業務改善のためのDX、5つの基本ステップ | IoT NEWS

業務改善のためのDX、5つの基本ステップ

こんにちは。DXコンサルタントの田宮です。今日は、私がプロジェクトでもたくさんの経験がある業務プロセスのDXを行うための方法をご紹介します。後半に資料ダウンロードのご案内もありますので、よかったらご活用ください。

Windows95が登場してから約25年、職場には一人1台パソコンが支給されるのが当たり前になりました。

企業におけるインターネット利用状況もほぼ100%となっており、昔は紙が基本になっていた仕事のやり方が、ほぼデジタルを活用したやり方へ大きく変化しました。

しかし、一向に紙がなくなる気配もありません。

この10年、スマートフォンも普及し、クラウドサービスやデータウエアハウス、AI、IoTと、さまざまなデジタル技術が登場する中、また、パソコンが支給された25年前から抜け出さていない企業も多い状況です。

業務改革という名の、多額の情報システム投資の果てに

IT系のベンダーは、長きにわたって「デジタル技術で業務改善」を謳ってきました。

しかし、ユーザ企業側の、自分たちの仕事を変えたくないがためのカスタマイズ文化が、情報システムの導入費用を高騰させ、過剰なハードウエアと過剰な保守サービスに多額の費用を払わざるを得ない状況を作ってきている状況です。

業務の変革よりも、安定した情報システムの導入が主眼となったプロジェクトでは、情報システムと情報システムの間にある業務が救われることはなく、残業をしながらデータを手作業で入力したり、問題が起きるたびに申請書類が増え、エクセルを駆使する職人によって、日々の業務実態を掴む毎日を余儀なくされてきました。

「エクセル」と「紙」から逃れらないビジネスマンたち

多くの企業では、その昔導入した、基幹システムをベースに業務を行なっていて、基幹システムに手を入れないと改善がしにくい状況になっているのではないでしょうか。

そして、基幹システムでは対応できない集計業務を、エクセルなどの表計算ソフトを駆使して業務を行っているケースも多い状況です。

私が以前担当したクライアントも、1990年代から基幹システムを構築し、このシステムを中心として様々な業務を組み立ててきました。

しかしある時、顧客向けサービスを提供する上で、業界標準の仕組みを導入しなければならなくなり、基幹システムとは直接接続することができない別のシステムを導入することとなりました。

これまでは、一つの基幹システムで業務が完結していたのだが、別のシステムでも商品が販売されることになったため、その売り上げ情報を集約する必要が出たのです。

そのため別システムで行った販売情報を基幹システムにも登録をするという、二重作業を担当者が行うという無駄が発生していました。

一向に無くならない、エクセルと紙
一向に無くならない、「エクセル」と「紙」

その結果、販売を行っていた窓口の担当者の対応業務が増えることとなっただけでなく、本社でも二つのシステムの情報をそれぞれ集計して、間違いがないかを突合する作業が発生することとなってしまったのです。

この集計、突合業務は、複雑なエクセル表を駆使し、いくつもの帳票からのデータの転記や、様々な集計値の算出し、二つのシステムの集計値との突合を行い、ズレがあれば要因を探り修正を行うといった作業が必要で、毎月何十時間もかけて行っていました。

また集計用エクセルは、以前の担当者から引き継いだものを、秘伝のタレを作るかの如く、事業の変化やサービスの追加などに合わせて項目を増やしたり、改善したりしてきたものでもありました。

やっつけ文化が産んだ、負のデジタル遺産

もはや現在の担当者では、エクセルの項目の意味もわからなくなっている状況に。

実際、我々が業務整理をする工程で、「この集計情報って何に使っているのですか?」と尋ねると、「わからないのですが、昔から枠があり、判断がつかないのでそのまま集計して入力しています。」という返答が返ってきました。

きちんとした業務手順書などなく、多くのことは担当者の頭の中だけに入っていることもあり、この業務を他者に引き継ぐには相当な時間が必要となります。

また15年前からこの業務運用で引き継がれてきたため、担当者はこの仕事のやり方に疑問さえ持てなくなってしまうのです。

もとをたどると、新しいシステムを導入する際に、基幹システムを改造し、連携するようにしなかったため、作業が属人化してしまい、それが必要な作業なのかどうかの判定すらできなくなってしまっている状態なのです。

マンパワーと残業に依存した業務
マンパワーと残業に依存した業務

特に日本企業は、人の柔軟性に依存することが多く、「人が残業した方が安い」と考えている企業も多いのですが、昨今の不景気や、人材の高齢化、人手不足により、この考え方もいい加減、捨てないといけない状況になっていて、実際、多くの職場で起きています。

こういった背景からか、デジタルを全社的に活用して、業務全体を見直そうというDXの動きが多くの企業で起きているのです。

「攻めのDX」と「守りのDX」

攻めのDXと守りのDXについて、すでに知っている方は飛ばして、次の「業務改善を進めるための5つの基本プロセス」に進んでください。

DXには様々な定義がありますが、経済産業省によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と整理がされています。

