石徹白で使う道具として生まれた「すず竹竿」 : 石徹白川専用すず竹竿
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石徹白で使う道具として生まれた「すず竹竿」

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この春、最初のアマゴと「すず竹ロッド」

すず竹ロッドはすべてが石徹白川専用フライロッドです。すべてに石徹白川にまつわる銘をつけてます。

日本ではつい50年ほど前まで釣竿といったらすべて竹製だったのですが、戦後、グラスファイバーからカーボングラファイトへと一気に移行し気がつけば竹竿はまったく見かけなくなりました。ただしフライフィッシングでは竹を三角錐形に削ったものを六本貼り合わせた六角形の竹竿が今も使われています。、これは竹の自生しない国で発達した製法で材料もすべて中国産のトンキン竹といわれる輸入竹が使われており、フライフィッシングとともに伝来した輸入文化であり日本古来からの竹竿文化とは違うものです。
日本へのフライフィッシング伝来自体が、日本の竹竿文化が消えてからだったのでフライロッドを日本の竹を使用し日本式で作る試みはされなかったのです。したがって、私が作っているような日本のメ竹(すず竹)を材料にした丸い竹をそのままフライロッドに仕立てることはフライフィッシングの歴史において過去に無かったタイプの竿といえます。
日本ではフライ用のロッドというとなぜかいまだに外国メーカーが幅を利かせている。いつまでも単なる外国の釣りへの憧れというだけとも思えないので、外国製のフライロッドに憧れる日本のフライフィッシャーたちは「日本のフライフィッシング」を本当の意味で理解できてないのかもしれない。ふつう道具というものはその使用目的があって製作されるものでありその道具が釣竿の場合使われるフィールド、つまり日本のフィールド用の竿が生まれるはずです。外国のメーカーが日本のフィールドと日本の鱒をどこまで理解してるんでしょうか?
私がこの日本の鱒たちと遊ぶための石徹白川専用フライロッドである「すず竹ロッド」が作れたのには「すず竹」というフライロッドになるために生えてきたような竹の自生地が身近にあったことはもちろん、吉田幸弘というロッドビルダーが身近な友人であったことがとても大きい、竿作りの基本は彼から学んだ。しかし手取り足取り教わったことはないし、竿作りなんてそんなふうに師匠に作り方だけ習って一人前になれるジャンルではないとおもう。
重要だったのは作り手の私が「どこでどんな釣りに使いたいか?」「どんな竹を使いどんな竿にするか」 を自分自身で特定できていたことだろう。そして石徹白川という日本の典型的なフィールドをホームとしてそこでの釣りの道具作りに徹してきたことに尽きるのかも知れない。
すず竹ロッドを作り始めて7年、私の場合は石徹白川での自分のフライフィッシングにおいて道具としては何もこまらないレベルのものはあんがい早い時期にできていた、しかしその後の7年を経てようやく自分らしい作風が完成した気がします。
ジョイント部分は金属製からグラファイト製に変えジョイント部の力の分散が格段に良くなったし、スレッドカラーやグリップ周りのデザインも「これだ!」というものにたどり着いた。そして表面塗装もやめました。「すず竹」がもともと持っている優秀なエナメル質だけで充分だとおもうので今はフシの芽を欠いたあとの防水処理だけにとどめています。
フライフィッシングにおいてもグラファイト全盛時代にあえて竹竿を使用される理由の大きな部分に自然素材の竹が持つナチュラル感への憧れがあるとおもわれるが、一見本格的なナチュラル感のある西洋式六角竹竿も実はブランクの手元から先端まですべてが接着剤で貼り合わせてあるわけでけっこうケミカルに頼った製品なのです。その点において「すず竹ロッド」は格段に素朴でナチュラルなんですがそれだけに素材がすべてといっても過言ではなく、まさに素材との一期一会の産物である。
結局、私の作る竿って一人の釣りマニアが自分の釣りのために作った道具なんです。すべてが自己流、自己完結、自分で作って自分で使って「使い心地」が良ければそれで良しなんですが、最近、名古屋のフライフィッシングの名手安田龍司氏が妙に絶賛してくれるので、なんだかまた大きな自信ができちゃって・・・。そんなわけで、こうなったらすず竹ロッドがフライフィッシングにおける日本独自のスタンダードな道具文化となれるようになんとか普及していきたいと願ってます。
まったくの天然素材の道具なので100年たっても使ってくれる人がいるかも知れないことを想像するとあまり恥ずかしいものを残すわけにはいかない、な~んて思いながら作っています。

by itoshiro-sp | 2013-04-14 19:53  

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