SF BOOK SCOPE『暴虐の世紀を生きた男たち——ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』』3/7に掲載しました - 基本読書

基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

SF BOOK SCOPE『暴虐の世紀を生きた男たち——ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』』3/7に掲載しました

告知記事です。今回はラヴィ・ティドハーの『完璧な夏の日』について。暴虐の世紀を生きた男たち――ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』|SF BOOK SCOPE|冬木糸一|cakes(ケイクス) 以下余談。

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

geek&politicalとでもいうようにヒーロー物の要素と第二次世界大戦以後の戦争を統合して描いて見せた作品。じめっとした陰鬱な空気とそれを振り払うかのような夏のイメージが対照的でしっかりと手触りの良い作品。こういうのを読むと小説ってほんと、いろいろあって、良いよなあとしみじみしてしまうタイプの作品ですね。文字で出来ることの広さを教えてもらえるというか。ヒーローとはなにかについてがっつりと正面から取り組んだというよりかは、断片的に描かれていくのもまた良い。上下巻に分かれているので短くはないわけですけれども、コンセプトに忠実にぎゅっと中身が詰まっていて、読み終えた後に20世紀を駆け抜けてきた疲労感と美しいものをみたと確かにいえる寂寥感がただよっていて二時間ぐらいの心地よい映画を観た後のようなすっきりした感覚が残る。

レッド・ライジングか秘密同盟アライアンスについても選択肢にあったわけですが、書くとしたら秘密同盟アライアンスだったかな。翻訳物であることをほとんど感じさせない学園異能ラノベ、ただしハリーポッターやらシャーロック・ホームズやらパーシー・ジャクソンやら、ようは売れ線をてんこもりにしてそれを違和感なく協調させてみせたティドハーとはまた違う意味での力技にしびれる力作。当たり前のように売れて、当たり前のように映画化まで決まっているとか。寮生活で美男美女が共同生活、主人公は超絶イケメンで身体能力が人間離れしていて振る舞いは紳士そのものでムカつくところが一切ないぐらいの存在で日本のライトノベル的なところとの親和性も高くて、スゴくウケそうだ。当然美少女にモテる。

秘密同盟アライアンス(上): パラディンの予言篇 (ハヤカワ文庫SF)

秘密同盟アライアンス(上): パラディンの予言篇 (ハヤカワ文庫SF)

秘密同盟アライアンス(下): パラディンの予言篇 (ハヤカワ文庫SF)

秘密同盟アライアンス(下): パラディンの予言篇 (ハヤカワ文庫SF)

レッド・ライジングはファッキンな階級社会、ファッキンな大人、ファッキンな周囲の人間とクソッタレな世界の中で少年が復讐を誓い徹底的かつ容赦の無い(命の危険が高過ぎる)肉体改造をやって、こんな状況に俺たちを追い込んだ社会に、世界に反逆を! とぶち上げる憎悪の結晶で決してスマートではないがそのたぎるエネルギーのすさまじい作品だ。仮面ライダーかな? みたいなノリのわかりやすだけれども設定と展開の容赦のなさに際限がなく、かつテンポが早く魅力的な障害とその克服が描かれていくので『秘密同盟アライアンス』とはまた別の意味でリーダビリティが高く、楽しくて仕方がない。
レッド・ライジング―火星の簒奪者 (ハヤカワ文庫 SF フ 21-1) (ハヤカワ文庫SF)

レッド・ライジング―火星の簒奪者 (ハヤカワ文庫 SF フ 21-1) (ハヤカワ文庫SF)

こうしていろいろな作品を読んでいると一つ一つ手触りも凝らされた趣向も発揮されている技工も違っていてとても愉しいなと思う。次回掲載はいつになるかわかりませんがまた次回がありましたら告知しますです。