ふりかえり
2020年5月号に書いた本の雑誌原稿の転載をする。この月はなんといっても『2050年 世界人口大減少』が良い。人口が与える影響は経済のみならず環境や政治体制にも大きな影響を与えるので、この数字が将来的にどうなるのかは未来を見通す上では非常に重要だ。いまだに人口が増えすぎて環境がヤバいとかいっている人間がいるが、事態はとっくにその逆──これからどんどん人口が減少していく社会に、世界はどう対応していくべきなのか? が問われる時代になっているのである。
それ以外だと、『グローバル・グリーン・ニューディール』も大統領選も関連して外せない。再生可能エネルギーへの転換は、政治的にどうこう言わずともいずれコスト的な問題で自然に行われるだろう。ただ、その場合社会の形も大きく変わっていく。今この分野に大きく投資しているのは中国やEUだが、それらの国がどのように投資しているのかがよくわかる一冊で、けっこうおすすめ。それ以外は、この号はけっこう内容がばらけておりますな。まあ、当然そういうときもある。
本の雑誌 2020年5月号
- 作者:ダリル・ブリッカー,ジョン・イビットソン,河合 雅司・解説
- 発売日: 2020/02/24
- メディア: Kindle版
現在、地球には七十五億の人間がいて、国連の統計では二〇五〇年に九十七億人に達し、二十二世紀には一一〇億人あたりで頭打ちになるとしている。が、著者らによる試算では、二〇五〇年に世界人口は減少に向かうというのである。実際、すでに二十五カ国で人口が減少に転じている他、増加見込みだったアフリカも、すぐに減少に転じるのではないかとデータやフィールドワークの成果を挙げ、細かく論証していく。
人口が減少に向かう理由の一つには、都市化がある。人口の大多数が農業で暮らしていた時、子どもを産むことは投資だった。だが、都市では子どもは負債になる。高度化する仕事のために長期間に渡り教育を受ける必要があり、その間は労働力にもならないからだ。そうした変化が世界中で起こっていて、予想よりも早く世界人口が減少する推計が現実味を帯びている。世界人口の推移は、環境問題にも経済にも関わってくるからこそ、注視すべきテーマといえる。ぜひ、いま押さえておきたい一冊だ。
2060 未来創造の白地図 ~人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる
- 作者:川口 伸明
- 発売日: 2020/03/05
- メディア: Kindle版
- 作者:ジェレミー・リフキン
- 発売日: 2020/02/27
- メディア: Kindle版
価値を失いつつある石油を強引に採掘して売り抜けようとした場合の環境へのダメージも深刻だ。本書ではその対策として、社会全体のインフラをまるごと作り変える大胆な方針を掲げていて、その理屈部分も読み応えがある。
- 作者:ジョナサン・ハスケル,スティアン・ウェストレイク
- 発売日: 2020/01/17
- メディア: Kindle版
- 作者:チャールズ・グレーバー
- 発売日: 2020/03/05
- メディア: Kindle版
とはいえ、その治療法はすぐに見つけられたわけでも、受け入れられたわけでもなかった──と、発見と周囲を説得するための苦闘の歴史が語られていく。免疫療法はまだすべてのがんを治すにはほど遠いが、病の皇帝であるがんを、今まさに打倒しつつあることを実感させてくれる。
- 作者:レザー・アスラン
- 発売日: 2020/02/10
- メディア: Kindle版
- 作者:ブライアン・クレッグ
- 発売日: 2020/02/10
- メディア: 単行本