導入事例:株式会社島津アクセス様 | マイナビ研修サービス

導入事例

「若手社員の離職を食い止めたい」 離職率マイナス10パーセントを実現した島津アクセスの全方位型研修戦略

株式会社島津アクセス様トップビジュアル
若手社員の離職を食い止める 全方位型研修戦略
株式会社島津アクセス 様
業種
サービス・インフラ
従業員数
907名(2024年4月現在)
設立
2011年
本社
東京都

課題背景

コロナ禍後に入社3年目までの若手社員の離職率が12%に拡大。若手社員との面談やアンケートから、社内の「育成風土の不足」がひとつの原因ではないかと考え、離職防止策として研修をとおした育成風土の醸成に取り組んでいる。

成果

若手社員だけでなく、メンターやその上司、さらには部長クラスにまで対象を広げた全方位的な若手社員育成の研修プログラムを実施。現在ではコロナ禍以前の水準をさらに下回る2%台にまで若手社員の離職率を下げることに成功した。

日本が「少子高齢化」という大きな課題に直面してから、もう30年以上が経ちました。それでも今のところは進学率の高まりが新規学卒者の数をほぼ横ばいに保っていますが、いずれは深刻な「若手不足」の時代がやってきます。

そのような中、多くの企業が頭を悩ませている問題が「若手社員の離職」です。若手社員の離職は、採用コストや教育コストの回収ができないだけでなく、将来的に社内の年代構成のバランスが崩れる原因にもなるため、なんとしても避けたいところ。しかし、それがなかなか難しいというのも人事の皆さまは強く実感されていることでしょう。

今回お話を伺った株式会社島津アクセスも、同様に若手社員の離職率の高さに悩んでいる企業の1つでした。コロナ禍を契機に以前は3%前後で推移していた若手社員の離職率が12%にまで拡大し、その解決に苦慮されていたといいます。

そこで2022年よりマイナビとともに研修プログラムの見直しと改善に着手されました。同社では若手社員だけでなく、メンターやその上司、さらには部長クラスにまで対象を広げた全方位的な若手社員育成の研修プログラムを実施。現在ではコロナ禍以前の水準をさらに下回る2%台にまで若手社員の離職率を下げることに成功しました。

その根底にある考え方、そして実践のためのポイントを伺いました。

新人の離職防止のために作り上げた「全方位型研修」

本日はよろしくお願いします。まずは、御社の事業内容をお聞かせください。

高橋さん
(以下、高橋)

はい。当社は島津製作所のグループ会社として、顧客に納入されている島津製作所製品のメンテナンスとアフターサポートを専門でおこなっている会社です。

日本全国に支店を置き、基本は技術者が納入先にお伺いして業務をおこなっています。

ありがとうございます。技術者を中心に自律した働き方が求められる中、御社では若手社員の離職率に課題を感じられていたと伺っています。

高橋

はい。コロナ禍前までは離職の多さは感じなかったのですが、その後は明らかに3年目までの若手社員の離職が目立つようになってしまい、非常に頭を悩ませていました。

その原因について、どのように分析されていましたか?

高橋

私が年に2回おこなっている若手社員との面談やアンケートの内容から、原因は大きく分けて2つあると考えていました。

まず1つが、納入先にお伺いしての仕事になるので先輩や上司との日常的なコミュニケーションが不足していること。技術者としてある程度、自律した働き方が求められる中で、小さな困りごとを気軽に相談できる環境になかったのです。

結果、一人で悩みを抱えてしまい、小さな問題がだんだんと本人の中で深刻化してしまって離職に繋がっていたように思います。

2つめが、当社の持つ「職人気質」な風土です。仕事柄、上の世代は「先輩の背中を見て育った」という実感を持っていて、その教育方針のまま下の世代にも接しているようでした。

もちろん伝統は大切ですが、こと教育や育成分野にそれは当てはまらないと私は考えています。とくに新入社員はそれまで学校で時代に合った「今の教育」を受けてきているのに、入社した途端に「昔の教育」を受けなくてはいけないというギャップが生まれます。これも離職要因の1つになっているのではないかと考えました。

そして、これら2つは「育成風土の不足」という言葉でくくることができます。つまり、当社がとるべき若手社員の離職防止策は育成風土の醸成だと考えました。

「風土」というのは一朝一夕で作れるものではないため、なかなか難しい挑戦のように思えます。

高橋

その通りです。そこで当社がマイナビさんに協力いただきながら2022年頃から作ってきたのが、若手社員育成を軸に、彼らを取り巻く社員も含めて全方位的に育成する研修システムです。