まるで企業が丸ごと変わらなければならないような説明ですが、我々は、これを「攻めのDX」「守りのDX」の二つに分けて考えています。この「攻めのDX」と「守りのDX」についての詳しい解説は、以下の記事を参照して頂きたいです。

攻めのDX

簡単に説明すると、まず、「攻めのDX」は、「何で儲けるか?」「どう儲けるか?」をデジタル起点で再定義することをいいます。

例えば、エンジン自動車からEV、さらには自動運転といった、自動車業界のパラダイムの変化について考えてみます。

今まで所有してもらうことが前提にあった自動車メーカーのビジネスモデルでした。

そこに、トヨタが2018年のCESで発表したe-Palletは、あらゆる生活、産業シーンで移動そのものを支えるモビリティプラットフォームサービスを作ろうとする発表でした。

これは、トヨタが「自動車を販売して儲ける」ということから、「移動という行為そのもので儲ける」という変革を起こすものであり、これが「攻めのDX」なのです。

「儲け方」をダイナミックに変えると、クルマの性能やデザインに目がいっていた企業が、どのように配車すればストレスがない配車が実現できるか、無駄のない経路を走行できるようになるか。といったことに注力するようになるはずです。そして、こういう変化にはデジタル技術が欠かせないのです。

守りのDX

「守りのDX」は、企業の中の「業務の進め方(業務プロセスや業務フロー)」再定義することをいいます。

ところで、「ビジネスプロセス」と「業務フロー」はどちらも流れをイメージさせる言葉のため混同されがちですが、違いはわかりますか?

ビジネスプロセスとは、「企業が事業を行う上で実施する一連の活動」のことを言い、業務フローとは、「誰が、いつ、なんの作業を、どのように行うのか、仕事の流れや手順を言います。

日本企業は縦割り文化の企業も多く、部署間を横断した業務最適化が苦手でもあります。

しかし、顧客のニーズが多様化した昨今、細かなニーズに対して俊敏な対応をしようとすると、従来の業務のやり方では時間がかかってしまうことが多い。

昨今、現場の情報がIoTやIT技術、インターネットなどを使うことで、リアルタイムに近い形で把握することができるようになりました。

SNSやネットで自社の商品がどれくらい話題になっているか、顧客からの発注状況や、現場がどう動いているか、資材がどれくらいあるのか、サービス対応をする人的余裕はあるのか、など、さまざまな情報を取得することができるようになりました。

その結果、リアルタイムに近い形で、自社のビジネスの状態を把握することができるようになってきたのです。つまり、サービスを提供するためのビジネスプロセス全体が最適化されていれば、機敏に反応することも可能となってきたわけなのです。

さまざまなデータを取得し、集め、最適化することが可能となってきた
さまざまなデータを取得し、集め、最適化することが可能となってきた

さらに、現場に目を向けると、これまでもさまざまな業務フロー改善活動が行われてきたのですが、そこに関しても新しいデジタルツールが登場したり、企業間でデータを受け渡しする仕組みが登場したりと、デジタルを使った業務フロー改善を一歩進めることが可能となりました。

そのためには、現状のビジネスプロセスや業務フローの整理を行い、業務分析を行った資料をベースに、デジタル技術を活用した新しいビジネスプロセスや業務フローを再定義することが必要になります。それが「守りのDX」なのです。

「守りのDX」は、守るだけでなく、攻めに転じることができる効果も期待できます。この辺は、「事例」として後述します。

業務改善を進めるための5つの基本ステップ

「守りのDX」を実現するには、「業務の可視化」を行う必要があります。しかし、この手順をふまず、「業務をよく知っている担当者」にいきなり改善案を検討させるケースが多いです。

このやり方は、時間は短縮できるものの、多くの視点でこれまでの業務を評価する機会を奪い、属人化した業務を誰でもできるものにすることが難しいという結果を生みがちです。

そこで、本来、業務改善を行う際に、必要なプロセスについて、以下にまとめました。

アールジーン業務改善の基本プロセス

1)業務改善のための計画づくり

業務改善取組計画

概要

業務改善の活動目的や、具体的な目標を定めます。業務改善の目的目標を達成するためのシナリオ取組みスケジュール体制の整備を行い、DX業務改善プロジェクトの開始準備を行います。

このフェーズで起きやすい課題

目的や目標の定義があいまいなまま業務改善に取り組むと、後にゴールを見失い思わぬところでの立ち往生の発生し、最善の業務改善策へ取り掛かることができなくなる可能性があります。

解決策

プロジェクトの目的や目標、方針や狙いをきちんと定めることで、プロジェクトメンバー間の意思統一を図ることができます。また、業務改善プロジェクトは会社内の多くの部門、人と関わっていくため、きちんと説明ができるように整理をしておくことが重要です。

2)業務の可視化

業務の可視化

概要

業務を体系的に整理し、棚卸しを行う。関連部署へヒアリングやアンケートを行い、「実際の業務量」「発生頻度」「課題」「不満」「業務の分担や流れ」などについて、誰もが理解ができる形で可視化を行います。

