マグネシウム合金は、ロケット以外の各種産業分野でも軽量化のニーズが高まっており、注目を集めている。
しかし、一般的なダイカスト法による鋳造では、内部に空洞を持つような造形が困難であった。また、金属3Dプリンタでは、金属の粉末を熱で溶融させて積層造形するPBF方式が主流だが、燃焼しやすいマグネシウム合金を粉末材料として用いた場合、酸化による劣化や粉塵爆発を引き起こす可能性があり、安全に運用できないという課題があった。
こうした中、三菱電機株式会社、国立大学法人熊本大学先進マグネシウム国際研究センター(以下、熊本大学MRC)、東邦金属株式会社、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、ワイヤー・レーザDED方式(指向性エネルギー堆積方式)によるマグネシウム合金の高精度な積層造形技術を確立した。
これにより、鉄やアルミニウムよりも軽量で高強度なマグネシウム合金を、複雑かつ自由な形状に加工できることから、ロケットや自動車、航空機など各種産業製品の部品材料への適用が可能となり、軽量化による燃費向上とロケットのコスト削減が期待できる。
また、従来の加工方法と比べてエネルギー効率の向上や温室効果ガス排出量の削減が期待されている。
今回の共同研究では、金属粉末ではなく、金属ワイヤーを材料として使用するワイヤー・レーザーDED方式を採用した三菱電機の金属3Dプリンターと、熊本大学MRCが開発した高い不燃性を有する「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」を組み合わせることに着目した。
この結果、マグネシウム合金粉末よりも取り扱いが容易なマグネシウム合金ワイヤーを、精密な温度制御により燃焼させずに積層造形する技術を確立した。

さらに、同技術による積層造形物について、ロケット用材料としての性能評価をJAXAで行った結果、ロケットの部位によっては、従来のアルミ合金構造と比較して最大で約20%の軽量化効果が得られる可能性が試算された。
今後、さらに造形サンプルの詳細な材料特性を取得し、将来的にはロケット用部品の試作にも取り組む予定だ。
またこの成果は、宇宙輸送に限らず、軽量化が要求される各種輸送機器やロボット部材等にも幅広く利用可能であることから、各種産業領域への波及および実用化に向けた研究開発を進める計画だ。
なお、三菱電機は、2029年を目途にワイヤー・レーザーDED方式金属3Dプリンターの製品化を目指すとしている。
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