若手社員向けの階層別研修、メンターの意識改革とスキル向上のための「メンター研修」、その上司にあたるメンター制度の責任者クラスに向けた研修、そして2024年から導入した部長クラス向けの職場風土を改善する研修などで構成されています。

これらを同時におこなうことで、若手社員自身の育成を進めるのはもちろん、その周囲にいる社員にも若手社員育成の意義や重要性を理解し、加えてノウハウや知識、スキルを身につけてもらうことができます。

結果、効率よく若手社員を育成しつつ、育成風土の醸成にも繋がると考えて始めました。

株式会社島津アクセス高橋様

きっかけは「メンターからの声」社員の特性を活かしたメンター研修とは

ぜひ1つずつ聞かせてください。まず改善されたのが「メンター研修」と伺っていますが、その理由はどのようなものでしょうか。

高橋

当社の「メンターメンティ制度」は、新入社員と年齢の近い入社3年目から30歳くらいまでの社員が、いわば「心の友」として寄り添ってあげることで日頃の悩みを聞き、解決に導くことを目的としています。

仕事上の「トレーナー」とは異なり、直接の先輩や上司には相談しにくい内容も話すことのできる存在として、新入社員の定着には欠かせない役回りなのですが、そのメンターから不満の声が上がっていました。

不満の声とは、どのようなものですか?

高橋

端的にいえば「負担感がある」ということなのですが、紐解いてみると「メンター制度の必要性が理解できない」ことが原因の1つにありそうでした。通常業務以外に時間を割いて新人対応をしなくてはいけないのに、その必要性に納得がいっていないのでは負担を感じるのも当然です。

会社からの要請でメンターに就任してもらう以上、そこは会社からフォローするべきだと考えましたし、メンターメンティ制度が機能不全を起こせば、新入社員が悩みを一人で抱えてしまっている現状を解決することはできません。
そこでマイナビさんに相談をし、当社向けのメンター研修の設計から協力していただきました。

具体的な研修の内容はどのようなものでしょうか。

高橋

新入社員の定着にメンターメンティ制度がいかに重要であるか、というマインドセットをおこなう理論パートと、実際にメンターとして活動するにあたって必要なコミュニケーションスキルやノウハウの伝達をおこなう実践パートの2つから構成されたものです。

当社の従業員比率7~8割を占める技術者はほぼ全員が理系出身のため、理論と実践(スキル)を組み合わせてきちんと伝えられれば納得感を持って業務にあたれます。

その特性を活かしてプログラムを組み立てれば、メンター業務の負担感も軽減できるだろうという見込みから発想されたもので、社員の特性まで踏まえてのプログラムの組み立てはさすがだと思いましたし、実際にうまく機能しています。

島津アクセス様インタビューの様子

メンターだけでなく「その上司」にまで研修を広げた理由

なるほど。そのメンター研修である程度メンターメンティ制度もうまく機能するようになった、ということでしょうか。

高橋

いえ、実はこれだけでは不十分でした。先ほどの「負担感」の要因としてもう1つ「上司の協力が不足している」という声もあり、そちらも解決する必要があったのです。

メンターの上司は当然ながらメンターメンティ制度に責任を持つべきなので積極的に関与するべきです。そしてもちろん、会社から一定の強制力を持ってそのように動いてもらうこともできます。

しかし、ただ強制をしても実効性の面で問題が生じてしまう懸念もあったので、ジェネレーションギャップ解消のためのプログラムも組み合わせた研修を実施してはどうかと、ご提案いただきました。

それで始められたのがメンター制度責任者向けの研修ですね。ジェネレーションギャップの解消まで目的に含めたのはどういった理由でしょうか?

高橋

管理職がメンターメンティ制度への関与に消極的である理由の1つに「今の若手社員のことがわからない」という思いがあったようなのです。わからないから、年齢の近いメンターに任せきりにしてしまい、結果としてメンターの負担感に繋がっていたわけです。

そこで、メンターメンティ制度の責任者である自覚を持ってもらうこと、ジェネレーションギャップを理解して新人対応をメンターに任せきりにしないようにすることを目的として、研修を組み立てていただきました。

実際に研修をおこなわれてみて、いかがでしたか?

