人気の理由はどこにあると思われますか?
三宅さん
野﨑家は、岡山藩主であった池田家から、高さ80cmほどもある大きな享保雛(きょうほびな)(※6)を拝領しています。これほどの大きさで現代まで伝わっているものは、非常に稀少です。
(※6)江戸期の享保年間に、京都で生まれて各地に広まった雛人形。贅沢で華美な時代背景を反映し、豪華で高級なものが制作された。各地に広まるにつれて大きくなり、高さ60cm程度のものもあった。
▲藩主の池田家から拝領した貴重な享保雛。女雛は冠まで入れると高さ80㎝にもなり、享保雛の伝来品としては全国最大級
美しく貴重な享保雛を鑑賞できる上、当館の目玉イベントとして長年続いていることがメディアでも取り上げられました。さらに、ご来館いただいた方々の口コミも相まって、人気が高まっているのだと思います。
今後開催予定の企画展については、公式サイトの「イベント」ページで告知しておりますので、ぜひご確認ください。
建物と庭園だけじゃない!野﨑家塩業歴史館の隠れた見どころ
▲かつて使用人たちの食事を作った台所。江戸時代以来の台所道具も興味深い
編集部
三宅さんが考える「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」の見どころはどこでしょうか?
三宅さん
江戸時代以来の旧家の建物や、枯山水の庭園、野﨑家に伝わる貴重な美術品・調度品などは、もちろん大きな見どころです。
何より、当館は製塩業に関わる博物館です。野﨑家の塩田経営には、当時としては画期的なビジネスモデルが採用されていました。製塩方法も、歴史の中でさまざまに変化しています。これらも当館の重要な見どころになるでしょう。
▲往時の入浜式塩田での製塩作業の様子。瀬戸内の塩は、にがり成分が豊かで美味しいと言われている
人間の生命維持や生活に必要不可欠な塩がどのように作られ、またどのように使われているのかを知ることで、驚きと同時に、塩の大切さを再認識できるかもしれません。
当館が、皆さんが普段何気なく口にしている塩について興味を持っていただくきっかけになれば嬉しいですね。
編集部
ほかの類似施設と差別化できる部分や、特に自慢したい点がありましたら、ぜひお話しください。
三宅さん
江戸時代以来の邸宅として、これほどの規模で往時の姿を保ったまま、美しく維持・保存されてきたことは、特筆すべき点だと考えています。
常時4人の職人さんが毎日丁寧に樹木の世話や掃除をしてくれているため、いつお越しいただいても、清々しい気分で庭を散策していただけます。これも、私たちの自慢の一つかもしれませんね。
▲表書院から庭園を眺める。いつでも見事に手入れされた庭園には、ファンも多い
編集部
野﨑家塩業歴史館を訪れる時期やタイミングによって、おすすめの楽しみ方などがありましたら、教えていただけますか?
三宅さん
例年5月下旬~6月上旬にかけて、表書院前のサツキの花が美しく咲き誇ります。庭の美しい緑とサツキの鮮やかな朱色のコントラストをお楽しみください。非常にフォトジェニックで、写真映えする素晴らしい光景が広がります。
▲フォトジェニックなサツキ開花時の表書院。緑と朱のコントラストが秀逸!
カップルで楽しむ!野﨑家塩業歴史館のデートプラン
▲敷地内に建つ「塩づくり体験館」
ここまでは、「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」のコンセプトや見どころなど、観光で訪れた際の魅力を中心にお聞きしてきました。ここからは、カップルでデートの一環として見学する場合に焦点を当てて、お話を伺ってみましょう。例えば、二人で楽しめる特別な体験や、ロマンチックなスポットなどについて詳しく教えていただきたいと思います。
インスタ映えスポット満載!自由に撮影できる見学通路
編集部
最近では、SNSに投稿を楽しむカップルも増えています。野﨑家塩業歴史館では、デート中のカップルが写真撮影などを楽しめるのでしょうか?
