2020年 12月 29日
水仙を活ける 『水仙月の四日』 「あぜみ」は馬酔木、毒の名はアンドロメドトキシン |
水仙を活ける 『水仙月の四日』 「あぜみ」は馬酔木、毒の名はアンドロメドトキシン
水仙が毎年、たくさん咲く。宮澤賢治の『水仙月の四日』を思い出しながら活ける。その香りは部屋中に広がる。水仙月とは何月のころかという説がたくさんある。
雪の降らない大阪では感じようもないが、賢治の岩手県盛岡の水仙月は4月となり、4月4日近辺は統計上、吹雪や寒波の特異日ということが判明している。
大阪では12月に咲き始める。
ウィキペディアでは次のように書かれている。
「水仙は品種によっても開花時期が異なり、遅咲きのセイヨウスイセンやラッパスイセンなどは3月~4月、早咲きのニホンズイセンや冬咲きスイセンなどは12月~2月頃の開花。
水仙月の時期はすなわち賢治がどの種の水仙をイメージしたかによって『水仙月の四日』のイメージは変わってくる。
前者であれば厳しい冬の後に来るであろう雪解けとすぐそこまでに迫った春の訪れの時にはる。
後者であれば逆に水仙月の四日イコール厳冬の訪れの象徴と言う、全く正反対の解釈となる。」と。
しかし、水仙の種類は関係するのかな?
私はずっと日本水仙をイメージしていたし、岩手県にも日本水仙が多かったはずだ。
しかし、賢治は、親友の河本緑石と同様に西洋の花が好きだった。緑石の生家に訪問させていただいたとき、玄関にグラジオラスが一本活けてあった。
拙著(『イーハトーボ小学校の春』(一ツ橋書房刊)に詳しい。
彼らはイギリスよりレタスやグラジオラスなどの球根、種を輸入して植えていた。
カシオペアはアンドロメダの母。ガラスとは天球の象徴で、賢治はカシオペヤ座の回転を北極星と天の川の位置関係から、1日1回転するガラス水車に見立てたものとされている。
「あぜび」とは盛岡では4月に開花するアセビの方言で、英語ではJapanese Andromeda(日本のアンドロメダ)といい、アンドロメダ星雲をアルコールの淡い焔に例えたものとされている。馬も酔わせる木だとして馬酔木と書く。その毒はアンドロメドトキシン。
賢治は当然、ギリシア神話のカシオペア王妃と娘アンドロメダ、クジラの化け物の
ティアマト、メドゥーサを退治したペルセウスの話は知っていたはず。毒の名前も。ギリシア神話の水仙なら西洋水仙かな?とも思われる。
しかし、雪童子たちの会話「こんどはいつ会ふだらう。」「いつだらうねえ、しかし今年中に、もう二へんぐらゐのもんだらう。」が、まだまだ厳しい冬が続く時期である事が考えられる。「もう二へんぐらゐのもんだろう」からは12月ではなく、もう少し春に近いような気もする。まだまだ寒さは続くという感じ。
詩の中に「もう水仙が咲きだすぞ」「あぜみの花がもう咲きだすぞ」と両方に「もう」がついている。そうするとこれから冬の寒さが訪れる12月ではない。3月から4月にかけてではないかなと思ってしまう。
蛇足だが、『水仙月の四日』の詩。ネット上では表記が違う。現代語になっていたり、漢字になっていたりする。
「カシオピィア、/もう水仙が咲き出すぞ/おまへのガラスの水車/きつきとまはせ。/アンドロメダ、/あぜびの花がもう咲くぞ、/おまへのランプのアルコホル、/しゅうしゅと噴かせ。」ウィキペディア
「カシオピイア、
もう水仙すゐせんが咲き出すぞ
おまへのガラスの水車みづぐるま
きつきとまはせ。」
「アンドロメダ、
あぜみの花がもう咲くぞ、
おまへのラムプのアルコホル、
しゆうしゆと噴かせ。
「カシオピイヤ、もう水仙が咲き出すぞ、おまへのガラスの水車、きっきとまはせ。」……
「アンドロメダ、あざみの花がもう咲くぞ、おまへのラムプのアルコホル、しゆうしゆ噴かせ。
カシオピイア、
もう水仙が咲き出すぞ
おまへのガラスの水車
きつきとまはせ
アンドロメダ、
あぜみの花がもう咲くぞ、
おまへのラムブのアルコホル、
しゆうしゆと嘆かせ。
「カシオピイア、
もう水仙が咲き出すぞ
おまへのガラスの水車
きつきとまはせ。」
(中略)
「アンドロメダ、
あぜみの花がもう咲くぞ、
おまへのラムプのアルコホル、
しゆうしゆと噴かせ。」
雪童子は、風のやうに象の形の丘にのぼりました。」
などなど。
by ir_ihatov
| 2020-12-29 17:12
| 教室・保育室・講義室から
|
Trackback
|
Comments(0)