SF カテゴリーの記事一覧 - 基本読書

基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

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「ホープパンク」の代表的作品と目される、希望とあたたかさに満ちたロボットとの旅路──『ロボットとわたしの不思議な旅』

ロボットとわたしの不思議な旅 (創元SF文庫)作者:ベッキー・チェンバーズ東京創元社Amazonこの『ロボットとわたしの不思議な旅』は、多文化を乗せた宇宙船の長い旅路を描き出したスペースオペラ『銀河核へ』などの著作がある、ベッキー・チェンバーズの最新…

『三体』の劉慈欣と並び称される作家・韓松による超ド級のSF長篇──『無限病院』

無限病院 医院作者:韓 松早川書房Amazonこの『無限病院』は、中国SF四天王の一角にして『三体』の劉慈欣と並び称される韓松による〈医院〉三部作の開幕篇だ。帯の惹句には劉慈欣が『中国のSFをピラミッドとするならば、私が書くような二次元のSFはその土台、…

星雲賞受賞作にして藤井太洋のあらたなる代表作といっても過言ではない、未来の戦争を描き出した長篇SF!──『マン・カインド』

マン・カインド作者:藤井 太洋早川書房Amazonこの『マン・カインド』は、至近未来ー近未来を主な舞台に選び、現実の社会情勢や技術の延長線上で様々な短篇・長篇を発表してきた作家、藤井太洋の最新長篇だ。最新とはいっても本作はSFマガジンで2017年〜21年…

人間は、どこまで遠くを見れるのか。『法治の獣』著者がおくる、傑作宇宙探査SF──『一億年のテレスコープ』

一億年のテレスコープ作者:春暮 康一早川書房Amazonこの『一億年のテレスコープ』は、早川のSFコンテスト(第七回)で優秀賞を受賞、受賞後に刊行されたSF中篇集『法治の獣』は年間ガイドの『SFが読みたい!』で国内篇の一位を獲得と、順調にその実力を証明し…

SF小説って読み通すのに労力がいるよね

qianchong.hatenablog.com こんな記事を読んだ。記事内で当ブログに言及していただいており通知が飛んできたので読んだのだけれども、内容的には「SF映画やAIや技術系の本も大好きなのに、SF小説は最後まで読み通せないものが多い」ということで、なぜなのだ…

どうやったら連続性を維持したまま意識をアップロードできるのか?──『意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く』

意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く (講談社現代新書)作者:渡辺正峰講談社AmazonSFの世界ではよく人間の意識をアップロードして肉体の縛りから解放される、「マインドアップロード」と呼ばれる技術が扱われる。実際、人間の意識とはけっきょく脳内…

精霊による魔法と科学が融合し発展した都市カイロを舞台に、伝説の魔術師との戦いを描く四冠達成のサイエンスファンタジー──『精霊を統べる者』

精霊を統べる者 (創元海外SF叢書)作者:P・ジェリ・クラーク東京創元社Amazonこの『精霊を統べる者』は、ネビュラ賞、ローカス賞、イグナイト賞、コンプトン・クルック賞と4冠に輝いた、アメリカの作家P・ジェリ・クラークの第一長篇&サイエンス・ファンタ…

早川書房の3000作品以上が最大50%割引の電子書籍セールがきたので、新作SF・ノンフィクションを中心にオススメを紹介する

プライムデーに合わせて恒例となっている早川書房の50%割引のセールがきているので、今回も一年以内に刊行された新作SF・ノンフィクションを中心に紹介していこうかと。セール期間は2024年6月25日〜7月17日までで、セール対象は2023年12月までの作品になり…

宇宙探査の現実的な意義と物理学的な側面の追求を、専門家が語る──『人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』

人類は宇宙のどこまで旅できるのか―これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー作者:レス・ジョンソン東洋経済新報社Amazonこの『人類は宇宙のどこまで旅できるか』はNASAで初めての惑星間ソーラー・セイル宇宙ミッションなど数々のミッションに関わ…

AIは国家間のパワーバランスや軍事をどう変えるのか──『AI覇権 4つの戦場』

AI覇権 4つの戦場作者:ポール シャーレ早川書房Amazonこの『AI覇権 4つの戦場』は、無人兵器についてのノンフィクションで本邦でも高く評価された『無人の兵団』著者の最新作で、タイトルの通りAIをめぐる国家間の争い、その行方について主に4つの視点か…