三宅さん
見学通路内であれば、どこでも写真撮影をしていただけますよ。趣のある建物を背景に自撮りをしていただくのも、もちろん問題ありません。館内には魅力的な撮影スポットがたくさんありますので、SNS映えする素敵な一枚を撮ってみてくださいね。
二人で挑戦!塩づくり体験ワークショップ
編集部
カップルで参加できるワークショップや、体験教室などを開催されていましたら、ぜひご紹介をお願いします。
三宅さん
参加の1週間前までに電話予約(086-472-2001)をいただければ、昔ながらの製法での塩作りを体験できます。参加費は無料で(入館料のみ必要)、濃い塩水を土鍋で煮詰めて、お二人で作った塩を持ち帰ることができますよ。
▲塩作り体験で作られる塩。塩にぎりを作ると美味しく楽しめます
当館の学芸員が分かりやすく解説しますので、塩を作りながら、疑問点などもどんどん質問してください。現在では簡単に手に入る塩ですが、製造の大変さを知ることで、これまでとは違った思いで塩を見るようになるかもしれません。
詳しくは、公式サイトの「体験」ページをご覧ください。
また、「ほん塩500g」を240円/袋で販売しています。お土産として購入し、おうちデートでの料理に使うのもおすすめです。
▲にがり成分たっぷりの「ほん塩500g」をお土産に購入できます(240円)
野﨑家塩業歴史館なら周辺デートスポットも豊富
編集部
カップルが野﨑家塩業歴史館を見学する前後に立ち寄れる、おすすめのデートスポットが近隣にありましたら、ぜひご紹介をお願いします。
三宅さん
当館をお楽しみいただいた後は、「児島ジーンズストリート」をお二人で散策するのが何と言ってもおすすめです。児島は、国産ジーンズが初めて生まれた聖地と言われ、通りには個性的なジーンズショップが多数集まっています。
ジーンズストリートには、ジーンズ専門店以外にも、様々な洋服店やお洒落なカフェも充実しているので、当館と併せて1日中デートを楽しめるスポットです。
また、当館から徒歩3分ほどの老舗洋食店「ちくりん」のオムライスや、徒歩約6分の天ぷら割烹店「三松」の天ぷらは、地元でも人気の看板メニューで、ランチデートにもおすすめです。両店とも味が良く、価格も手頃なので、カップルでのお食事にぴったりです。
▼老舗洋食店「ちくりん」(電話:086-472-2187)
▼天ぷら割烹店「三松」(電話:086-473-1060)
野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)からカップルへのメッセージ
▲見事に苔むした主屋庭園は、まさに侘び寂びの世界。日本庭園ファンの外国人も喜ぶ光景です。
編集部
これから「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」を訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いがありましたら、ぜひお話しください。
三宅さん
伝統的な日本庭園や建築に興味がある方ならば、当館は大いに関心を持っていただける施設だと思います。とにかく広い敷地ですから、お二人でゆったりとご覧になってください。また、塩作りの歴史や文化にも興味を持っていただけたら嬉しいです。当館では、塩業に関する貴重な資料や展示も充実していますので、ぜひご覧ください。
編集部
三宅さん、本日は年末のお忙しいところに時間を割いていただき、どうもありがとうございました。広大な敷地と美しく手入れされた庭園は、カップルの皆様にとって素晴らしいデートスポットになると思います。なお、階段や石畳もありますので、歩きやすい靴でお越しいただくことをおすすめします。
野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)の口コミ・感想
デートの参考になるよう、「野﨑家塩業歴史館(旧野﨑家住宅)」を実際に訪れた方々の口コミや感想をご紹介します。
- 想像していた以上に立派な庭園と建物!京都の名所を訪れたかのような雰囲気を味わえます。
- 丁寧に手入れされた枯山水の庭園を眺めていると、自然と心が落ち着き、穏やかな気持ちになります。
- 当時の生活を垣間見ることができる見応えのある展示品が豊富です。苔むした庭園の美しさも印象的でした。
- 日常的に使用している塩の奥深さや多岐にわたる用途について、新たな発見がありました。
全体的に、高評価の感想が多く寄せられています。歴史的な建物や庭園の美しさ、充実した展示内容に、多くの方が感銘を受けている様子がうかがえます。カップルでの初めての訪問でも、充実した時間を過ごせる魅力的なスポットだといえるでしょう。
野﨑家塩業歴史館の利用案内:料金・割引・予約方法・おすすめの訪問時間
料金 | 大人(高校生以上):1人500円 中学生・小学生:1人300円 幼児:無料 ※小学生から高校生までは、土曜日・日曜日・祝日は無料 |
---|---|
割引 | 障害者手帳をお持ちの方は2割引 ※手帳をお持ちの本人および付添者1名が割引対象 |
予約 | 一般の見学:予約不要 塩作り体験:参加希望日の1週間前までに電話予約(086-472-2001) |
混雑しない日時 | 曜日に関わらず、どの時間帯でも比較的空いています ※学校関係や団体などの来館時は、一時的に混雑する可能性があります |
※表示価格はすべて税込です
野﨑家塩業歴史館へのアクセス・営業時間など基本情報
住所 | 〒711-0913 岡山県倉敷市児島味野1丁目11-19 |
---|---|
電話番号 | 086-472-2001 |
アクセス | 【公共交通機関】 JR本四備讃線(瀬戸大橋線):児島駅下車・東出口から徒歩約16分 ※駅前からタクシー利用で約5分 【自動車】 瀬戸中央自動車道:児島インターチェンジから約10分 |
駐車場 | 無料駐車場あり ※乗用車36台収容可能 |
営業時間 | 9:00~16:30 ※閉門時刻は17:00 |
休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は翌日) 年末年始(毎年12月25日~1月1日) |
公式サイト | https://www.nozakike.or.jp/ |
公式SNS | Instagram(インスタグラム) Facebook(フェイスブック) |
※最新の情報は、公式サイト等でご確認ください
※記事中の金額は、すべて税込表示です