2023年3月20日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、第6次評価報告書 統合報告書を採択し、同報告書の政策決定者向け要約(SPM)を公表しました。この報告書には、2021年から順次発表されてきた第6次評価報告書第1作業部会:自然科学的根拠、第2作業部会:影響・適応・脆弱性、第3作業部会:気候変動の緩和の各報告書の知見がまとめられています。

本報告書によると、気温上昇を1.5℃に抑えるためには世界の温室効果ガス排出量を、2025年までにピークさせ、2030年までに43%削減する必要があります。この実現には、各国政府だけではなくあらゆる非国家アクターが、科学的根拠に基づく目標を設定し、その達成に向けた移行計画を策定し、ただちに実行していくことが求められます。

今回のJCIウェビナーでは、IPCC第6次評価報告書 統合報告書が示す気候変動の現状と気温上昇を1.5℃に抑える道筋・手法、また科学に基づく目標設定や移行計画作りの最新動向を解説しました。

アーカイブ動画と資料はプログラム内リンクからご覧いただけます。


JCIウェビナー
科学を知る: IPCC第6次評価報告書 統合報告書のポイントと削減目標・移行計画策定の最新動向

◇日時:2023年7月13日(木)14:00-15:30
◇開催方法:オンライン(Zoomウェビナー)
◇参加費無料・事前登録制

◇プログラム(敬称略)

1. 講演

講演1「IPCC第6次報告書統合報告書のポイントと1.5℃を実現するシナリオ」 資料
増井 利彦 国立環境研究所 社会システム領域 領域長

講演2「科学に基づく目標・移行計画作りとは」
➀Science Based Targets Initiative(SBTi)の最新動向 資料
高瀬 香絵  自然エネルギー財団 シニアコーディネーター

➁脱炭素移行戦略手法のポイント解説と最新動向 資料
鈴木 香織 Codo Advisory株式会社 代表取締役社長・CEO

2. 議論・質疑応答
回答者:講演者3名、原田卓哉 CDP Worldwide Japan レポーターサービス&サプライチェーン リード

進行:田中 健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループオフィサー(非国家アクター連携担当)

【関連リンク】
IPCC第6次評価報告書統合報告書ページ(IPCCウェブサイト:英文)
IPCC第6次評価報告書統合報告書 政策決定者向け要約 (IPCCウェブサイト:英文)
「政策決定者向け要約」文科省、経産省、気象庁、環境省による暫定訳(2023年4月17日時点)
環境省 IPCC 第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)の概要(2023年4月)


JCIは気候変動対策の実践に向けて重要なテーマを取り上げ、下記のとおりウェビナーの連続開催を予定しています。第2回以降の詳細は、本JCIウェブサイトにて順次お知らせします。

第1回「科学を知る: IPCC第6次評価報告書 統合報告書のポイントと目標・移行計画策定の最新動向」(7月13日)
第2回「現状を知る:日本のGX政策の現状と課題」(8月)
第3回「声を上げる:Race To Zero 5th P: Persuade」(9月)


登壇者プロフィール

  増井 利彦 国立環境研究所 社会システム領域 領域長

大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。1998年国立環境研究所研究員、2002年同主任研究員、2006年同室長を経て2022年より現職。国立環境研究所では、AIM(アジア太平洋統合モデル)の開発と様々な環境政策のシナリオの定量化を行う。2000年から東京工業大学にて連携教員(現在は特定教授)も務める。中央環境審議会臨時委員。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書第3作業部会執筆者。

鈴木 香織 Codo Advisory株式会社 代表取締役社長・CEO

クライアント企業の持続可能性向上支援の豊富な実績を持つサステナビリティ・コンサルタント。専門分野は、サーキュラーエコノミー、日本の環境関連法、国際市場の動向など。2022年3月より現職に就任し、様々なパートナーと連携し企業の気候変動対応深化を推進中。

 

  高瀬 香絵  自然エネルギー財団 シニアコーディネーター

2023年より現職。慶應義塾大学総合政策学部(学士)、政策・メディア研究科(修士)修了後、日本エネルギー経済研究所にてエネルギー統計、長期エネルギー需給見通し、石油精製モデル、都道府県エネルギー需給モデル、世界エネルギーモデル等を担当。ノードハウス著「地球温暖化の経済学」等を訳し、DICEモデルを用いた分析を実施。地球環境産業技術研究機構 (RITE)を経て、テコンドー専念のため研究を中断し、韓国龍仁(ヨンイン)大学に留学。引退後、東京大学新領域創成科学研究科にて応用一般均衡モデルを用いた研究にて博士(環境学)を取得、科学技術振興機構低炭素社会戦略センターにて、シナリオ分析や「電気代そのまま払い」社会実装等を実施。2015年に国際NGO CDPジャパンに参画し、企業・金融機関の目標設定(SBT)、再エネ調達(RE100)、TCFD情報開示、低炭素移行計画等のエンゲージメントを実施。

  田中 健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループオフィサー(非国家アクター連携担当)

福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクル推進などの環境保全行政、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開支援に従事。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。九州大学理学府分子科学専攻にて修士課程(理学)修了。