特集「DX KEYWORD TEST」では、DXで必須となるキーワードに関するテストを実施。
さらに、4枚の図を使って、サクッと解説します。今回のキーワードは「データドリブン」。全問正解目指してがんばってください!
解説編
ここからは、DX KEYWORD TESTの設問を図解していきます。
全部読んだら、再度問題にチャレンジしましょう!
データドリブン経営とは、どういうことか?
最近ビジネス書で〇〇ドリブンという単語を見かけることが増えてきました。
「ドリブン」という聞きなれない単語に、とっつきにくさを感じられている方も多いと思われますが、「ドリブン」という単語は、「ドライブ」から来ています。
ドライブ(drive)という単語を受け身の形にしたものが、ドリブン(driven)です。では、どんなふうに訳したらいいのでしょう?
ドライブ(drive)という単語は、「運転する」という意味で広く知られていますが、「運転される」とは訳しません。実は、ドライブには「~を駆動させる」という意味もあり、〇〇ドリブンという時のドリブンは「~に駆動される」と訳しましょう。
したがって、このテキストのタイトルにある「データドリブン経営」は、直訳すると、データによって駆動される経営となります。もう少しかみ砕いて説明すると、さまざまなデータをビジネスの意思決定に役立てる経営手法のことです。
では、「さまざまなデータをビジネスの意思決定に役立てる」とはいったいどんなことでしょうか?
データドリブン経営の分かりやすい例として「ビールとおむつ」という有名なエピソードがあります。
1990年代、アメリカの小売ストア・チェーン店であるオスコという会社が、複数の店舗のデータをもとに、一緒に購入されやすい商品の組合せを分析しました。その結果、わかったのは「消費者は17時~19時のあいだ、おむつとビールを一緒に買う傾向がある」というものです。
この分析結果から、皆さんは何を思い浮かべますか?
妻から「赤ちゃんのおむつを買ってきてほしい」と頼まれた夫がスーパーにやってきて、おむつを購入するついでに、ビールも買っていく…という消費者のライフスタイルが浮かんでこないでしょうか?
そこで、おむつを買いに来た消費者を「ついでにビールも買っていこう」という気持ちにさせるために、おむつの売り場とビールの売り場を近づける、という施策を打ってみます。
でも、それで売上が上がるかどうかはわかりませんよね?
しかし「おむつを買いに行かされた夫はついでにビールも買う」という仮説は思いつきではなく、データにもとづいているため、精度が高く、思いついたことを片っ端からやっていくより、効率的に解決策にたどりつくことができるでしょう。
このようにデータを紐解くことで、企業は、何らかの気付きを得て、精度の高い意思決定や施策を行うことができるので、売上向上や生産性改善といった形で成長していくことができます。
なぜ、今になってデータドリブン経営なのか
ところで、皆さんの中には「とっくの昔にデータを使った分析や予測をやっている」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのとおり、データドリブン経営という言葉が生まれる前から、企業はデータを基にした意思決定を実践してきました。
では、なぜデータドリブン経営という言葉が最近になって知れ渡るようになり、また、重要視されるようになってきているのでしょうか?
それは、社会全体のデジタル化が進んだ結果、取得できるデータの量と種類が増加し、さらに膨大なデータを分析することのできるテクノロジーも発達してきたことで、データ活用によって得られる情報の質および効果がどんどん高まってきているからです。
まず、取得できるデータの量と種類が増加したという点について説明します!
スマートフォンの普及に伴って、twitterやYouTubeといったSNSが登場しました。ユーザーはこれらSNSを通じて、身の回りの情報をテキストだけでなく、動画や音声で発信することになりました。
また、センサーをモノに組み込んだIoT(モノのインターネット)も普及しました。IoTの普及によって、エアコン、冷蔵庫、自動車、工場の装置といった様々なモノのデータを取得することができるようになりました。
他にも、Eメールのような文書も当然データですし、ポイントカードの会員データ、ネット通販の購入データなどなど、例を挙げればキリがないくらい、社会のデジタル化にともない、データの量も種類も増加してきています。
さて、このような膨大なデータがあれば、色々な分析が出来そうですが、膨大なデータを人間の手で管理したり分析したりするのは限界があります。
そこで、登場するのが、人工知能(AI)です。人工知能(AI)の技術は近年、発展を続けており、大量のデータを短時間で分析することができるようになっています。
このように膨大なデータとそれを解析することができる技術のおかげで、工場の設備の不具合を事前に知ることができたり、需要を予測して欠品や在庫がでないよう精度の高い生産計画を立てることができるようになってきました。
「なぜデータドリブン経営という言葉が最近になって知れ渡るようになり、また、重要視されているのか」について説明してきましたが、ものすごく簡単にいってしまえば、データを使うことで企業が受けられる恩恵が高まってきた、ということでしょう。
実際、経済産業省によれば、企業の保有するデータの使い道はたくさんあるそうで、「既存製品やサービスの付加価値向上、新たな製品やサービスの開発・提供、戦略策定、マーケティング、不正防止など、さまざまな目的のために活用可能」と言われています。
