植生資源の評価と認知に関する研究 – IGES国際生態学センター

植生資源の評価と認知に関する研究

植生資源の評価と認知に関する研究

林 寿則 (主任研究員)

研究の目的

日本各地で植生資源の変質・減少が進行している。中でも各地の環境条件に適応して生育している地域固有の植生資源は、その価値を認知されないまま消失するケースが多い。本研究では、植生資源が有する機能を定量的に評価するための調査・研究を行なう。

研究内容

  1. 植生の量的・質的変化に関する調査・解析
  2. 植生資源の定量的評価に関する研究
  3. 都市域における樹木・樹林の機能に関する実験研究(樹木の防火機能について)

本研究では、樹木や樹林の防火機能に関する調査研究を進めている。関東大震災(1923)では東京や横浜において大規模な地震火災が発生し、死者行方不明者は10万人以上と推定されている。その一方で、樹木が水を吹いて火災の延焼を食い止めた事例や樹林に囲まれた公園・広場が多くの避難者を火災から守ったことも記録されている。阪神淡路大震災(1995)においても、樹木が強い揺れに耐え建物の倒壊を防ぐとともに火災の焼け止まり線の役割を果たしたことなどが報告されている。

本研究においては、
(1) 過去の災害教訓に基づいて各樹種の防火機能について整理する。
(2) 樹木の燃え難さを支えている樹葉含水率について、樹種ごとの特性や季節変動を計測する。
(3) 火災実験に基づいて樹葉の難燃性や樹木の遮熱機能について検証する。

密度の高い植栽は放射量の低減率が高い (総務省 消防庁 消防大学校 消防研究センターとの共同研究より)
中央の樹木が背後への熱を遮断する様子 (総務省 消防庁 消防大学校 消防研究センターとの共同研究より)

研究成果

  1. 林 寿則.2007.都市災害時の樹木の防火機能について.生態環境研究,14(1):57-64.
  2. 林 寿則.2008.災害時における樹木の防火記録について.第55回日本生態学会大会講演要旨集 P3-307.
  3. 林 寿則.2009.樹葉含水率に関する統計資料.生態環境研究, 16(1):71-75.
  4. 林 寿則・篠原雅彦・松島早苗・藤原一絵.2012.火炎近傍の樹木による背後での受熱量の低減効果に関する実験研究.日本緑化工学会誌,38(1):33-38.
  5. 林 寿則・篠原雅彦・松島早苗・藤原一絵.2015.有風接炎条件下における樹木の燃焼性状と遮熱機能に関する実験研究.生態環境研究,21・22(1):43-56.
  6. 林 寿則.2016.樹木の防火機能に関する研究 ~樹葉の含水率について~.JISE Newsletter,72:1-3.
  7. 原田 洋・鈴木伸一・林 寿則・目黒伸一・吉野知明.2018.環境を守る森をしらべる.海青社.
  8. 林 寿則.2019.環境保全林の林床に堆積した落葉は火災の延焼を助長する危険性はないか.JISE Report(3):15-18.