UターンやIターンなどの話も多い昨今、医師の転職市場でもご相談いただくことが多い状況です。
近年はここにJターン(地方出身者が都会と地元双方に近い地方都市へ移住すること)も加わり、それぞれの転職事情が見受けられます。
弊社でも、実際に地元に戻りたい方、新天地を求めて移住としている方、パートナーのご実家近くに移住する方にご登録いただくケースが増えています。
中には、へき地・離島医療に取り組みたい!という熱意をお持ちの先生方からご登録いただくことも。
ところが「へき地医療に挑戦するには何をどうしたらいいでしょうか?」という声もあり、挑戦したいけどそのやり方がわからないという方もいらっしゃるようです。
そこで、今回は離島・へき地医療に関して、挑戦する際の注意点も踏まえて考えていきたいと思います。
へき地・離島の定義
厚生労働省の定める「へき地保健医療対策におけるへき地の定義」によれば、下記のように定められています。
へき地とは、交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち医療の確保が困難であって、「無医地区」及び「無医地区に準じる地区」の要件に該当する地域
無医地区とは、医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場所を起点として概ね半径4Kmの区域内に人口50人以上が居住している地域であって、かつ、容易に医療機関を利用することができない地区
準無医地区とは、無医地区には該当しないが、無医地区に準じ医療の確保が必要な地区と各都道府県知事が判断し、厚生労働大臣に協議し適当と認めた地区
※ 「無医地区」及び「無医地区に準じる地区」を要する都道府県は、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府を除く43県
地域としては人口の過疎地域と重なる点が多いため、高齢化する地域における医師の確保の問題の一つという見方もできます。
尚、長く厚生労働省のへき地保健医療計画として定められてきましたが、2018年度から都道府県の医療計画へ統合されています。
ただし無医地区・準無医地区の医療の現況に関しては、毎年厚生労働省のサイトで公開されているため、状況を知りたい方はこちらもご覧ください。
ちなみに東京都などは無医地区・準無医地区がないとはいえ、島嶼部などの医療提供が容易ではない地域を有しているのは事実です。
しかし人員を賄えているために医師がいないという状況になることがない点、本州にある都立病院などに対するドクターヘリ搬送などの医療連携が取れているという点はしっかりと認識しておくべきでしょう。
離島とは、一般的には「本土・本島から離れている島」を指す言葉です。
法律などの場合において、離島航路整備法第2条第1項で北海道・本州・四国・九州の4島を「本土」とし、「本土に附属する島」を「離島」としています。
一方で国土交通省の資料によれば、「北海道・本州・四国・九州・沖縄本島以外を「離島」」としています。
つまり明確な定義はないのが実情ですが、一旦は数が多い国土交通省の方の資料を採用して考えていきます。
とはいえ、これだと淡路島などの本州との連絡が容易な島も含むことになるため、「離島医療」の場合の離島の定義は「無医地区」・「準無医地区」を参考にしつつ、適宜考えていく必要がありそうです。
へき地・離島医療の現状について
多くのへき地・離島では、医師不足が叫ばれて久しい状況です。
へき地医療のシステムとしては、へき地医療支援機構を中心に診療所・病院だけでなく、関係各所と継続的な医療支援・連携体制の構築を行うことを目的に実施しています。
また民間でも積極的にへき地・離島医療に取り組む法人・病院もあり、携わってみたい方にはそちらの病院への転職も選択肢の一つとなるかと思います。
ちなみに結論から先に申し上げますと、「無医地区が減少しつつある一方で、医療面だけでなく様々な課題が多い」のが現状です。
へき地医療においては、2019年10月現在、無医地区601か所、準無医地区479か所の合計1,080か所の地域が対象となっています。
離島においては、平成24年度と少し古いデータですが、医師不在の離島(有人島)は40%程度あることが報告されていました。
へき地も含めて、周産期医療(産婦人科医・小児科医)などの専門医療を担う医師の不足、ドクターヘリやヘリポートの整備が遅れているために救急医療の点でも課題を抱えていた状況です。
しかし離島では、2021年の報告によると「妊婦の健診助成、産科受診・里帰り出産に係る旅費・交通費の助成などで周産期医療の支援」・「救急医療体制の充実」は増加しているそうです。
その一方で小児科や眼科、耳鼻咽喉科等の専門診療を行える医師が不在している状況はそのままで、また医師だけでなく看護師などの確保も課題となっています。
また医療サービスの充実等を図るため、医療分野でのICTの導入が一部の離島で実施されています。
本土の病院との遠隔診療、オンライン上の医療技術交換会などの動きも盛んになり、今後一層の医療連携体制の改善も期待されています。
へき地・離島医療に挑戦したい!
