石破総理、施政方針演説で安全保障について触れる(1月24日)
- 日本の防衛
2025-1-27 12:15
令和7(2025)年1月24日(金)、第217回国会の開催に当たり、石破茂(いしば・しげる)内閣総理大臣は施政方針演説をおこなった。
演説の内容は、サステナブルでインデペンデントであり人財を尊重する「楽しい日本」を目指すという話から、経済と社会保障、外交と安全保障、政治改革や憲法改正など様々なテーマに及んだが、ここでは安全保障に関わりのある「外交・安全保障」、自衛隊の活動に影響のある「防災・復興」のテーマで語られた内容を転載する。
なお、読みやすくするために、適宜、見出しを加えた。
外交・安全保障
現状認識と安全保障の方針
間もなく4年目を迎えるロシアによるウクライナ侵略。我が国周辺での中国・ロシアの軍事活動の活発化。北朝鮮による核・ミサイル開発。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、我が国の独立と平和、人々の暮らしを守り抜くためには、バランス・オブ・パワーに常に最大限の注意を払い、我が国自身の能力を高める、日米同盟を更なる高みに引き上げる、同志国との連携を更に拡大・深化する、こうした取組を進めなければなりません。同時に、彼我の誤解・誤算を避けるために、関係国との緊密な意思疎通を重ねることが死活的に重要であります。
防衛力の強化、国民保護のシェルター
防衛力は我が国の安全保障の最終的な担保です。我が国への侵攻に自らが主たる責任をもって阻止・排除する能力を保有し、もって我が国への侵攻自体を抑止することを主眼に、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化を着実に進めます。シェルターの確保等を着実かつ早急に進めるなど、国民保護の取組を強化します。
自衛隊の人材確保と処遇改善
自衛隊の人的基盤の強化に取り組みます。自衛官が十分に充足されていないことは極めて深刻な課題であります。30を超える手当等の新設・金額の引上げなど過去に例のない取組を令和7年度から実現します。自衛官の処遇の魅力向上、若くして定年退職を迎える自衛官が退職後も活躍できる環境の創出等を内容とする法案を提出いたします。
沖縄の基地問題
基地負担の軽減、駐留に伴う諸課題の解決に引き続き取り組みます。昨年末、大浦湾側の地盤改良工事に着手することで、普天間飛行場全面返還の実現に向け大きく前進をいたしました。引き続き、着実に工事を進めてまいります。また、沖縄振興の経済効果を十分に域内に波及させ、それを実感していただくため、地元事業者の成長や県産品の活用に配意し、沖縄経済の構造改革に向けて支援を継続いたします。
日米同盟、インド太平洋地域の安全保障ネットワーク
日米同盟は我が国の外交・安全保障政策の基軸です。地域におけるパワーバランスが歴史的変化を遂げる中、力の空白が地域の不安定化につながることのないよう、日米の協力を更に具体的に深化させ、合衆国の地域へのコミットメントを引き続き確保しなければなりません。
また、日米豪印、日米韓、日米比を含め、地域における安全保障の重層的なネットワークを構築し、自由で開かれたインド太平洋を強化する上では、日米のリーダーシップは不可欠です。その際、我が国は同盟国として責任を共有し、応分の役割を果たさなければなりません。
来るべき日米首脳会談におきましては、トランプ大統領との間で、こうした安全保障や経済の諸課題につき、認識の共有を図り、一層の協力を確認し、日米同盟を更なる高みに引き上げたいと考えます。
日韓関係の重要性
韓国は国際社会の諸課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国です。内政上の動きはありますが、現下の戦略環境の下、日韓関係の重要性は変わりません。韓国側とは、引き続き、国交正常化60周年を含め、緊密に意思疎通してまいります。
ASEAN外交
年頭にはマレーシア及びインドネシアを訪問し、先日はラオス首相をお迎えをいたしました。国際社会が対立と分断を深める中、ASEAN諸国との関係強化は、我が国のグローバル・サウス外交の観点からも、最優先事項の一つです。今後とも、海洋安全保障、災害対応、脱炭素化等につき実務的な協力を進めてまいります。
対ロシア政策、対中国政策