データドリブン経営は、こうやる
さて、データドリブン経営は、どうやって進めるのがよいのでしょうか。
データドリブン経営を解説している本などを読むと、言い回しなどはまちまちであるものの、基本的な流れは、データ収集、データ精製・加工、データ可視化、データ分析、アクション・評価という5つです。
この流れは間違ってはいないのですが、第1歩目が「データの収集」というのは、やや誤解を招きやすいと思われます。というのも、肝心の何のためにデータを活用したいのか?を考えずにやみくもに集め始めてしまうと、最終的に不要なデータも集めることとなり、時間の浪費につながってしまうからです。
私の知る限りでも、「とりあえずデータを集める」と言っている人が後を絶たないけど、結局データを持て余しているケースが多いようです。
一方で、目的がはっきりしてくれば、集めるデータも限定することができます。たとえば、顧客の行動を分析し、マーケティングに役立てたいということであれば、WEBサイトのアクセスデータや顧客の過去の購買履歴といったデータを集めるのがよいでしょう。あるいは商品棚の陳列を最適化したいということであれば、顧客の視線データを集めるのがよいでしょう。
ということで、最初に「目的の明確化」を加え、改めてデータ経営の基本的な流れを説明します。
1. 目的の明確化
データで何をするのか、という目的をはっきりさせます。
2. データの収集
目的に沿って必要なデータをあつめる。データがばらばらに管理されている場合は、データの統合を行う必要があります。また、自社に必要なデータがない場合、新たに収集可能な手段を構築するか、外部のデータや公開されているデータを利用することも検討します。
3. データの精製・加工
収集したデータはそのまま使えるわけではなく、精製・加工と呼ばれる処理が必要になります。小数点の付け忘れによって、身長が「17505cm」となっているというような異常値や、そもそもデータが取れていないという欠損値もあったりします。また、「株式会社」と「㈱」という表記揺れも、よく起こります。このような状態を修正することをデータクレンジング(データ洗浄)といいます。
4. データ可視化
例えば、3行くらいのデータであれば、表形式でも傾向や異常、規則性などをみつけることができますが、10,000行のデータともなると、人の目でデータを見ることは難しいです。
なので、データ精製・加工が済んだら、集めたデータをグラフ等で見える化していきます。ちなみに、可視化を効率的にするツールとしてBIツールと呼ばれるものがありますので、興味のある方は調べてみてください。
5. データ分析
データの可視化ができたら、様々なデータをあらゆる観点から分析していきます。「ビールとおむつ」のように一見すると関係がないように見えるが、実は関連しているデータもあります。そのようなデータ同士の関連性を突き止めたり、どこに問題が潜んでいるかなどを特定することがデータ分析です。
データ分析は、データサイエンティストと呼ばれる専門家が活躍します。もし高度な分析を行いたい場合は、データサイエンティストに依頼してみるのも手でしょう。
6. アクション・評価
目的の明確化、データの収集、データの精製・加工、データの可視化、データ分析まで済んだら、最後は意思決定です。
データ分析で得られた気付きや仮説をもとに次のアクションを決めていきます。
アクションを実行に移したら、今度はその施策の結果が出ているのかを確認するために、データ収集や可視化のステップに戻りましょう。
この6つのステップは、当たり前に見えて、案外できていない企業が多いので、意識的に実施してみてください。
データドリブン経営の事例
都市ガス大手の大阪ガスは、1990年代後半から、データ分析を専門とする組織「ビジネスアナリシスセンター」を設立し、データドリブン経営に取り組んできました。
ビジネスアナリシスセンターは、大阪ガスにある様々な事業部が抱えている課題を見つけ、データ分析により問題を解き、データ分析で得られた知見を使ってもらうという「見つける」「解く」「使わせる」の3ステップでデータドリブン経営を日々、実践しています。
いくつもの案件をこなす中で、生まれたのが、ガス機器の故障部品を予測するシステムです。
たとえば、顧客から「お風呂の給油機の調子がおかしい。なかなか温かくならない」という故障の報告を受け取るとしましょう。
このような故障の報告を受け取ると、修理作業員は現場に向かい、故障の原因となっている部品を特定します。交換すべき部品が分かれば、拠点に戻り部品を調達し、顧客を再訪問します。この方法では、現場と拠点を行ったり来たりしなくてはならないため、場合によっては修理が日をまたいでしまうということもありました。
この状況を改善すべく、考えられたのが故障部品の予測です。
現場にたどり着く前に交換すべき部品が分かれば、その部品を用意して現場に向かうことができるので、1度の訪問で修理を済ませることができるという発想です!
そこで、顧客から故障の報告を受け取ったら、同じ使用年数の同じ器具がどのような不具合を起こし、どの部品で修理したか、という過去の修理データをもとに、故障の原因となっている可能性の高い部品を5つ特定できるシステムを開発しました。
結果、修理の依頼を受け付けたその日に修理を完了する率(即日完了率)は、5年間で20%上昇し、顧客の満足度を向上させることができたそうです。
顧客はもちろんのこと、働く従業員も行ったり来たりがなく、業務が効率化されて、働きやすくなるでしょう。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。