高橋

メンターからの不満も減って、効果はあったと思います。日頃から学生(就活生)の動向を見ているだけあり、マイナビさんからは常に最新の情報を提供してもらいつつ、年度ごとに新しいトレンドを取り入れた提案をいただいています。

また、こうして上の年代が世代の違いを理解してジェネレーションギャップを解消することで、冒頭でお話しした離職理由の1つでもある「職人気質」な風土の改善にも繋がっています。自分たちが教育を受けてきた時代と今とではまったく違うから、教育方針も変えるべきであるということを理解してもらいつつあるようです。

教育方針のアップデートという点では、承認スキルの向上を目的としたプログラムも導入しています。承認する(褒める)ことが苦手な世代でもあるので、新人を含めた部下が成果を出したらその結果を認め、褒めてあげられるよう、仕組み化されたものです。

それも「職場風土改善」の一環と捉えることができると思いますが、さらに別の研修として「職場風土改善研修」も2024年から導入されていますね。

高橋

はい。こちらは係長から部長クラスまでの管理職に向けた研修です。

当社は社員の年齢層が18歳から50代以上までと非常に幅広いので、職場の責任者として全体をマネジメントすることに難しさがあるのは事実です。そこで、いかにみんなが居心地よく仕事ができる環境を整えながら、当社独自の風土を作り出していくか、といった理論とスキルを育成するプログラムを組んでいただきました。

とくに力を入れているのが、ハラスメントへの理解と対策です。上の世代はそう思っていなくても、若手社員はハラスメントとして受け取ってしまう事象があります。今の若手社員はどんなことでショックを受けてしまうのか、なにがハラスメントに当たるのか、といった基礎知識をベースに、適切なコミュニケーションスキルを身につけるためのプログラムを中心に組み立てていただきました。

ただ、さきほど少しお話ししたように理系社員の多い当社では、数値的な根拠もあわせて提示しないと納得感を得てもらうのは難しいので、若手社員からのアンケート結果をもとに改善すべき風土、評価されている風土を1つずつ取り上げて、なにを改善すべきなのかデータをもとに示していくようにしました。

メンター制度責任者向けの研修、職場風土改善研修の2つをもって、冒頭で仰っていた「職人気質な風土」や「昔の教育」をアップデートしていったわけですね。

高橋

はい。繰り返しになりますが、私は伝統が悪いとは思っていません。業務の性質上、怪我や事故に繋がるミスやトラブルも起こりうるので、ときには厳しく指導することも必要でしょう。

しかし、世代の異なる若手社員を育てていくためには最新のトレンドを理解することは欠かせませんし、教え方も変えていかなくてはいけません。そうして効果的な教育方法を学べば、そもそもミスやトラブルが減っていくことも期待できます。

教える側が自発的に自分を変えていくのは困難なので、会社から研修という形で学びの機会を提供しているのです。

島津アクセス様インタビューの様子

「受ける側」の意識育成も組み合わせ 教育の効果を最大化

若手社員を取り巻く社員への研修が徹底していて、あとは社内で若手社員教育が「自走」していくことも期待できると思いますが、若手社員向けの研修も別でおこなっていらっしゃいますね。

高橋

はい。新入社員をはじめとした若手社員は社会に出て間もないのですから、周囲から成長のためのサポートを受けるのは当然です。しかし、若手社員側がそれを漫然と受けていたのでは意味がありません。

そこで、会社として若手社員に研修をおこなっている理由やその意義を、若手自身が理解し、意識することで教育効果が高まると考えたのです。そしてマイナビさんに相談し、オーダーメイドでプログラムを組み立てていただいて導入したのが、1年目から3年目までの年次別研修と、5等級研修(※)です。

※同社では入社時点で6等級、その後、一定の成果が認められると5等級となる等級制度を取り入れています。

それぞれの内容をぜひ詳しく聞かせてください。

高橋

1年目におこなう新人研修は、ビジネスパーソンとして必要な素養を育てるインプット型の研修と、ワークショップを中心としたアウトプット型の研修で構成されています。

インプットとアウトプットの両方をおこなうことで「なぜ学ぶ必要があるのか」「組織の一員として働くとはどういうことか」といったマインドセットを育てるプログラムです。これによってメンター制度の意味も理解できますし、社会人としての自覚も育てることができます。

