導入事例:株式会社グランディック様 | マイナビ研修サービス

導入事例

社内に「マネジメント」の文化を根付かせたい 医療給食のプロフェッショナル・グランディックが挑戦したエンゲージメントベースの組織改革

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株式会社グランディック 様
業種
サービス・インフラ
従業員数
670名(2022年1月現在)
設立
1986年
本社
東京都

課題背景

採用は順調であったが、突然退職される方がいるなど定着に課題があった。そのような中、大規模な経営体制の変更で、事業成長のために社員の定着と育成に力を入れていくことになり、課題解決へと動き出した。資格を活かしたキャリア形成ができる専門性の高い仕事だが、なぜ離職してしまうのかその原因を明らかにするために、エンゲージメント診断を実施することから取り組みを始めた。

成果

エンゲージメント診断から「セルフエフィカシー(自己効力感)」が低いことが明らかになった。診断結果と現場の視察から、マネジメントが十分にされていないのではないかという仮説を立て、マネジメント層に研修を実施。その結果、定期的なエンゲージメント診断の結果も徐々に改善されていることが確認できている。あわせて組織改編にも取り組み、現場がより働きやすくなるよう社内の体制も整えている。

人材市場では長らく採用難の時代が続いています。しかしもう一方の課題として従業員が離職してしまう「定着難」を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

とくに専門性の高い人材が集まる業界は他と比較して人材流動性が高くなる傾向があり、今回お話を伺った株式会社グランディックもそんなお悩みを抱える企業の1つでした。

しかし、同社では経営刷新を契機に取りかかった大規模な人事・組織改革によって、離職率の大幅な低下を実現したといいます。その背景には、マイナビのエンゲージメント診断で課題を可視化し、その結果にもとづいて設計された研修プログラムによる社員の意識改革や組織文化の刷新がありました。

「やりがいはあるのに、辞めてしまう」原因解明へ動き出したグランディック

本日はよろしくお願いします。まずは、御社の事業内容についてお聞かせください。

鈴木 崇さん
(以下、鈴木)

当社は高齢者施設や介護施設といった、食について専門的な知識と経験が求められる施設での委託給食事業を主軸とした企業です。各現場に栄養士や調理師を派遣し、現場の医療職の方々などと協調しながら日々の食事を提供しています。

となると、社員の方の多くが専門職ということになりますか?

鈴木

はい。社員の多くが調理師や栄養士などの専門資格を有しています。

採用側から見れば競争率の高い人材ですが、事業の専門性の高さから求職者の方にも魅力を感じていただいており、これまでも、現在も、ありがたいことに採用は順調にできている状態です。

しかし、定着には課題を感じていらっしゃったと伺っています。どのような状態だったのでしょうか。

鈴木

ライフステージの変化、ご家庭やご家族の事情といった致し方ない理由で離職される方もいらっしゃいますが、それ以外に突然離職される方もいらっしゃり、理由が分からず頭を悩ませていました。

資格を活かす仕事ができる。専門性の高さからやりがいもある。それでも、ある日突然、理由も告げずに辞めてしまう。これはいったいなぜだろう……と。

人事担当者としては頭の痛い問題ですね。

鈴木

はい。ただ、採用が順調だったこともあり、会社としてはあまり大きな課題と捉えていませんでした。

しかし、社員が理由も告げずに辞めてしまうときには、会社全体なのか、あるいは各現場なのか、いずれにせよ必ずなにか原因があるはずです。社内で人が成長し、それにともなって企業も成長していく健全なサイクルを回すためにも、その問題を解決したいと思っていました。

そんな中、大規模な経営体制の変更で大きく潮目が変わり、事業成長のために社員の定着と育成に力を入れていくことになりました。離職問題への直接的な解決が求められるようになったのです。

株式会社グランディック鈴木様

課題解決に向けて動き出せるようになったのですね。まず、どのようなことをされたのでしょうか?

鈴木

最初に着手したのは、社員アンケートでした。匿名で、社員に対して会社や現場について感じていることを教えてください、とお願いしたのです。すると「こういう機会を待っていました」と、現場からさまざまな声が届きました。

内容は現場での働き方のこと、研修のことなど、多岐にわたっていましたが、それらに1つずつ対処していては時間もかかってしまいますし、なにより根本的な解決には繋がりません。

そこで、採用などで日常的にコミュニケーションをとっていたマイナビさんに相談したところ、従業員の組織への貢献意思をはかる「エンゲージメント調査」を実施し、離職の原因を明らかにできるかもしれない、とご提案をいただいたのです。

エンゲージメント調査で見えた「現場の課題」と解決策

御社にとってエンゲージメント向上への取り組みは新しい試みでしたが、始められるにあたってハードルはありませんでしたか?

