「マブリー」ことマ・ドンソクの魅力全開!『犯罪都市 THE ROUNDUP』【古家正亨連載】 - エンタメをもっと楽しむWebマガジン「J:magazine!」

「マブリー」ことマ・ドンソクの魅力全開!『犯罪都市 THE ROUNDUP』【古家正亨連載】

古家正亨

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)

ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。

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「マブリー」ことマ・ドンソクの魅力全開!『犯罪都市 THE ROUNDUP』【古家正亨連載】

ヨロブン、アニョハセヨ! MCの古家正亨です。今回から僕が、J:COMさんで放送・配信される韓流・K-POPコンテンツの中から、選りすぐりの作品をピックアップし、"古家目線"でご紹介していきますので、どうぞお楽しみに!

ところで、皆さんは"マブリー"っていう言葉、聞いたことはありますか? 韓国本国はもちろん、日本でもよく知られている俳優マ・ドンソクさんの愛称で、「マ・ドンソク」と「ラブリー」の合成語なんですね。マ・ドンソクさん、ご存じですか? 1971年生まれで、現在53歳。幼い頃、シルベスター・スタローン主演の映画『ロッキー』を観て以降、影響を受けボクシングを始めたそうで、同時にスタローンのような俳優を目指すように。その後、1989年に家族と一緒にアメリカに移住。コロンバス州立大学で体育学を学び、フィットネストレーナーやボディビルダーとして活動。その一方、俳優としての夢を叶えるべく、努力が実り、1994年にアメリカでミュージカル俳優としてそのキャリアをスタートさせます。韓国では、2002年に映画『天軍』のオーディションに合格して、本格的に俳優として活動するようになりました。

彼の俳優としての魅力は、なんといっても、その大きな体といかつい表情を活かした彼にしかできない演技ができるというところ。例えば2019年公開の『悪人伝』(イ・ウォンテ監督作)では、強面を活かし、貫禄たっぷりなヤクザの組長を演じて話題になりましたし、日本でもヒットした2016年公開の映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(ヨン・サンホ監督作)では、出産を控えた妻とともに列車に乗り合わせた男性を演じ、襲い掛かるゾンビを素手で押さえつけ、投げ飛ばす姿が話題となりました。さらに、アメリカ国籍でもある彼が、ドン・リーの名で2021年にマーベル映画『エターナルズ』(クロエ・ジャオ監督作)に出演しハリウッドデビューを果たしたことも記憶に新しいと思います。

こういったアクションスターの印象が強い一方、2018年に公開された『ファイティン!』(キム・ヨンワン監督作)のアームレスラー役のような、強さの中に、優しさや温かさがにじみ出た、憎めない、お茶目な一面を見せてくれるところに、多くの人が共感と愛情を抱くわけです。それが先に挙げた"マブリー"という愛称が生まれた背景にあるんですね。

今回、ご紹介するのは、そんな彼の"マブリー"さが120%という作品と言っていいでしょう。映画『犯罪都市』シリーズの第2作にあたる、2022年公開の映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』です。銃は使わず、拳一つで犯罪者に立ち向かう、マ・ドンソクさん演じる刑事マ・ソクトと犯罪組織の戦いを描いたクライムアクションシリーズで、これまで全4作制作されています。韓国でも数少ない映画のシリーズものであり、2作目以降、韓国では「国民ヒット」と言われるメガヒットの基準である、観客動員1,000万人を突破。前4作で4,000万人以上を動員した記録的な作品でもあるんです。ちなみに観客動員という点でいうと、マ・ドンソクさんが出演した映画では『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『神と共に 第一章:罪と罰』(2017)、『神と共に 第二章:因と縁』(2018)と合わせ、なんと観客動員1,000万人超えは6作品で、韓国の俳優では最多記録となっています。そんな『犯罪都市』シリーズですが、日本でもこれまで1作目から3作目まで公開されていて、最新作『犯罪都市 PUNISHMENT』が9月に公開されることもあり、ご紹介するタイミングとしてはバッチリではないでしょうか。

ここまでシリーズ全作がヒットしている理由は、第1作目で見せてくれた、拳銃を使わず拳だけで悪を征する刑事マ・ソクトという特異なキャラクターを中心とした軽快なアクションと、彼を取り巻く衿川(クムチョン)署強力班の愉快な面々とのほっこりするやり取りと空気感のコントラストが絶妙で、閉塞感のある現代社会において、ストレスを発散させてくれる、代理満足を与えてくれる映画だからこそだと思うんです。そういった中で、第2作目にあたる『犯罪都市 THE ROUNDUP』の存在は極めて重要といえます。というのも、シリーズものの宿命といえば、第1作を、質的にも観客動員的にも超えられるかどうかという点だと思いますが、その点でいうとこの『犯罪都市』は、アメリカ映画『エイリアン』と同様の成功を収めたと言えばいいでしょうか。リドリー・スコット監督が、ベースとなる世界観を第1作で作ったとしたら、ジェームズ・キャメロン監督が、第2作で世界観を継承しながら、エンターテインメントとしてさらに洗練された魅力を生み出し、興行成績も1作目を上回る成功を収めた流れとまさに一緒だと思うんです。それを可能にしたのが、第1作の助監督を務めたイ・サンヨン監督が2作目の監督を務めたからということもあると思います。

ストーリーは、韓国・衿川(クムチョン)署強力班に所属する怪物刑事マ・ソクトが、国外に逃亡した容疑者を引き取るためベトナムへと向かい、その容疑者から怪しい気配を感じ取り、秘密裏に捜査に乗り出してみると、その先に信じられない凶悪犯罪を重ねるカン・ヘサン(ソン・ソック)という存在が浮上してきます。もちろん、ソクトを中心とした衿川(クムチョン)署強力班の面々は、そんなヘサンを追い詰めていくんですが、彼らの想像を遥かに超えるヘサンに、振り回されることに...。

この第2作が、1作目を超えてシリーズ最高のヒットになったのは、先に挙げた理由はもちろん、ドラマ「私の解放日誌」で大スターになった俳優ソン・ソックさんが、ドラマのヒットから時間を置かず、まったく違うキャラクターで、セクシーかつ残忍なヘサンを演じきったことにあります。3、4作目ももちろんヒットはしましたが、興行面で2作目を超えられなかったのは、やはりヘサンを超えるような、不気味な怖さのある悪役が登場しなかったからでしょう。それだけ、ソン・ソックさんの怖さは、絶賛されてしかるべきものがあると思います。

あと、これも伝えておきたいのが、シリーズものを第2作目から観ても面白いのかどうかという点。これははっきり言って、大丈夫です! ただ、映画の中に出てくる細かいディテール(例えば「秘密の部屋」の存在など)は、前作から受け継がれているものもあるので、1作目を観ておけば、より楽しめるのは間違いありません。ただ、それを除いたとしても、十分にクライムアクションの名作として、そして"マブリー"の魅力全開の作品として誰が観ても楽しめる作品になっていると思いますよ。