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デジタルスキル標準とは?策定の背景や対象者、活用方法を解説

2024年11月06日更新

オフィスで働く様子デジタル技術の進化とともに、社会や業務で求められるスキルも変化しています。なかでもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、企業の競争力を維持・強化するうえで重要です。DX推進のために策定された「デジタルスキル標準」は、DXの実現に不可欠なスキルや知識を体系化し、社員のスキルアップに役立てることができます。

本記事では、デジタルスキル標準とはなにか、策定された背景やデジタルスキル標準を構成する2つのガイドライン、活用する方法を紹介します。

目次 【表示】

デジタルスキル標準とは

複数人でパソコンを見ながら作業をする様子
デジタルスキル標準とは、職場や社会で必要とされるデジタル技術や知識の基準を示したもの、とくにDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に関連しています。DXは企業が競争力を維持し、成長するために不可欠であり、これを実現するためには社員が一定のデジタルスキルを持つことが求められます。

DX化が進む現代において、多くの日本企業でDXの取り組みが遅れていると考えられています。デジタルスキル標準は、国内のDX人材の不足の重要性を踏まえて、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって、2022年12月に策定されました。デジタルスキル標準で取り扱う知識やスキルは、幅広く使えるように汎用的な言葉で示されており、特定の産業や職種、部署に依存せず、共通の指標として活用しやすくなっています。

しかし、各企業や組織がデジタルスキル標準を自分たちの産業や事業に合わせて具体的に適用する際には、それぞれの業界や業務に適した形で活用することが重要です。デジタルスキル標準をもとにして、独自のデジタルスキル育成プログラムを策定するなど、現場のニーズに合った形で取り入れることが求められます。

また、2023年8月には生成AIの普及によりデジタルスキル標準の改訂がおこなわれ、AIのビジネスへの適切な利用方法(例:生成AI〈 画像生成ツール、文章生成ツール、音声生成ツールなど〉の概要や使用方法、デジタル技術やサービスに活用しやすいデータの入力方法や整備手法の理解など)、著作権や情報漏洩、倫理的な問題に注意が必要なこと、AIを用いた変化を積極的に学ぶといったスタンスを示しました。

デジタルスキル標準が策定された背景

テーブルで話し合いをする様子
近年は国内外問わず、デジタル技術が発展し、製品やサービス、業務プロセスなどのデジタル化も進み、変化の激しい時代に入っています。しかし、日本企業はDXの取り組みに後れを取っており、その要因のひとつとして、DXの素養や専門性を持った人材が不足していることが挙げられます。DX化への抵抗や変革についていけないことは企業の競争力の低下を招くでしょう。

そのため、社員だけでなく、経営層まで含めた企業全体がDXヘの理解・関心を持ち、DX推進のための人材育成を進める必要があります。こうしたDX推進のための背景があり、知識や技術だけでなく変革を受け容れるといった心構えを含め、デジタルスキル標準が策定されました。

デジタルスキル標準を構成する2つのガイドライン

2本の矢印
デジタルスキル標準を構成する2つのガイドラインである、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」について詳しく解説します。

DXリテラシー標準

DXリテラシー標準とは、「すべてのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準」として策定されたものであり、ビジネスパーソン全体がDXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身につけるための指針です。

これまでのビジネスマナーといった社会人としての常識とは別に、DXについての知識やスキルの学びを標準としています。「一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになる」ことを策定のねらいとしており、産業や 職種、部署にかかわらずすべてのビジネスパーソンが対象となります。

DXリテラシー標準は、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」という4つの項目から構成されており、これらによってDXの重要性や、デジタルスキルの具体的な内容、実践方法、適切な心構えが示されます。

  • ・Why(DXの背景)
    DXの重要性や必要性を理解するための社会や顧客・ユーザー、市場の環境変化に関する知識。
  • ・What(DXで活用されるデータ・技術)
    実際のビジネスで活用するデータやデジタル技術に関する知識。
  • ・How(データ・技術の利活用)
    実際のビジネスでデータやデジタル技術を活用する際の方法や留意点に関する知識。
  • ・マインド・スタンス
    DXによって変化する社会に対して新しい価値を生み出す意識、姿勢、行動。