鈴木

経営層とも、先ほどのアンケート結果をもとに現場に改善要望があること、そしてそれが離職に繋がっているであろうという課題感は共有していましたので、スムーズに「まずはやってみよう」ということになりました。また、マイナビさんの手厚いサポートが期待できるという点も、導入決定の判断には大きく寄与したと思います。

導入を決めて最初の診断をおこなったのが、2023年1月です。エンゲージメントに影響を与えるさまざまな項目について詳細なレポートを見て、私も、経営層も驚くことになりました。「セルフエフィカシー(自己効力感)」(※)が低いという結果が出ていたのです。

※セルフエフィカシー(自己効力感)とは「自分が行為の主体であると確信していること、自分の行為について自分がきちんと統制しているという信念、自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信」と定義されている。すなわち、自己効力感が高まると、ある目標や行動に対して「自分ならできる」といった自信をもつことに繋がる。

資格が活かせる、仕事の専門性も高い。しかしセルフエフィカシーが低い。たしかに矛盾した結果のように感じますね。

鈴木

はい。社員は「やりがいのある仕事」だと感じていると思っていたので、大変驚きましたね。

また「上司からの適切な仕事支援」については高く出ている一方、主体的に周囲に関わったりすることが低いという、一見すると矛盾した結果がもう1つ見られました。ここから考えられる仮説は「上司から業務上の支援は得られているが、マネジメント(働き方・人の管理)は十分されていない」というものです。

現場ではリーダーを中心としたチームを組んで仕事をしていたので、上司からの業務上の支援はもちろん、働き方や仕事上の悩みを相談できる環境もあると思っていたので、やはり意外な結果として受け止めました。

そして、これらの結果が出た理由を探ろうといくつかの現場を視察してみると、これまで把握できていなかった問題があることが分かったのです。

グランディック様取材の様子

その問題とはどのようなものですか?

鈴木

まず、施設利用者からのフィードバックがほとんどない環境で仕事をしていることが分かりました。仕事が調理場の中で完結してしまい「美味しかったよ」「今日もありがとう」というような、やりがいに繋がる言葉を受けていないのです。これが「セルフエフィカシーの低さ」に繋がっているようでした。

そしてもう1つ。現場社員は基本的に全員が有資格者なので、最初の1〜2年を過ぎて現場で求められるスキルが身についた後は、リーダーとメンバーという立場の違いを越えて「全員がプロ」として扱われるようになり、結果としてフォローやマネジメントを受けにくい環境で独立して働くことが求められていました。

私たちが想像していた「チームでの協働」ではなく「それぞれが個の力を活かす」ことで現場が成り立っていたのです。結果、働き方や仕事上の悩みを相談して解決したり、やる気を引き出すような言葉を上司から受けたりすることができず、こちらもセルフエフィカシーの低さに繋がっているようでした。

なるほど。たしかに、人事や経営層からは見えにくい問題ですね。

鈴木

はい。エンゲージメント診断をしなければ、気付かなかったかもしれません。

そして、この2つの問題は繋がっています。それぞれの現場にはその運営主体(施設運営者)の事情や意向があり、施設利用者の方からのフィードバックを必ず受け取れるようにするというのは現実的ではありません。ですから、本来は上司がメンバーのやる気を引き出し、仕事にやりがいを見つけられるようなフィードバックをおこなうことが求められます。ところが、チームではなく「個の集まり」として仕事をしているため、その風土が形成しきれていなかったのです。

こうしてエンゲージメント診断の結果から分かった課題を解決するために具体的な行動に繋げていこうと、会社としてマネジメント層をきちんと育て、やりがいを感じられる現場を作れるように動き出しました。

マネジメント層の育成と教育で人事課題の解決へ

診断の結果を具体的な行動に移されたわけですね。いま、マネジメント層を育てるというお話がありましたが、これまで御社では現場リーダーのほかにどのようなマネジメント職があったのでしょうか?

鈴木

現場リーダーの1つ上の階層に、管理職として地域ごとに現場をまとめるエリアマネージャーを置いています。

いずれも現場からの昇格でその職に就いている社員が多いのですが、そこに課題があったことも1回目のエンゲージメント診断から分かっていました。本人は調理や献立作りといった現場職をスペシャリストとして続けていきたいのに、会社からの要請でマネージャーを請け負っていると感じている社員が一定数、存在していたのです。

スペシャリストは十分に育っていたけれど、マネージャーが育ちきっていなかった、ということでしょうか。

鈴木

はい。そこで、マネジメント層向けの研修をマイナビさんとともに組み立てました。

まずおこなったのが、現場リーダー向けの「価値発見ワークショップ」です。当社で働く上で得られる「やりがい」を明確化し、自分の業務に価値を見出して積極的な姿勢で働いてもらうことを目的としました。

そのワークショップのあと、2023年9月に2回目のエンゲージメント診断をおこなったところ、リーダー層の診断結果が改善されていることが確認されました。そこで次におこなったのが「リーダーとして現場をいかにマネジメントするか」という具体的な方法論を考える研修です。

研修の成果を細かく確認しながら、さらに次の施策へと繋げていったのですね。マネジメントを学ぶ研修は具体的にどのようなものでしたか?

