"Fool Moon" Amon Duul(UK) |
"Fool Moon" (1984) Amon Duul(UK)
1. Who Who
2. The Tribe
3. Tik Tok
4. Hauptmotor
5. Hymn for the Hardcore
さてさて、情報が少なくて困ったものだ。と思っていたら、今年になって、いつの間にか再発されていたアモン・デュール(UK)の諸作品。ガイの参加が確実だった「Die Losung」(oにはウムラウト付き)の「次の作品」だとばかり思っていた本作『フール・ムーン』が入手できたのでご紹介しよう。
しかし、まず、最初に訂正。このアルバムの方が実は早い時期のものだったのだ。Andy Higginsなる人物によるライナーノーツによれば、このアルバムは1984年に録音されている。メンバーは以下の4名がクレジットされている。レギュラーメンバーであったはずのJulie Wareing (vo)の名前はないが、『Die Losung』では全面的に参加している元Hawk WindのRobert Calvertの名前がある。しかし、実際には4曲目のみの参加のようだ。
member
- John Weinzeirl / guitar
- Dave Anderson / bass
- Guy Evans / drums
- Robert Calvert / vocals
1曲目は静かに始まるフリー・インプロヴィゼーションのようでもあるが、何を行っているのかよく聞き取れないボーカライゼーションも加わりサイケデリックな雰囲気が充満している。2曲目では、よりロック色の強いビートのはっきりした演奏となる。ガイのドラミングはシンプルながらダイナミックで、サイケ色の強いフリーキーなギターと上手くバランスを取るような形でこのスペース・ロックを推進する力となっている。3曲目においてはパーカッションによる時計じみた奇妙なリズムが、徐々に、より複雑なパーカッション類が加わり、そこにブルージーなギターが被さってくるという展開で、それ以降はヘヴィーなクラウト・ロックが展開される。そして次はロバート・カルヴァートが参加している曲だ。鳥のさえずりから始まるイントロは、ウェールズのどこかで生録されたものらしい。そこから徐々に街中へと入っていくようで、人の声や車の走る音が加わってくる。これがおよそ6分間続き、突然ロバートの歌をフィーチャーしたミドルテンポのヘヴィーなサイケ・ロックが始まる。延々と続くかに思える展開も、最後にはボーカルとギターが絡み合いながらフェードアウトしていく。そして、アルバム最後の曲は、「ハードコア賛歌」とでも言うのだろうか。そのタイトルとは大きなギャップのあるインド的な音作りには驚かされるが、いかにも60年代から70年代に青春時代をすごしたサイケでヒッピーなミュージシャンらしいとも言えるだろう。
全体として、『Die Losun』よりもサイケデリックでエモーショナル、プリミティヴな雰囲気が強く、一方でインプロや自然音の使い方には瞑想的、宇宙的な思考のあり方を感じさせるものがある。初期アモン・デュール2の混沌とした雰囲気とホークウインドの音楽に少しでも惹かれる人ならば、聴いてみても良いのではないだろうか。とても楽しめるはずだ。
なお、このアモン・デュール(UK)の作品は、他にまだ2枚のオリジナル・アルバムと1枚のコンピレーションがあるので、それらも入手でき次第ご報告するつもりだ。
by BLOG Master 宮崎