気候変動から地球空洞説まで、巨大な「地球」をテーマにしたことで作家の味が色濃く滲み出た極上のSFアンソロジー──『地球へのSF』

地球へのSF (ハヤカワ文庫JA)早川書房Amazonこの『地球へのSF』は、日本SF作家クラブ(SFやファンタジイに関係する人々が集まっている業界団体)編による書き下ろしアンソロジーの第四弾。第一弾は感染症をテーマにした『ポストコロナのSF』、第二弾は近未来…

物理学・生物学的に考えた時、地球外生命体はどのような機能を持っているのか──『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』

まじめにエイリアンの姿を想像してみた作者:アリク カーシェンバウム柏書房Amazonこの『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』は、書名だけみると小学生ぐらいの夏休みの自由研究みたいだが、実際は動物学者の著者が、生物学、物理学など科学の知識を総動…

『タテの国』の著者による、100年ごとに5万年後の未来までを観測するド真ん中で壮大な規模のSF長篇──『未来経過観測員』

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未来経過観測員 (角川書店単行本)作者:田中 空KADOKAWAAmazonこの『未来経過観測員』は、縦読みならではの物語を構築し次々と明らかになる世界の真の姿、無限構造の物語を描きだしてみせた漫画『タテの国』や宇宙をさまよい、偶然出会った無人の宇宙船同士で…

臓器が別の臓器に変質する感染症が広がった近未来を、臓器移植や気候変動など多様なテーマで切り取っていくSF長篇──『闇の中をどこまで高く』

闇の中をどこまで高く (海外文学セレクション)作者:セコイア・ナガマツ東京創元社Amazonこの『闇の中をどこまで高く』は、アーシュラ・K・ル=グイン賞特別賞受賞作にして1982年生まれのアメリカ作家セコイア・ナガマツによる第一長篇だ。北極病と呼ばれる感…

2055年の未来の食事の風景はどうなっているのか?──『クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食』

クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食作者:石川 伸一,石川 繭子グラフィック社Amazon仮想世界やAIなど未来により発展していくとみられる技術はいくつもあるが、そのうちのひとつに「3Dプリンタ」がある。これは3DCGなど…

第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作にして、刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる物語──『ここはすべての夜明けまえ』

ここはすべての夜明けまえ作者:間宮 改衣早川書房Amazonこの『ここはすべての夜明けまえ』は、第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞したSF中篇(もしくは短めの長篇といえるかぐらい)だ。特別賞は長さが短めだったり一点突破の魅力があったりで受賞する…

『完璧な夏の日』のラヴィ・ティドハーによる、どこか懐かしさを感じる未来の情景を描いたSF長篇──『ロボットの夢の都市』

ロボットの夢の都市 (創元海外SF叢書)作者:ラヴィ・ティドハー東京創元社Amazonこの『ロボットの夢の都市』は、第二次世界大戦直前に世界各地に現れた異能力者たちの暗躍を陰鬱なトーンで描き出す『完璧な夏の日』や、ヒトラーが失脚しロンドンに移り住ん…

SFが読みたい2024年版で海外篇一位を獲得した、悪に堕ちたロボットの人生を描く長篇SF──『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』

チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク (竹書房文庫)作者:ジョン・スラデック竹書房Amazonこの『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・…

時間から猫テーマまで中華SFの粋が集められた、今年ベスト級のSFアンソロジー──『宇宙の果ての本屋』

宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選作者:顧適,何夕,韓松,宝樹,陸秋槎,陳楸帆,王晋康,王侃瑜,程婧波,梁清散,万象峰年,譚楷,趙海虹,昼温,江波新紀元社Amazonこの『宇宙の果ての本屋』は、日本における中華SF翻訳・紹介の立役者立原透耶編集による中華SF傑…

『皆勤の徒』の著者最新作にして、今年いちばんおもしろかった傑作SF長篇──『奏で手のヌフレツン』

奏で手のヌフレツン作者:酉島 伝法河出書房新社Amazon酉島伝法はデビュー作の連作短篇集『皆勤の徒』と第一長篇『宿借りの星』が共に日本SF大賞を獲得と、寡作ながらもその作品は常に高い評価を受けてきた。そんな酉島伝法による最新作『奏で手のヌフレツン…