鈴木

それぞれの現場が抱える課題を洗い出し、あるべき姿になっていくためのアクションプランを策定し、実際に半年間運用するという実践型の内容でした。外部講師を招いて策定した半年間のアクションプランを実践する中で、だんだんとリーダー(マネージャー)としての自覚を育て、かつ具体的なアクションにまで繋げていくことで、現場社員にも実感の持てる効果が出ることをねらったものです。

そして、これらの施策の効果を見極めるため2024年4月に3回目のエンゲージメント診断をおこなったところ、さらにエンゲージメントの改善が見られました。

今後は管理職と管理職候補向けにマネジメントの基礎知識やスキルを習得し、部下のエンゲージメントを高める方法を学ぶための研修の実施を予定しています。

グランディック様取材の様子

リーダー層がやりがいを発見した上でマネジメントを実践するワークショップを開催、そして今後はスキル育成まで。発見した課題に対して適切かつ十分な内容ですね。

鈴木

それもマイナビさんに相談してよかったと思ったポイントの1つです。これまで当社では研修といえば調理や栄養管理のスキルを育てるものが中心で、こういったマネジメント領域の研修は取り組むことのなかった領域でしたので、当社だけでは解決に向けて動くことも難しかったかもしれません。

結果はいかがでしたか?

鈴木

1回目、2回目、3回目とエンゲージメント診断を重ねるごとにマネジメント層の診断結果が改善していることが確認できたのは、嬉しい結果でした。リーダーや管理職に昇格していた社員がその仕事にやりがいや楽しさを見出したのだと思います。

これらの取り組みによって、ある程度はエンゲージメント診断の結果にあった「上司からの育成観点での支援」の原因に対処できたことでセルフエフィカシーの向上も期待できるようになりましたが、さらに社内でのマネジメント層育成と支援体制の強化のため、組織改編にも踏み切りました。

組織改編をともなう抜本的な施策の打ち出しで さらなるエンゲージメントの向上へ

具体的に、どのような組織改編をおこなったのでしょうか。

鈴木

これまでは当社の営業エリアを4つに分けて4人のエリアマネージャーが統括していましたが、これを11に細分化し、あわせてエリアマネージャーも11人に増やしました。

加えて各エリアに、栄養士と調理師それぞれに特化した教育専門のサポートチームを新たに編成し、現場リーダーによるメンバーのサポート体制を支援する仕組みも作りました。

かなり大規模な組織改編で手当の新設や規定の改定などもともなう大変なものでしたが、これによって現場がより働きやすくなることを期待しています。

人事担当者としても、かなりご苦労の大きい改編だったと思います。

鈴木

はい。しかし、エンゲージメント診断の結果を受けたマネジメント研修を実施したことによって、社内に「スペシャリストだけではなくマネージャーも育てなくてはいけない」という文化が根付く下地ができたと思うので、地道に教育を重ねながら社内の体制を整えていきたいと思っています。

今後は、この体制を維持するために現場メンバーから将来のリーダー、管理職候補を見つけて先回りで育てていくような施策もおこなっていきたいですね。

加えて私自身の立場も少し変わりまして、これまで同様に人事の仕事をしながら、内部監査として現場を視察するようにもなりました。これも仕事としては大変ですが、現場と人事(会社)とを繋ぐ大切な役回りだと思っています。

グランディック様取材の様子

では、今後の展望をお聞かせください。

鈴木

振り返りますと、やはりエンゲージメント診断によって人事や経営層が気付いていなかった課題を発見できたことが、すべてのスタートにあります。

勘や経験、そして「(現場は)こうなっているだろう」というある種の思い込みではなく、明確な根拠にもとづいた人事戦略を基礎に、これからも社員と会社とがともに成長できるサイクルを力強く推進できたらと思います。

素晴らしいご展望ですね。では最後に、これからマイナビに期待したいことはなんでしょうか?

鈴木

いまお話しした展望を叶えるためにも、マイナビさんによる二人三脚のサポートにはこれからも期待しています。

とくに、上層部向けに開いてくださっている報告会には感謝しているんです。人事担当者からではなく、第三者機関からの報告であることが上層部の納得感に繋がって施策に協力してもらいやすくなるので、プロジェクトが進めやすくなりました。

これからも、当社がよりよい企業になるためのサポートをお願いできたらと思っています。

エンゲージメント診断からの大胆な組織改編、そして今後への展望。たいへん参考になるお話をお伺いできました。本日はありがとうございました。

※取材内容は2024年5月31日現在の内容です。

〈プロフィール〉

鈴木 崇 さん

管理部 管理課 次長

2018年グループ子会社であるグランディック採用担当として出向。2023年より転籍し、現在は新卒・中途採用に加え人材育成に関する施策を積極的に推進している。

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