国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)、日本電気株式会社(以下、NEC)、国立大学法人東北大学及びトヨタ自動車東日本株式会社は、公衆網とローカル5Gのハイブリッドなネットワークを活用して移動体との無線通信を安定化するSmart Resource Flow(SRF)無線プラットフォームの実験に成功したと発表した。
NICT、NEC及び東北大学は、以前より製造分野における5G高度化技術の研究開発を推進しており、今回、その中でSRF無線プラットフォーム技術仕様書Ver. 2に対応した無線通信システムを開発した。
そして、同システムの有効性を稼働中の製造現場で確認するために、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場にて、公衆網(5G/LTE)とローカル5Gを切り替えて移動体との間の無線通信品質を評価する実験を実施した。
具体的には、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場にて、下図のような環境で、公衆網とローカル5Gの切替えによる移動体との間の無線通信品質を評価する実験を実施した。
製造現場で稼働している移動体(自動搬送車)にSRF Deviceを搭載し、約163m離れた工場A、Bの間を往復させた。なお、ローカル5Gの周波数帯は、4.8GHz〜4.9GHzの電波を使用した。
自動搬送車は、ローカル5Gでデータを送信しながら、ローカル5Gの基地局が設置してある工場Aからスタートして工場Bに向かう。
工場Aから離れるにつれてローカル5Gの通信品質が悪化していくが、SRF無線プラットフォームでは、公衆網側にもバックアップ経路を用意しておき、SRF Deviceが無線の品質情報(受信信号強度など)を基にローカル5Gよりも公衆網の方が送信に適していると判断した場合に、データ送信経路を公衆網側に切り替えることで、通信品質を維持した。
この実験では、このSRF無線プラットフォームにより、ローカル5Gと公衆網をシームレスに切り替えて安定して通信を継続することができるかを検証した。
その結果、同システムにより、サービスエリアの広さ等の特性が異なる公衆網とローカル5Gによるハイブリッドなネットワークを活用し、通信が途切れることのない安定化が実現できることが確認された。
SRF無線プラットフォームを使用していない場合、工場Bに入った直後辺りでローカル5Gの圏外になり通信が遮断し、アプリケーションの通信が途絶した。その後、通信可能な経路をサーチして公衆網に切り替えて通信を再開たが、約9.75秒の間、通信が遮断した。
また、ローカル5Gの通信遮断の直前には往復遅延も悪化し、最大で約1.01秒になった。
これに対し、SRF無線プラットフォームを使用した場合、工場Bに入る少し前からデータ送信経路を公衆網に切り替えることで、経路切替時の通信遮断時間を約0.14秒に短縮し、アプリケーションの通信が途絶することなく安定して通信を継続できることが確認された。
また、自動搬送車が工場Bを出て工場Aに近付き、ローカル5Gの受信信号強度が良くなってくると、SRF Deviceは再びローカル5Gに切り替えて通信を継続できた。
この結果により、サービスエリアの広さ等の特性が異なる公衆網とローカル5Gによるハイブリッドなネットワークを活用し、通信が途切れることのない安定化を実現できるSRF無線プラットフォームの効果を実証することに成功したとのことだ。
今後、NICT、NEC、東北大学及びトヨタ自動車東日本は、実証実験の結果をいかし、SRF無線プラットフォームを工場における安定した無線通信を利活用できるプラットフォームとしての実用化を目指し、技術開発及び標準仕様の策定と認証制度の整備を推進していくとしている。
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