マネジメントとは?意味や業務内容・役割を解説
マネジメントは、管理職にとって重要な業務の一つです。とはいえ、管理職になってすぐに適切なマネジメントで成果を上げることは難しいでしょう。
多様な人材が活躍する近年、管理職にはこれまで以上に多くの役割が求められています。本記事では、管理職が担うマネジメント業務における具体的な内容や、マネジメントの種類について解説します。
マネジメントとは
「マネジメント(management)」とは、経営や管理などを意味する言葉で、ビジネスシーンにおいては「経営管理」や「組織運営」などの意味で用いられています。
「マネジメント」の概念は、アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが1973年に刊行した著書『マネジメント』の中で言及したことをきっかけに世界的に注目を集めるようになりました。日本のビジネスシーンでは、管理職層が部下を指導・育成すること、および業務を管理することを指す言葉として一般的に使用されています。
つまりマネジメントは、「チームの目標を達成するために経営資源を有効活用して、ステークホルダーから期待されている成果を上げること」や「メンバー一人ひとりの個性や能力を把握して、動機付けをおこない、仕事を通して部下を成長させること」と言い換えられます。
マネジメントとリーダーシップの違い
マネジメントと混同されやすいものに、リーダーシップがあります。リーダーシップとは、組織を維持しながら、定めた目標にメンバーを導きながら向かっていくことを指す言葉です。
日本語では「指導力」や「統率力」とも表現されるリーダーシップは、部下を指導・育成し、業務を管理するマネジメントとは異なります。
マネジメントの5つの役割と業務内容
管理職が担うマネジメント業務は組織によって多種多様ですが、基本的には次の5つがあります。
- ・組織の理念や目標の浸透
- ・業務マネジメント
- ・リスクマネジメント
- ・チームの活性化
- ・部下の育成と評価
これら5つの業務内容について、詳しく見ていきましょう。
組織の理念や目標の浸透
チームとして成果を出すために、管理職は組織理念や目標をチームに浸透させるという役割を担います。これらは、組織が成果を上げるための考えとして、経営層が策定するものです。組織理念や目標は組織活動の主目的であるため、組織全体で統一感を持つことが重要です。管理職は、これらを現場に浸透させ、チームとしての成果につなげていくよう努めます。
そのために、管理職は組織活動の全体像を把握したうえで、組織の考えを理解し、わかりやすいメッセージで伝えることを心がけるようにしましょう。また、チームや個人の目標を設定するときには、組織としての理念や目標に沿うものにすることが大切です。
業務マネジメント
管理職は、チーム全体の業務マネジメントを通して組織の目標達成を後押しするという重要な役割も担っています。
業務マネジメントの方法には、主に「PDCAサイクルの実行」と「進捗管理」の2つがあります。PDCAサイクルの実行においては、目標を実現するために必要なことを計画立案(Plan)、実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)の一連の活動を継続できるよう管理します。
進捗管理においては、メンバーのタスク計画から進行状況までを把握して、定期的に目標との差異を確認します。進捗管理は、PDCAサイクルの「計画立案(Plan)」と「実行(Do)」を管理する手法としても重要です。
リスクマネジメント
不確実で予測困難なVUCA時代、組織は常にさまざまなリスクにさらされています。ここでいうリスクとは、「組織目標の達成を妨げる物事が発生する可能性」のことです。
たとえば、感染症による費用・利益リスクや火災などにより物質的な資産が被害を受ける財産リスク、製品の欠陥や業務上の過失によって発生する賠償責任リスクなどが考えられます。
管理職は、現場の責任者として組織におけるリスクを予測して、損失の回避・軽減のために適切な対策を講じることが求められます。また、リスクマネジメントの一環として、現場に対応策を浸透させるようにしましょう。
管理職としてリスクマネジメントで意識したいポイントには、次の2つがあります。
- 状況に応じて経営層への提言をおこなうなど、組織的な対応を心がける
- 有事の際を想定して、日ごろから指揮系統を意識しておく
リスクマネジメントを属人化させないよう、そしてどのようなリスクにも対応できるよう、自身やチームだけでなく、ときに経営層も含め組織全体でリスク対応をおこなうよう意識しましょう。また、日ごろから有事の際を想定して、他部門も含めた指揮系統を意識しておくことも大切です。指揮系統の明確化により、緊急時にも迅速かつ的確な指示が可能になります。
チームの活性化
管理職はチームの士気にも気を配り、コミュニケーションを停滞させず、促進することが求められます。その理由として、活性化されているチームにはポジティブな影響が生み出されることが挙げられます。
具体的には、メンバーに協力意識や帰属意識が生まれるだけでなく、離職防止も期待できます。管理職は、各種施策を実施して、チームの活性化を図りましょう。チームが活性化している状態とは、次のような状態を指します。
- ・メンバー同士のコミュニケーションが闊達になっている
