臨時研修会レポート丨法務省 x JILA丨法務省幹部をお招きした「リーガルテックガイドライン」研修 - 日本組織内弁護士協会|JILA

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2023.10.19| オンラインジャーナル

臨時研修会レポート丨法務省 x JILA丨法務省幹部をお招きした「リーガルテックガイドライン」研修

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(c) IIda

 

<臨時研修会レポート>

概要:

「法務業務の効率化・IT化」が重視され、様々なリーガルテックサービスが普及した昨今においては、法務部門でリーガルテックの技術的な利点をいかに活用できるかが益々重要になっています。

 

JILAでは、2023年10月4日(水)法務省幹部をお招きした「リーガルテックガイドライン」(AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について)の臨時研修会が開催されました。

 

本研修会は、法務省様のご協力のもとJILA会員の組織内弁護士に限らず、法務部門に所属されている方やリーガルテックに興味をお持ちの方などJILA非会員の方も広く参加対象となりました。当日は平日にも関わらず100名の定員に対して306名の申込みがあり、申込者の60%を超える196名が参加する大盛況となり、研修会に対する参加者の関心の高さが伺えました。

 

本研修会では法務省大臣官房付兼大臣官房司法法制部付の奥村 寿行氏をお招きし、令和5年8月1日に法務省HPで公開された『AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(ガイドライン)』について解説いただきました。また、解説にとどまらずガイドライン作成の背景や想いを伺うインタビュー、さらに、質疑応答のお時間を頂戴しました。法務省現職幹部の解説を聞いた希少な研修会のレポートをお届けします。

 

AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(ガイドライン)の解説:

● ガイドライン公表の経緯と目的

従前から、AI等を用いたリーガルテックは、サービスによっては「非弁活動」(弁護士法72条)に当たるか否かが問題となっていました。本ガイドラインは、企業の法務機能向上を通じた国際競争力向上や、契約書審査やナレッジマネジメントにおける有用性等に鑑み、弁護士法72条の趣旨を踏まえつつ、リーガルテックサービスを利用するにあたっての予測可能性を高めるために作成されました。

● ガイドラインの概要

弁護士法72条は罰則規定であり、非弁行為に該当するか否かは個別の事件における具体的な事実関係に基づき、判断する必要があります。あくまでも解釈や適用は、最終的には裁判所の判断に委ねられるため、本ガイドラインは、一般論として、サービス提供と同条の関係についての考え方を示したものとなっています。

● 問題となり得る点

ガイドラインでは、弁護士法72条に抵触し「非弁活動」に当たるか否かを判断する上で問題となり得る点として1.報酬を得る目的2.対象とする案件3.サービスの機能・表示4.サービスの利用者の4つを挙げ、各点ごとに判断の考慮要素や、通常該当しない例と該当し得る例を明確化しています。

 

「非弁活動」に当たるか否かを判断する上で問題となる点「1.報酬を得る目的」の有無について、「報酬」とは法律事件に関し、法律事務取扱のための役務に対して支払われる対価のことであり、サービスの運営形態等の諸般の事情を考慮して実質的に対価関係が認められるかを判断することがポイントになります。

 

「2.対象とする案件が『その他一般の法律事件』」に該当するか否かについて、弁護士法72条における「法律事件」とは法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件と言われています。同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには「事件性」が必要と考えられます。

 

「事件性」の有無については、契約の類型などによって直ちに判断することは困難であり、個別の事案ごとに、契約の目的や契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきとしました。

 

その上で、ガイドラインでは「事件性」が認められるものとして、紛争が生じた後に当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合をあげています。他方、通常「事件性」が認められないものとして、親子会社間などにおいて従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合などを示しました。

 

また、例示された類型以外についても、いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話し合いや、法的問題点の検討などについては、多くの場合「事件性」がないとの法務省当局の指摘があることに触れつつ、「事件性」の有無については諸般の事情を考慮して判断されるべきものと強調しました。

 

「3.サービスの機能・表示が『鑑定その他の法律事務』」に該当するか否かについて、ガイドラインでは、契約書関連業務を契約書作成支援サービス、契約書審査支援サービス、契約書管理支援サービスに分類し、それぞれ具体的に検討を行っています。例えば契約書作成支援サービスについて、「非定型的な入力内容に応じて個別の事案における背景事情を法的に処理して、具体的な提案を行うもの」は「鑑定」に該当し得るとし、「あらかじめ設定された複数の雛形から選択するような形式的なもの」については該当しないと述べました。

 

最後に「4.サービスの利用者」について、提供されるサービスが上記1.~3.の要件に該当する場合であっても、弁護士が弁護士法の趣旨に沿った形で利用する場合は、違法性が阻却される場合があるとしました。

 

ガイドラインでは、本件サービスを弁護士又は弁護士法人に提供する場合や、提供先が当事者となっている契約について、提供先において職員や取締役等になっている弁護士が、サービスを利用した結果も踏まえて、審査対象となる契約書等を自ら精査し、必要に応じて自ら修正を行う方法で活用する場合については、通常弁護士法72条に違反しないとしました。

 

ガイドラインの解説は、リーガルテックの利用を後押しし、組織内弁護士が今後益々重要性を増すことを示唆する形で終了しました。

 

インタビュー、質疑応答:

解説の後には、第3部会代表理事の渡部弁護士が聞き手となり、奥村氏へのインタビューと質疑応答が行われました。

インタビューでは、ガイドラインを作成した法務省司法法制部について、チーム編成や業務内容などを伺いました。

 

質疑応答では、事前に申込者から寄せられた質問に奥村氏が答えました。「ガイドライン公表後に法務省にどのような反応が寄せられたか」という質問に対して、奥村氏は「概ね好意的な意見が寄せられている」とし、自身も「知り合いの弁護士から“踏み込んだね”といったポジティブな反応があった」と答えました。

 

渡部氏の「法務省様自身も“かなり踏み込んだ”という認識がありますか?」という質問に対しては「踏み込んでいるのではないか、と思います」と答えました。「個々の事案については最終的に裁判所の判断となるものの、境界線が曖昧なままだとリーガルテックの提供事業者や、利用する国民が困る。ひいては社会の変化を阻害することに繋がりかねない。法務省としては、可能な限り、要件に該当し得る・通常該当しないを書かなければいけないのではないかという思いで作成した」と述べました。

 

最後に、奥村氏は「本ガイドラインを通して、今後のリーガルテックの適切な普及・発展、ひいては日本企業の国際競争力強化を後押ししていくことができれば、法務省としても幸いです。」と締めくくりました。

 

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