『闇の左手』などが連なる《ハイニッシュ・ユニバース》物にして、奴隷制度・ジェンダーを真正面から扱ったル・グインのSF短篇集──『赦しへの四つの道』

赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:アーシュラ K ル グィン早川書房Amazonこの『赦しへの四つの道』は、の『闇の左手』などの傑作群が連なる《ハイニッシュ・ユニバース》と呼ばれる世界を舞台にした、ル・グィンによる連作短篇集だ。原…

早川書房の2000作品以上が50%割引の電子書籍セールがきたので、新作SF・ノンフィクションを中心にオススメを紹介する

ブラックフライデーに合わせて恒例となっている早川書房の50%割引のセールがきているので、今回も一年以内に刊行された新刊を中心におもしろかった作品を紹介していこうかと。夏頃のセールが2700点がセール対象だったのにくらべて今回は「2000作品以上」と…

《竜のグリオール》シリーズ最終巻にして、ファンタジィの醍醐味がぎゅっと詰まった長篇ドラゴン・ファンタジィ─『美しき血』

美しき血 竜のグリオールシリーズ (竹書房文庫)作者:ルーシャス・シェパード竹書房Amazonルーシャス・シェパードの代表作のひとつ、《竜のグリオール》シリーズの最終巻が『美しき血』として本邦でもついに刊行となった。最終巻といってもこのシリーズは長い…

竹書房文庫のSFで電子書籍セールが開催しているので、おすすめを紹介する

竹書房文庫から刊行の《竜のグリオール》シリーズ全作刊行を記念して、竹書房文庫の中でもSFに絞った電子書籍セールが開催されているので(13日まで)、竹書房文庫の布教ついでに紹介しようかと。竹書房はSFのイメージは持たれていないかもしれないが、近年はS…

科学とSFの相互発展の歴史を、小説、映画、ドラマなど多方面から描き出す──『サイエンス・フィクション大全 映画、文学、芸術で描かれたSFの世界』

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サイエンス・フィクション大全 映画、文学、芸術で描かれたSFの世界グラフィック社AmazonSF、サイエンス・フィクションとはサイエンスとついているように基本的には科学をテーマ・取り扱ったフィクションのことを指す(科学を扱わなくてもSFに分類されるが、…

欧米で話題沸騰の気候変動にまつわるすべての領域を描き出そうとした野心的な気候変動SF──『未来省』

未来省(The Ministry for the Future)作者:キム・スタンリー・ロビンスン,坂村健パーソナルメディアAmazonこの『未来省』は、『レッド・マーズ』、『グリーン・マーズ』、『ブルー・マーズ』の三作からなる火星三部作や『2312 太陽系動乱』などで知られるキ…

全世界の誰もがこの人間の影響を受ける、お騒がせ男初の公式伝記にしてアイザックソンの最高傑作──『イーロン・マスク』

イーロン・マスク 上 (文春e-book)作者:ウォルター・アイザックソン文藝春秋Amazonこの『イーロン・マスク』は、その名の通りイーロン・マスク初の公式伝記である。マスクの伝記自体はこれまでにも出て、翻訳もされている(読んだけどおもしろい)が、その中に…

オールドスタイルなスペースオペラの土台に宇宙のすべてが乗っかった、圧巻のオープンワールドRPG──『Starfield』

store.steampowered.com ベセスダの新作ゲーム『Starfield』、XboxGamePassに加入してプレミアム・エディションを追加購入した人は9月1日からプレイできた。現時点で35時間ほどプレイし、各勢力のミッションもいくつかたしなみながらメインミッションも一応…

『SF超入門』のオーディオブックが出るのでオーディオブック自体の良さをオススメする。

「これから何が起こるのか」を知るための教養SF超入門作者:冬木 糸一AudibleAmazon僕は今年の3月に『SF超入門』という、SF(小説)の入門本、ガイド本を出したのだけどありがたいことにこれをオーディオブックにしてもらえることになった。オーディオブックは…

並行宇宙の地球〈怪獣惑星〉の怪獣たちを保護し、地球を守るために日夜戦う保護協会の面々を描く、『老人と宇宙』著者による怪獣SF──『怪獣保護協会』

怪獣保護協会作者:ジョン スコルジー早川書房Amazonこの『怪獣保護協会』は、『老人と宇宙』など数多のSF作品・シリーズで知られるジョン・スコルジーの最新邦訳長篇である。スコルジーはもともとSF愛好家であり、作品にもSF小説・映画・アニメネタが(時と…