続く2年目研修では、業務に求められるビジネススキルを習得するプログラムと、社会人としてあるべき姿を考えるプログラムで構成しています。新人研修を踏まえて、さらなる自己成長を狙ったものです。

これら1年目、2年目の研修は「自己の成長」に注力したものですが、続く3年目研修では「自分が他者からどう評価されるか」といった客観性を育てて組織における自身の役割を認識してもらうためのプログラムと、業務にも慣れてきた中で自分自身の付加価値をつける仕事の進め方を学ぶプログラムで構成しています。

育てられる側から、育てる側、評価される側へと移っていく時期にその意味を理解してもらう狙いです。

なるほど。スキルや知識だけでなく、先ほどおっしゃっていた「教わる側(若手社員)」の意識醸成という観点でマインドセットやキャリアプランニング、仕事への付加価値の付け方を盛り込んでいるわけですね。

高橋

はい。組織の一員として働くとはどういうことか。なにを期待されているのか。そういったことを3年かけて教えることで、研修を受ける意義や意味をしっかりと理解できるので教育効果が高まると考えています。

その上で、5等級に上がったときにおこなわれるのが「5等級研修」です。当社では6等級から5等級への昇級では役職が就かないこともあり、社員からは昇級したという意味そのものを理解しにくいという声もありましたが、もちろん昇級には周囲や会社からの評価と期待が込められています。

それを理解してもらうと同時に、リーダーを支えるフォロワーシップを育てて組織に貢献することへの意義を学んでもらうように組み立てていただきました。

なるほど。そのようにして、3年目までのいわゆる「新人時代」、そしてその後に連なる「リーダー候補時代」までをカバーする研修が実現できたのですね。

高橋

はい。3年目研修や5等級研修を終える頃にはメンターに任命される社員も出てくるので、この流れでメンター研修も受けると「育てられること」の意義や意味に加え、「育てること」の大切さも学ぶことができます。

これで社員が教わる側から教える側になり、次の世代を新しい教育方法で育てていけるようになるわけです。このサイクルが続いて、今の時代に求められる育成風土がだんだんと社内に根付いていくことを期待しています。

では最後に、御社の「全方位型研修」の成果と、今後の展望をお聞かせください。

高橋

まず私の実感として、若手社員から寄せられてくる相談内容が変わってきました。

以前は「誰に質問したらいいのかわかりません」といった悩みごとが中心でしたが、今では「もっとこういうことを教えてほしい」「こんな研修を受けてみたい」と、さらに成長するための前向きな内容になってきています。

また、現場から上がってくるトラブルの報告の質も変わりました。以前であれば若手社員が休職した、離職した、と対処が難しくなってからの報告が多かったのですが、今はもっと前の段階にある小さなトラブルがこまめに報告として上がってきています。メンターや上司が職場をきちんと見られるようになり、大きなトラブルになる前に回避しようと動けるようになった証拠ですね。

結果として、一時は12%まで上がってしまった若手社員の離職率が、今では2%まで下がっています

島津アクセス様インタビューの様子

具体的で素晴らしい成果ですね。今後、マイナビにはどのようなことを期待していますか?

高橋

まずは、当社の課題にあわせた精緻なプログラムの組み立てと、研修実施の際の細かな心遣いや準備の周到さなどを引き続き期待したいです。

細かいことですが、研修にまつわる準備や当日のオペレーションなども含めてすべてお任せでき、私自身は社員の様子をしっかりと見ることができるのが本当に助かっています。

また今後は、同じくマイナビさんに協力していただきながらエンゲージメント診断も導入し、その結果からeラーニングをおこなうなどして、さらなる組織状態の可視化と、そこからのアプローチができるようにしていきたいと思っています。

今後も当社の若手社員育成風土を伸ばしていくために、マイナビさんにはパートナーとして力を貸していただけたらと思っています。

高橋さまによる社内の正確な分析から生まれた「全方位型研修」は非常にロジカルで効果的な研修プログラムだと感じました。今日は貴重なお話をありがとうございました!

※取材内容は2024年6月6日現在の内容です。

〈プロフィール〉

高橋 一輝 さん

管理本部 人事・総務部 人材開発グループ

大学卒業後、化学業界で技術開発職・技術営業職・営業職を経験し、その後島津アクセスに入社。現在は採用業務や研修業務に携わる。

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