「これからはシステムインテグレーション(SI)そのものがAIによって代替される」。こう語るのは、インターネットイニシアティブ(IIJ)代表取締役 会長執行役員 Co-CEOの鈴木幸一氏だ。IT業界のご意見番でもある同氏のこの発言の意図を探ってみる。
SIの仕事はAIによってどう変わっていくのか
写真1:IIJ 代表取締役 会長執行役員 Co-CEOの鈴木幸一氏
IIJが先頃開いた決算会見で、鈴木氏がAIに対する考え方や取り組みについて言及した。その内容がIT業界にとってインパクトのある「今後のSIの在りよう」についてだったので、今回はこの話題を取り上げたい(写真1)。
鈴木氏はAIについて、こう話し始めた。
「私が汎用(はんよう)コンピューターを初めて見たのは1960年代、インターネットを知ったのは1968年、AIもその頃から話題に上っていた。AIは大量の情報を収集し、解析し、答えを予測するものとして注目されてきたが、それが進化していったのは、情報を収集するネットワークとそれを解析して予測するコンピューターがどんどん高速になっていったからだと、私は考えている」
「そうしたAIの進化によって、これから何が起こるか。例えば、工場ではかつて多くの人が働いていたが、ITをはじめとしたテクノロジーによって自動化が進み、今では人をほとんど見かけなくなった。ただ、その自動化を支えるシステムが高度化するにつれ、そのシステムを導入し運用する費用も高価なものになり、工場にとっては大きな負担となってきている」
そして、いよいよSIの話に入っていく。
「工場の負担を軽減する手立てはないものか。この工場の話は、IIJも主力事業の一つとしているSIに置き換えられることができるだろう。多くの企業や組織ではこれまで、ITによってさまざまなシステムを構築し運用することによって業務の効率化や生産性向上を図ってきた。しかし、今ではそのSIそのものの費用が高価なものになってきており、その負担を軽減する手立てが求められている」
「そうした課題を解消するために、AIをうまく使えないだろうか。そこで考えたのは、これからはSIそのものがAIによって代替されるのではないかということだ。工場の話で言えば、これまでモノづくりを支えてきた自動化システムのインテグレーションを、人がやるのではなくAIがやるようになるということだ。すなわち、AIによってSIを自動生成すると。そう考えていくと、SIの仕事はAIを適用することで将来どのように変わっていくのか。その将来のSIの形を見据え、IIJとしても次なる事業の柱にしていく必要がある」
こう話した鈴木氏は、IIJとして11月1日付で「AI導入実験室」と名付けた組織を設け、同氏自ら室長を兼務することを明らかにした。