「日本は今こそITを活用した変革に大きく踏み出す時」--IIJ鈴木会長の発言の意図とは - ZDNET Japan
松岡功の一言もの申す

「日本は今こそITを活用した変革に大きく踏み出す時」--IIJ鈴木会長の発言の意図とは

松岡功

2024-05-16 11:08

 「日本は今こそITを活用した変革に大きく踏み出す時だ」――こう語るのは、インターネットイニシアティブ(IIJ) 会長の鈴木幸一氏だ。30余年前にインターネットを日本に持ち込んで来た同氏のこの発言は何を意図しているのか(写真1)。

SI構築の受注残が2023年度末で前年度比7割増に

写真1:IIJ 代表取締役 会長執行役員 兼 Co-CEOの鈴木幸一氏
写真1:IIJ 代表取締役 会長執行役員 兼 Co-CEOの鈴木幸一氏

 鈴木氏の上記の発言は、IIJが先頃開いた2023年度(2024年3月期)決算および今後の経営計画に関する記者説明会でのひとコマだ。それらの内容はリンク先の発表資料をご覧いただくとして、本稿ではまず、鈴木氏の発言の意図に迫るために、今回の発表内容で筆者が注目した点を、会見で示された3つの図から挙げてみたい。

 図1は、IIJが2023年度に獲得した大型案件の一覧だ。同社 社長の勝栄二郎氏は「ここ数年、システムインテグレーション(SI)の大型案件が増加し、中でもSI構築の受注残は2023年度末で前年度比72.2%増に膨らんでいる。今後は大型が普通の案件になっていくとの手応えを感じている」と話した。筆者も長年、同社の決算状況を取材しているが、勝氏が言うように、この数年で大型案件が一気に膨らんだ印象だ。この動きは何を意味するのか。

図1:IIJが2023年度に獲得した大型案件の一覧(出典:IIJの発表資料)
図1:IIJが2023年度に獲得した大型案件の一覧(出典:IIJの発表資料)

 図2は、2024年度(2025年3月期)から2026年度(2027年3月期)までの3カ年の新中期計画の概要だ。「既存コア領域の一層強化」「新たな成長領域の創出」「経営・事業基盤の強化」の3つの戦略の内容はどれもこれまでの実績に裏打ちされている印象だ。

図2:新中期計画の概要(出典:IIJの発表資料)
図2:新中期計画の概要(出典:IIJの発表資料)

 図3は、新中期計画の先のビジョンを示したものだ。新中期計画では「既存領域に特化しリソース集中で事業規模拡大を加速するとともに、長期成長に向けスケールを追求する」ことを主眼とし、中長期ビジョンでは「売上高5000億円規模、営業利益率12~15%の達成」を掲げた。

図3:中長期ビジョン(出典:IIJの発表資料)
図3:中長期ビジョン(出典:IIJの発表資料)

 筆者が図3で特に注目したのは、その先の「Beyond 5000」で「NW(ネットワーク)社会の実現を支えるインフラ運用フルアウトソーサーとしての付加価値を発揮する」と掲げ、IIJが目指す姿を「インフラ運用フルアウトソーサー」と表現している点だ。なぜ注目したのかと言えば、IIJが今後「メガテック」を目指すならば、インフラだけでなくアプリケーション領域にも事業を広げていく必要があるのではないかと考えていたからだ。

 だが、この点については1年前の決算会見で質問したところ、鈴木氏は「SI事業でアプリケーション開発に乗り出す考えはない」とキッパリ答えた。そのやりとりについては、本サイトでの筆者のもう1つの連載「今週の明言」の2023年5月26日掲載記事「『IIJのSI事業はアプリ開発にも乗り出すのか』との質問に鈴木会長は何と答えたか」をご覧いただきたい。そうした背景もあっただけに、インフラ運用フルアウトソーサーとの表現に改めてインフラへのこだわりを感じた。

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