アンパンマンとして支援を続ける日本人職員 | World Food Programme Skip to main content

アンパンマンとして支援を続ける日本人職員

, WFP日本_レポート

新型コロナウイルスの感染拡大で家族のもとへ戻ることを希望する職員もいる中、それでも人道支援を継続するため現地に留まる日本人職員がいます。バングラデシュ事務所の中井恒二郎からのメッセージをご紹介します。

3月初旬に日本から赴任先バングラデシュのコックスバザールに戻りました。多くの同僚から、「どうしてこんな大変な時に戻ってきたの?」と聞かれました。ちょうどバングラデシュでも、新型コロナウイルスが広まり始め、百万人の難民キャンプにウイルスが広まったら、大変なことになると騒がれていた時期だったからです。

WFP事務所も毎日てんやわんやでした。家族が心配だから家に帰りたいと願い出るスタッフや、コックスバザールに戻りたいのに、交通規制で戻ってこれないスタッフ。難民キャンプで毎日働いているスタッフは、近所に住む人たちからコロナウイルス感染者ではないかと疑われ、差別されることもありました。

3月末にダッカの日本大使館から2度ほど、帰国チャーター便の搭乗希望案内を頂きましたが、私の答えは「NO」でした。こんな大変な時だからこそ、コックスバザールの同僚たちと一緒にいたかったし、途中で職務放棄できなかったからです。そして、WFPの食料支援が届かなければ、100万人のロヒンギャ難民の命が危機に晒されてしまうからです。

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支援物資を受け取るため、貨物機に向かう中井さん

妻と子供たちからは毎日のように電話がかかってきて、なんで家族のことを放っておいて、他の人たちを助けなければいけないのと言われました。私は子供たちにアンパンマンの話をして、「パパはマントを付けていないけれども、本当はアンパンマンで、お腹がすいて困っている人たちを助けているんだよ」と話しました。

新型コロナウイルス騒ぎが収まったら、もちろん日本に戻って家族と再会するつもりです。でもよく考えてみれば、こんな機会は、人生の中でそんなに多くないかもしれません。危機だからこそ、自分たちWFPが最も必要とされていると感じるし、だからこそ、アンパンマンパパはこの場に留まって、任務を遂行していきたいと思います。

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中井さんと同僚の現地・駐在スタッフと写真撮影している様子

現地の状況および国連WFPの活動内容

(5月22日時点)

86万人が暮らすバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプは、人口密集率が高い過密状態であるため、新型コロナウイルスの拡大が懸念されています。5月14日に最初の感染者が確認されて以降、手洗いや検温、人の行き来の制限をするなどして、国連WFPは地域と協力して様々な追加支援を行っています。

感染予防策として、オンライン環境未整備の地域に向けて新型コロナウイルスの周知や食料配給方法を、トゥクトゥク等の現地車輌を用いて広範囲に情報伝達する工夫をしています。また、食料や防護服等を新たに保管する倉庫の設置や、支援物資運搬車輌が効率的にキャンプを往来可能にする等、地域団体と連携して国内外への支援を迅速に行えるようにしました。

食料支援策として、配給場所での人同士の接触リスクを抑えるため、米やレンズ豆、香辛料や卵、野菜等が入った袋を一度に配給し、月に一回程度を目安に訪れるよう各世帯に促しています。さらに、栄養失調気味の5歳未満の子どもや、妊婦、授乳婦など6,000人以上については栄養価の高い食料の配給や生活物資の提供を行っています。

コックスバザールのキャンプ外の35,000世帯にも国連WFPは食料を提供し、初回は高カロリービスケットでしたが、5月には米類と給付金の提供を行う予定です。また、政府と協力し、農村地域への栄養強化米や全国約300万人の子どもの家庭へ学校給食の配給を行い、妊婦及び授乳婦、母子家庭や持病持ちの人々へは現金給付を行う策も取られています。この先続く雨季に向け、排水溝の掃除や地滑り対策も行っています。

一方、バングラデシュでは5月に直撃したサイクロンにより地滑りが起き、200万人以上の住民がシェルターへの避難を余儀なくされました。同国南西部への被害が特に大きく、国連WFPはビスケットなど90万世帯分の食料を用意すると共に、農業などの現地産業への被害の調査も緊急で行いました。

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サイクロンの被害を受けたロヒンギャ難民のファティマさん(15歳)。コロナ感染予防策がとられたなか配給された高カロリービスケットを受け取る。Photo: WFP/Nihab Rahman

この危機的事態に、国連WFPが支援活動を続けることができますよう、ご協力何卒よろしくお願い致します。