2009年05月 : 岩本康志のブログ

岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

2009年05月

Yahoo! ブログから引っ越しました。

Korea-Japan Seminar

 15日に,韓国・釜山で開催された「Korea-Japan Seminar on The Fiscal Policies of Korea and Japan to Meet Ongoing Global Economic Crisis」に参加して,同題のパネルディスカッションの討論者を務めました。会議は,韓国財政学会と日本の財政学者研究グループの主催です。
 私の報告では,クルーグマン教授がかつての日本にインフレ・ターゲットの導入を提唱したが,現在の米国に対しては財政刺激を主張しているため,日本で戸惑いが見られることを紹介したところ,参加者にうけていました。
 整合的な説明はきちんとクルーグマン教授にしてもらいたいところです。私の受け止め方は,米国では政府債務は小さく,デフレも現実のものではない状況なので,状況が違うとアドバイスも違うのだろうというものです。

 新型インフルエンザが騒動になる前に会議への参加を決めていたのですが,勤務先では4月30日に,患者発生国への渡航は自粛,他の国への渡航も再検討,真にやむを得ず渡航する場合は十分な対応をとるよう通知が出ました。韓国は,7日に3人目の感染者が報告されて以来,新規の感染者は出ていません。韓国側の主催者からは,日常生活に影響はないので,予定通り開催するとの連絡が会議前にありました。
 自粛要請にもかかわらず渡航して,万が一感染して勤務先を休業に追い込む原因を作ってしまったら大変です。しかし,日韓の財政学者で現状の経済危機と財政政策について意見交換できる貴重な機会ですし,猛毒性ウイルスを前提にした日本の対処マニュアルを今回の弱毒性新型ウイルスに杓子定規に適用することには疑問も感じていたので,リスクをとって渡航することにしました。ただし,手洗い,うがいに勤め,感染を防ぐ努力はきちんとしないといけません。
 14日。韓国入国の際は検疫質問書に記入して,耳穴に体温計を挿され,体温の測定です。一方,セミナーの会場となった海雲台では,マスクを着用する人はもちろん誰もいません。
 滞在中は用心していましたが,16日の帰路でふと気づいたことですが,新型インフルエンザに感染すること自体を恐れているのではなく,それによって社会的制裁を受けることを恐れて行動していたようです。
 4月30日の通知では,帰国後10日間は,体温を記録し,勤務先ではマスクを着用するように要請されています。人ごみを避けるようにという指示もありますが,人ごみを避けると通勤することもできないので,これは難しい。国内の状況も変わって,通知の意味にも現状ではいろいろと疑問もありますが,リスクをとったことで行動の責任が問われる立場にありますので,通知にしたがって行動せざるを得ません。
 今日の体温 35.9度。

(2009年5月19日追記)
 昨日,15日付けの通知が回ってきて,帰国後の体温記録・マスク着用の期間が7日間に短縮されました。
 関西方面への出張の自粛,出張後の体温記録・マスク着用は求められていません。
 今日の体温 35.8度。

(2009年5月19日追記・2)
 今日,18日付けの通知が回ってきて,内容がだいぶ変わりました。
 教職員すべてに出勤前に体温の測定が要請されています。
 患者発生国からの帰国者は検疫や保健所の指示に従うことになりました。妥当な内容に変わったと思います。

【政権選択選挙】党首の選び方

 民主党代表選が16日におこなわれる。半年以内に行われる衆院選は首相を選ぶ選挙になり,民主党代表選は首相選抜レースの準決勝に相当する。決勝戦の政権選択選挙後のことを考えると,どういう手続きで準決勝をするかが非常に大事になる。

 民主党規約第11条第4項は,
「代表の選出は、所属国会議員、県連を通して本部に登録された党員(地方自治体議員を含む)およびサポーター、その他代表選挙規則にもとづき、役員会の議を経て常任幹事会の承認にもとづき定める有権者による選挙によって行う。代表選出のための選挙は、代表の任期が終了する年の9月に行うことを通例とする。」
と定めるが,今回の選挙は,第11条第7項
「任期途中で代表が欠けた場合には、代表選挙規則にもとづく選挙によらず、両院議員総会において代表を選出することができる。この場合、新たに選出された代表の任期は、欠けた代表の残任期間とする。」
に基づき,衆参国会議員の投票で選出される。規則は「できる」と書かれているので,党員・サポーターも含めた選挙が本来のルール,衆参国会議員による選挙は例外ルールである。

 政権選択選挙の趣旨からいって,この準決勝は本来のルール(第11条第4項)で実施される方がよい。それが民主党のためになる。第7項による選挙で選ばれた党首が,衆院選の結果で首相になると,政権基盤に潜在的な問題を抱え込むことが理論的に示唆される。
 現在,民主党の国会議員は衆議院112名,参議院109名である(横路衆院副議長・江田参院議長含む)。民主党が衆議院で過半数(241議席)を得て,政権をとった場合,130名以上の新議員(つまり,今回の代表選に関与していない議員)が誕生する。代表が求心力を保っている限りは,この事実はさほど問題にならないだろう。
 しかし,首相の求心力が陰ってきたときは,与党国会議員の3分の1超が「自分たちが選んだ代表ではない」との思いで行動する可能性を内包する。首相は党内融和に腐心するようになり,リーダーシップを発揮することが難しくなる。

 さらに反発力が強くなって,与党議員と首相との間に距離ができてきても,党首=首相の交代は容易ではない。自民党で首相をたらい回しにするなら下野して政権を渡せと,これまで民主党は主張してきたので,今度は民主党が首相のたらい回しをするのは筋が通らないからである。
 与党が首相に不満をもったまま膠着状態になると,解散せよ,という声が高まり,支持率は低下する。首相を政権選択選挙で選ぶことを経験すると,国民はそれを当然の権利だと思うようになってくるだろう。
 つまり,政権選択選挙では,政党と党首は一蓮托生である。政党が政権選択選挙に向かう党首を選ぶときは,「自分たちが選んだ」という覚悟でまとまれるような手続きをとらなければいけない。選ばれた代表に投票しなかった人も,決定プロセスに参加していることでもって,その結果を受け入れるのである。
 政権選択選挙の目的は,強い首相を作ることである。首相がリーダーシップを発揮するには,主権者である国民が選んだ,という事実が非常に大きな意味をもつ。強い首相の候補者として弱い党首を作るのは,ちぐはぐな動きだ。

 なお,政治家個人の要因が大きいので,党員を含めた選挙で選ばれた党首が自らの失敗で行き詰ることもあるし,国会議員のみの選挙で選ばれた党首が巧みな運営で求心力を保つことも起こり得る。以上の議論は,そうした人的要因は捨象して,現状の制度と環境から理論的に予想される姿を示唆したものである。
 また,与党と野党は立場が違うので,民主党が野党に留まる場合には,上の議論は当てはまらないだろう。この場合に,どういう帰結が生じるかはよくわからない。

(参考)
民主党規約
http://www.dpj.or.jp/governance/policy/index.html
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