ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した - 基本読書

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ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した

多くの人が自分の人生のショートカットを試みているような気がしている。たとえば大学に合格する為の効率の良い勉強法を求める。効率よく気楽に、ストレスなく痩せる方法を求める。しかし最も効果があって実際に効率が良く効果があがるのは「自由な時間を限界までけずって勉強する」とか「食事量を制限し運動を毎日する」といった目標を定め、覚悟を決めて毎日階段をひとつひとつ上っていく作業だ。

誰の目の前にもあるその一番堅実なルートを誰もが嫌がって別の方法はないかと探し回っているように見える。ジョブズの本を僕はたくさん読んできたけれど誰もが同じことを語るので2冊目ですでに飽きてしまう。なぜかと色々考えて最初はジョブズの生き方がその製品のようにシンプルなので誰が書いても新しくなってしまうとか。

しかしそれ以上に一番堅実な王道を堂々と通っているからなのかもしれない。

たとえばジョブズがやってきたことを一言で集約するのならば『シンプルでエレガントな製品を作り上げる為に妥協をしない』だし、それ以外のほとんどの部分は「自分の本当にやりたいことを見つけて全力を注ぐ」とか「プレゼンは何十、何百時間もかけて練習する」みたいなあまりにも地道な作業を必要とする。

どれもあまりにも真っ当なやり方で誰も解釈を誤りようがない。だから誰もが理解して説明できるのだが「合格したい大学があるのなら寝る間も惜しんで勉強すればいい」といわれて「おおそうかすぐにやろう」と出来るものでもないようになかなか難しい。

僕を含めて誰もがジョブズのおこぼれを得ようと彼について書かれた本を読むが「はあすごい人だなあとても自分にはまねできぬ」と思って終わってしまい次にジョブズ本が出たら「今度は自分でも手軽に真似ができる」方法が載っているかもしれぬとつい引き寄せられる。あまりに間抜けといわざるを得ない。

というわけで本書のほとんどはすでに書かれていることだけど書名になっている部分については面白かった。それはこういう部分のことだ。

「インベンション(発明)」と「イノベーション(革新)」の間には、大きな境界線がある。「インベンション」は詰まるところ、自己満足に過ぎないが、「イノベーション」は世の中の人々に満足感を与え、世界に変化を生み出す。

読んでみればなるほどシンプルな話である。たとえばAppleは初めてマウスを発明したとされているがマウスを発明したのはゼロックス社の博士だった。すでにあったそれを見つけたジョブズは条件を4つあげて大衆に広めた。1.15ドル以下で作れること。2.2年間の耐久性があること。3.木やメタルといったデスクの上において直接使えるようにすること。4.ジョブズのジーンズの上で使えること。

要するにゼロックスで生まれたもののどこにも広まらず活用されず死んでいたものを、大衆の誰もが手に入れて使えるようにしたのがジョブズだった。マウスに限らずジョブズは人が発明したものを見つけ出してきて自分のヴィジョンを達成する為に活用し、そのヴィジョンは「世界を良くすること」に繋がっていた。

「『インベンション(発明)』と『イノベーション(革新)』の違いは、後者が実行を伴うことだ。アイディアを持ってきて、それを形に変えるのが『イノベーション』。市場に送り出すのが『イノベーション』というわけだ。」

単純に「広める」ことではなくひとつの「文化」を築きあげることこそがアップルと他の企業の違いだ。文化の定義は具体的に本書では語られていないけれど、「その後何十年も誰もが使い続ける伝統になること」ぐらいでいいだろう。マウスは結局発明されてから、誰もが今でも使っている。マウスを使ってパソコンを操作するという文化をアップルは生み出したのだ。