このフェーズで起きやすい課題

業務の棚卸を行う際、体系的に整理を行わないことで、整理の対象から業務が漏れることがあります。

解決策

業務を大分類、中分類、小分類と階層を分けて構造的に整理をすることで漏れをなくします。

業務の流れを可視化する際には「OMG(Object Management Group)」によって維持されている「国際標準(ISO19510)BPMN(Business Process Model and Notation)」を用いることで、誰が読んでも同じ意味として伝えることができ共通言語として利用できます。

またBPMNで業務フローを書くことで、BPMS(ビジネスプロセス・マネジメント・システム)にそのまま実装できるので、ITツールを活用してビジネスプロセスマネージメントを行うことができます。

3)DX実現/業務改善策作成

DX実現/業務改善策検討

概要

可視化情報をもとにあるべき姿の定義DX業務改善策を作成します。多面的に改善策を検討し、改善策ごとの効果や費用などの算出を行い、実施優先順位を検討します。

このフェーズで起きやすい課題

全体業務の内一部、または特定の組織の業務分析しか行わなかった場合、その範囲での改善策の実施となり、効果が限定的となる可能性があります。

解決策

改善策を検討する際、業務改善を実視する上での順番と視点を示した「ECRS(改善の4原則:Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化))」を用いることで、改善の効果が大きく、過剰や過小な改善も避けられます。

その他にシステムやツールの導入帳票の改善業務分担の見直しタイミングの集中/分散業務標準化スキルアップ品質向上アウトソーシングなど多面的に検討をすることであるべき改善策が導きやすくなります。

4)業務改善実行計画/業務改善実行

業務改善実行計画/業務改善実行

概要

改善策の実施優先順位付けを行ったうえで、効率的な進め方を考慮した実行計画書を作成します。改善策ごとのKPI検証方法検証後のアクションについても計画したうえで業務改善を実行します。

このフェーズで起きやすい課題

業務改善に関わる全部門や現場への説明が不十分な場合、ここでネガティブな意見がでることが考えられます。また、KPIやその検証方法、検証後のアクションについて計画をしないことで、業務改善がやりっぱなしになってしまっていることがあります。

解決策

プロジェクトの初期から、プロジェクトメンバーには関係部門から1名集めて、自組織との連絡を密に行い、懸念事項は早い段階でつぶすようプロジェクトを進行しましょう。改善策ごとのKPI検証方法検証後のアクションをきちんと計画したうえで業務改善を実行することが重要です。

5)改善後業務のモニタリングと修正

改善後業務のモニタリングと修正

概要

想定外な事象の発生がないか予定通りに業務が進んでいるかなどモニタリングを行い、必要に応じて修正を行います。また、改善活動を一定期間ごとに実施するための手順を確立し、常に改善活動を意識できる組織作りを行います。

このフェーズで起きやすい課題

前の工程で効果検証の計画をしない場合、このフェーズにおいて、「実際に改善がうまくいっているのか」「効果はどれくらい出ているのか」「是正すべき点はないのか」などを検証することができないので、より効果の高い改善活動につながらない。

解決策

前の工程に戻って効果検証の計画を行い実施しましょう。さらに継続的に業務改善活動を行うための手順も定めてください。

業務を整理し、俯瞰することで改善のヒントが見えてくる

行き当たりばったりのプロジェクトにならないために、計画を作成することや、成果を評価し、継続してモニタリングすることは大切ですが、何をおいても、「自分たちの業務がどのように行われているのか」を可視化することが業務改善プロジェクトにおいて欠かせません。

現状の業務を体系的に整理し、棚卸しを行ったうえで、「ビジネスプロセス図」「業務フロー」「業務ごとの情報の入出力」や「関連組織」「時間帯や頻度」「関連システム」など、様々な観点から整理を行い、俯瞰してみることで抜本的な改善策がいくつも見えてきます。

業務プロセスの改善事例

実際、ビジネスプロセスや業務フローを見直すことで、大きな効果を得られるのでしょうか。

実際我々のクライアントでも、業務を作業単位にまで分解し「業務フロー図」を作成し、さらに情報の流れを整理したことがあります。

これまで何十時間もかけていた集計業務について、あるログから必要な情報のほとんどが生成されていることを突き止め、新しい業務のやり方を定義したのです。

その結果、150時間短縮されました。

各業務のフローをなるべく細かなレベルで可視化し、改善点を複数の視点から検証する
各業務のフローは、なるべく細かなレベルで可視化し、改善点を複数の視点から検証すことが重要

さらにこのケースでは、これまで担当者のエクセルに眠っていた情報が、データベース化されることとなり、営業状況が即時に可視化できるようになりました。

その結果、「次の1手」を打つタイミングを早めることができるようになったのです。

「守りのDXを成功」させたことにより、「攻めることが可能」となったわけです。

さまざまなデジタルツールが登場し業務改善環境が整ってきたいま、今まで当たり前と思っていた業務のやり方を今一度見直してみるのはどうでしょう。

守りのDXのやり方がわからない、自分たちでやりたいけどサポートして欲しいという方は、IoTNEWSの問い合わせフォームから、ぜひ私にご連絡ください。

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業務改善を進めるための5つの基本ステップ

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