対ウクライナ支援、対露制裁を今後とも強力に推し進めます。
中国との関係では、懸案や意見の相違につき、主張すべきことは主張する、その上で、協力できる分野では協力していく、そうした現実的な外交を行ってまいります。価値を共有する同盟国・同志国との確固たる連携を大前提とした上で、中国の安定的発展が地域全体の利益となるよう、習近平主席とも確認した、「戦略的互恵関係」の包括的推進、「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性に基づき、今後も首脳間を含むあらゆるレベルで中国との意思疎通を図ってまいります。日中韓の枠組みも前進させます。
日露関係は厳しい状況にありますが、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたします。
拉致問題への対応
拉致問題は、単なる誘拐事件ではなく、その本質は国家主権の侵害であります。拉致被害者や御家族が御高齢となる中で、時間的制約のある、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題であります。日朝平壌宣言の原点に立ち返り、すべての拉致被害者の一日も早い御帰国、北朝鮮との諸問題の解決に向け、断固たる決意の下、総力を挙げて取り組んでまいります。
グローバルな課題への取り組みと資源外交
気候変動、軍縮不拡散といった地球規模の課題、各地の人道状況にも、引き続き正面から取り組みます。ガザ傷病者への医療支援を早期に実現すべく、関係国等との調整を進めてまいります。
私は、年頭の外国訪問において、LNG(液化天然ガス)の安定供給に向けた協力、脱炭素化に向けたアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じた連携を確認いたしました。資源外交を引き続き強力に推進します。
防災・復興
能登半島地震からの復興、東日本大震災からの復興
能登半島地震から1年、復興中の奥能登を襲った豪雨から4か月が経過しました。復旧・復興への着実な取組により、地震に係る応急仮設住宅は全て完成し、農林水産業や輪島塗の再開も進みつつあります。能登の賑(にぎ)わいと笑顔を一日も早く取り戻すため、災害廃棄物処理の加速、公営住宅の建設等により被災者の生活・生業の再建を強力に支援します。
「福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし。」引き続き、復興庁が司令塔となり、被災者の生活や産業・生業の再建、福島イノベーション・コースト構想の推進等に取り組みます。
防災の強化、防災庁設置への準備
阪神淡路大震災から30年が経ちました。その経験・教訓を忘れることなく継承し、災害対策にいかしてまいります。
我が国は、世界有数の災害発生国であり、平時の備えにより被害の最小化を図るとともに、発生時にはスフィア基準を踏まえた環境を迅速に提供する必要があります。こうした国家の責務を果たすため、災害対策基本法等の改正案を提出し、被災地での福祉支援やボランティアとの連携を推進します。豪雨等の災害の発生予測を高度化し、情報発信を強化します。
防災対応の司令塔として防災監を内閣府に設置するとともに、内閣府防災担当の機能を予算・人員の側面から抜本的に強化します。その上で、防災庁を令和8年度中に設置すべく、準備を加速します。
大規模災害への備え
今後30年以内に、首都直下地震は70%程度、南海トラフ地震は80%程度の確率で発生するとされております。被災の地域や規模が予想できる大規模災害に対しては、自治体間の支援・受援の組合せの事前決定、支援物資の計画的備蓄など、事前防災を一層具体化いたしてまいります。
防災・減災、国土強靱化を着実に推進します。令和8年度からの実施中期計画については、施策の評価や資材価格の高騰等を勘案し、概ね15兆円程度の事業規模で実施中の5か年加速化対策を上回る水準が適切との考え方に立ち、本年6月を目途に策定します。人命・人権最優先の防災立国を構築し、世界一の防災大国にいたしてまいります。災害対策の知恵や技術を海外に発信し、世界の防災に貢献するとともに、新たな産業の柱にいたします。
(以上)
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