チョン・イル演じるジウンに思わず感情移入してしまう「シンデレラと4人の騎士<ナイト>」【古家正亨連載】 - エンタメをもっと楽しむWebマガジン「J:magazine!」

チョン・イル演じるジウンに思わず感情移入してしまう「シンデレラと4人の騎士<ナイト>」【古家正亨連載】

古家正亨

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)

ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。

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はじまりから怒られることを書くようですが、僕は直球のラブコメディーというものは、あまり好きではありません。なので、このドラマに関して言えば、まったく自分の"見たい作品"ラインナップには、正直、入ってこない作品です。でも仕事柄、俳優さんとお仕事をご一緒する場合は、とにかく、作品は見てからイベントに臨むことにしているので、この作品も、そういった流れで、仕方なく見始めた作品だったんです。ところがです! まさに「食わず嫌い」という言葉があるように、強制的に自分に課さなければ見なかったであろう(何度もすみません......)このドラマが、個人的にはとても面白かったんですね。

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このドラマ、簡単に言えば、3人の御曹司たち(あれ、なぜ4人ではないのか!?という疑問については後ほど)と、1つ屋根の下で暮らすことになったヒロインとの恋愛模様を描いた、王道の少女漫画的(実際にWEB漫画原作)の展開と、王道の韓ドラ的要素がこれでもかと詰め込まれた作品で、まさに「ザ・韓国ドラマ」といった感じの作品なんですが、ただ、前半と後半では、少しタッチが変わってくるんですよね。

血のつながっていない姉から意地悪され、決して恵まれた環境で生活しているとは言えないパク・ソダムさん演じるハウォンがヒロイン。学費を稼ぐために日々アルバイトをしてなんとか生計を立て頑張っている、いわゆる韓ドラ的「恵まれないヒロイン」像そのもの。ところがある日、とある財閥の会長と知り合うことになり、貧しくても明るく元気なそんなハウォンに好感を抱いた会長から彼女に対して、ある仕事の依頼が舞い込みます。自分の孫である御曹司3人をちゃんとした人間にしてほしいという仕事を依頼されることになるんです。その孫というのが、初孫であり女性の扱いには慣れていて、でも、初恋の思い出に悩まされるアン・ジェヒョンさん演じるヒョンミンと、人とコミュニケーションをとるのが苦手だけど実は心優しいチョン・イルさん演じるジウン、そして心穏やかで優しい性格の持ち主でなんと芸能人というCNBLUEのイ・ジョンシンさん演じるソウの3人。くせ者でわがままな3人でしたが、やはり「お金になる」と考えたハウォンは、その仕事を結局受けることにします。そうです、4人の騎士というタイトルですが、実は3人の騎士しか出てきません。もう1人は、チェ・ミンさん演じる会長の秘書であるユンソンがその人。会長の命令には絶対に従うというクールなこの人が、実は、裏の顔があるという設定なんですね。

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そんな明るく元気なハウォンが、このわがままな御曹司3人とクールな執事と一緒に暮らすことになるわけです。そして、会長と孫たちの微妙な関係も徐々に良い変化が現れ、その過程で、想像通り、御曹司3人と恋が芽生えるわけです。

でも! そうです。韓ドラ的に言えば、その中から誰か1人と結ばれなくてはなりません。そして、これまた想像通り、一匹狼的でどこかに影を感じてしまうジウンと引かれあっていくんですね。「え? 古家さん、そこまで言ってしまっていいんですか?」と聞かれそうですが、ここからが後半戦、予想もしなかった怒涛の出来事が続き、「そんなバカな!」な展開が続きます。2人の幸せは決して長くは続かないんです。しかも、その幸せを裂こうとする人に大きな出来事が起こり、それを救えるのはジウンだけだったり......と。もちろん、いやな気持ちになるのではなく、最後の最後にはハッピーエンドが待っているわけですが、そこに至るまでの話数と出来事の数がシンクロしないため、先の見えないジェットコースターに乗っているような後半は、1分たりとも見逃せません。

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このドラマの核を握っているのは、やはりチョン・イルさんではないかと思います。このドラマを観ることになったのも、チョン・イルさんとのお仕事があるからという理由でしたが、チョン・イルさんって、何かを抱えながらもそれを表面に出さず、内に秘めて生きる人を演じるのが、本当にうまいですよね。ジウンもこのドラマの中では、ちょっと異色のキャラの持ち主で、一匹狼にもほどがあるんじゃないかっていう感じなんです。でも、彼が演じると、説得力を持つというか、それが彼の演技力であり、魅力なんでしょうね。

個人的に「このドラマは面白かった」と感じた理由は、そんなジウンに感情移入できたからだと思います。そこが、このドラマを楽しめる重要なカギだと思うんです。ドラマを観る行為って、仮想の世界に生きる誰かを介して、代理満足を得ることだと思うんです。なので、誰か一人でも共感できる人物が、そのドラマにいることが満足度に直結すると思うんです。多分、男性であれば、3人+1人=4人の男性主人公の誰かに、自分のどこかを投影できると思います。そして、そんな彼らを通じて、現代のシンデレラとの恋の行方に、ハラハラ・ドキドキしてもらえるはずです。