DX推進スキル標準

DX推進スキル標準とは、DXを推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示したものです。デジタル技術を活用する企業を対象とし、そのなかでも専門性を持ち、DXを推進する人材が対象となります。

企業がDX推進人材を十分に確保できない理由として、自社のDX戦略を明確に描くことや、どのような知識やスキルを持った人材が必要であるかを特定するのが難しい点などが挙げられます。DX推進スキル標準を用いることで、自社にどのようなDX人材が必要なのかがわかり、研修の内容の見直しや、人材育成で学習させたい内容を自社に合わせて適切に選ぶことができるようになります。

経済産業省は企業のDX推進のために必要な人材を5つのタイプに分類したものを策定しています。

タイプ 定義
ビジネスアーキテクト
DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(目的)を設定したうえで、関係者との調整もおこない、関係者間の協働関係の構築を主導しながら、目的の実現に向けたプロセスを推進する人材。
デザイナー
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスの在り方をデザインする人材。
データサイエンティスト
DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの創出に向けて、データを収集・解析するための仕組みを設計し、実装・運用を担う人材。
ソフトウェアエンジニア
DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材。
サイバーセキュリティ
業務プロセスを支えるデジタル環境において、サイバーセキュリティリスクの影響を抑えるための対策を担う人材。

 

デジタルスキル標準を活用する方法

会議をする様子
デジタルスキル標準を活用することでDX戦略の設計や人材育成、全社的なDXの自分事化を後押しできるようになります。以下は活用の全体の流れのイメージです。

経営ビジョンとビジネスモデルの設計

はじめにデジタル技術による変化を踏まえ、企業の経営ビジョンとビジネスモデルを設計します。DXリテラシー標準、DXスキル標準にもとづき、戦略や必要な体制・人材育成の方針を立てましょう。
なお、DX推進は一度の取り組みで完了するものではありません。市場の変化に柔軟に対応し、継続的な見直しと改善が重要なことを設計段階から念頭に置いておきましょう。

DXの取り組みを社内へ発信する

経営ビジョン・ビジネスモデルの設計と並行して、「自社はなぜ、DX推進に取り組むのか」について社内に発信・浸透させる動きも必要です。DXに取り組む理由や意義を社内に発信し、各部門の社員が理解することで、DXに対する共通認識が生まれ、具体的な施策を進めるうえで協力を仰ぎやすくなります

DX人材の要件を明確にする

自社のDXを推進するために、どのような知識やスキルを持った人材が必要か、人材要件の明確化をおこないます。自社の人材の状況を確認し、DXスキル標準を参考に必要な知識やスキルを持つ人材を特定し、必要な人材を確保します。

なお、DX推進スキル標準に示されている役割すべてを一度に揃える必要はありません。企業の事業規模やDXの推進度合に応じて、一部の役割から始めて、段階的に無理なく必要な人材を揃えていくことが推奨されます。

育成・採用施策と人事制度の見直し

全社的なスキルアップと、DXを推進する人材の確保のために、適切な育成・採用施策や人事制度の見直しをおこないます。DXリテラシーの重要性を経営層から発信し、全社的な育成施策を実施して、全社員のDXへの理解と関心を高めるといった底上げをおこなう必要があります。

ただし、研修をはじめとしたインプットだけでは、実業務でスキルが発揮されない懸念があるため、「実務に紐づける」「実業務で実際に経験をしてスキルの定着を図る」ことに取り組む必要があります。また、大きな変化に対して反対意見が一定数出てくることが予想されるため、そのような社員へのリスキリングの浸透なども重要です。

デジタルスキル標準を参考にDX戦略と人材育成を検討しよう

社員で手を重ねる様子
デジタルスキル標準は、職場や社会で必要とされるデジタル技術や知識の基準を示したものであり、DX推進にも関連しています。DXリテラシー標準とDX推進スキル標準の2つをもとに、DX推進のための自社に合った育成プログラムを作成し、全社員のDX理解を深め、スキルを現場で活かすことが期待されます。

また、DX推進は継続的な見直しと改善が必要であり、現場のニーズに合わせた柔軟な取り組みが求められます。デジタルスキル標準を参考にし、自社のDX戦略や人材育成計画を検討してみましょう。

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