これから挑戦したい方は、以下のような選択肢がございます。
- へき地・離島地域において診療所を自ら開設する
- 公的機関や民間病院などによって設置されているへき地診療所の所長職に就任する
- へき地・離島医療への支援を行うへき地医療拠点病院の常勤医として転職する
- 都道府県などの自治体が募集するへき地・離島医療の医師募集に応募する
- へき地医療拠点病院の巡回診療・訪問診療業務のバイト・非常勤、スポット求人に応募する
挑戦するにあたって、言うまでもありませんが、最低限として総合診療医としてのスキル・経験が必要です。
また地域によっては、内科全般、外科全般、整形外科といったプライマリ・ケアだけでなく、耳鼻咽喉科や皮膚科、眼科、小児科、産婦人科といった専門医療を求められるケースもございます。
そしてどの領域が一番求められているのか、という部分も含め、その地域の医療の現状を知ることも非常に大切です。
求人状況としては引く手あまたといった状況であるのは確かですが、地域や病院などによって医療体制や必要とされていることなどは様々です。
特に診療所や病院の設備面、看護師やその他スタッフを含めた人員体制、緊急時の搬送体制などは事前にしっかりと確認しておく必要があります。
そのため、基本的にはへき地・離島医療の支援、従事する医師の研修などの支援を行う「へき地医療拠点病院」の常勤求人、バイト・非常勤、スポット求人に応募してみることをオススメしています。
どの求人に応募したらいいの?という方は、定期的に病院がへき地医療に行っている巡回診療のバイト・非常勤、スポット求人などに応募してみましょう。
その地域の実情や求められているものを自らの目で見て理解した後、その病院や都道府県などが行っているへき地・離島地域へ医師派遣の事業に手を挙げると、キャリアとしても積みやすいと言えます。
また、地域的にも日本国内に「へき地医療拠点病院」となっている病院はある程度ございますので、まずは気になっている地域や馴染みのある地域内で探してみてください。
離島医療に挑戦したい方
離島医療の場合、山間部などのへき地医療とは異なり、そもそも離島を多く抱えるエリアで求人を探す必要があります。
例えば、東京都、沖縄県、愛媛県、香川県、長崎県、鹿児島県などが挙げられ、特に長崎県や沖縄県は法律整備前からドクターヘリなどの救急体制を整えてきた実績があります。
また巡回診療船などの離島地域における診療のノウハウが以前より蓄積する地域も多く、民間病院・法人による医療支援も盛んなところが多い状況です。
ご興味がある方は、自治体などが行う離島医療の求人広告、離島医療を行う民間病院の求人などを見てみるのもオススメです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
大都市圏では得づらい「地域の中に溶け込んだ医療」、「顔と顔が見える医療」がへき地・離島医療にはございます。
また地域にとても求められていますので、大変やりがいが感じられるものであることは間違いありません。
- 挑戦してみたいけど、実際のところどうなの?
- 挑戦する際のハードルって高いんじゃないの?
という方もいらっしゃるとは思います。
実際に挑戦したいけど、右も左もわからない……とお悩みの方は、医師転職支援会社のサービスをご利用になることもおすすめです。
またへき地・離島医療の求人は先方のご希望などで求人サイトに掲載せず、非公開求人としてへき地・離島医療をご希望の医師にのみご案内しているケースもございます。
なかなか足を踏み出せない…という方は情報収集だけでも、医師転職支援会社のサービスをご利用になってみてはいかがでしょうか。