- ・組織の経営理念やビジョンに共感している
- ・目標達成に対する達成意欲を持っている
- ・目標達成に向けて主体的に動いている
- ・メンバー全員が相互支援の意識を持っている
チームメンバーがこのような状態になるためには、心理的安全性を高めることが重要です。心理的安全性が高い職場には、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすいという特徴があります。加えて、心理的安全性が高い組織はポジティブな議論が生まれやすくなり、自発的に発展していくようになります。
このような組織では仕事へのやりがいや組織への愛着を持つメンバーが増加しやすいことから、人材の定着率向上が期待できます。
管理職は、チームビルディングを目的とするイベントを開催したり、ビジネスチャットツールに雑談スペースを設けたりするなど、より気軽な方法でコミュニケーションを図れる施策の実施を検討してみましょう。業務効率化やモチベーション向上のために、各メンバーの業務効率化への取り組み方法を共有しあう勉強会なども考えられます。
部下の育成と評価
部下の成長は、組織の成長に直結する重要な要素です。管理職は部下を適切に育成できるよう、育成手法を理解して次のように接していく必要があります。
- モチベーションに焦点を当てて、やる気を引き出すために「動機付け」をおこなう
- 目標や成長の方向性を示し、目標達成や成長に必要な役割・仕事を与える
- 役割や仕事を与えたあとは、定期的に確認・サポートし、目標達成や成長の支援をおこなう
部下の成長をサポートする際には、面談時などに期待していることを直接伝えたり、これまでの行動や実績を評価に反映させたりすることが大切です。
これにより、ピグマリオン効果と自己効力感の向上が期待できます。ピグマリオン効果とは、他者からの期待が成果につながる現象のことです。部下に「期待している」「信頼している」などの声かけをおこなうことで、部下は期待に応えようと努めます。
自己効力感とは、「自分がある状況において、うまく行動できるかという可能性」のことを指す心理学の用語です。自己効力感が高まると、「自分ならできる」と考え、前向きで活動的になる傾向にあります。このような状態にあると、よい結果が生まれやすくなります。
ピグマリオン効果と自己効力感の向上で正のスパイラルを生み出すことで、部下はさらに成長していくでしょう。
マネジメントに必要なスキル
マネジメントには、いくつかのスキルが求められます。ここでは、マネジメントに必要なスキルの代表例として、「意思決定力」「コミュニケーションスキル」「管理能力」「分析スキル」の4つをご紹介します。
意思決定力
意思決定力は、重要な場面でも冷静かつ適切な判断と意思決定をおこなうためのスキルです。管理職は、組織の目標に沿った明確なビジョンをもとに、しっかりとした判断の軸を持ちましょう。
コミュニケーションスキル
メンバーの管理においては、高いコミュニケーションスキルも求められます。メンバーの個性や能力を把握しながら、相互理解を深められるよう双方向のコミュニケーションを意識することが大切です。
管理能力
マネジメントが持つ役割をまっとうするには、管理能力も欠かせません。業務状況を把握して適切に管理するとともに、目標に対する効果測定をおこない、メンバーにフィードバックを実施し、目標達成を目指します。
分析スキル
経験や勘といった定性的なデータのみに頼らず、定量的なデータを分析し、戦略立案をおこなうスキルも必要です。分析結果をもとに、目標達成への課題はなにか、どのように改善するのかを提示します。
マネジメントの種類
マネジメントの種類には、大きく分けて「階層別マネジメント」と「業務別マネジメント」の2つがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
職位に応じて求められる「階層別マネジメント」
階層別マネジメントとは、企業や組織の職位に応じて求められるマネジメントです。階層には「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3つがあり、それぞれに求められる役割が異なります。
代表取締役などの経営層や幹部クラスに求められる。経営方針の決定や戦略の策定など、業績向上のための方策を検討し、その結果に対して責任を持つ | |
部門長や課長などの中間管理職に求められる。トップマネジメント層が決定した方針や戦略にもとづき、具体的な数値目標を決定する。担当する部門や支社・支店などの業績に対して責任を持つ | |
係長や主任など、現場での業務と指揮を担当する層に求められる。指示や方針に従い実行する能力、現場での実務能力、組織の方針を現場の業務に落とし込む能力が必要 |
VUCAの時代においては、組織がよりフラットな構造になり、意思決定にもスピードを求められる場面が多くなります。自身が該当する階層よりも上の階層に求められている高次のマネジメントを理解し行動できるよう、視座を高めていくことが重要です。
業務内容に応じて求められる「業務別マネジメント」
業務別マネジメントとは、業務内容に応じておこなうマネジメントのことです。業務別マネジメントには、主に「組織運営」「人材管理」「メンタルヘルス」の3つがあります。
組織運営に関するマネジメント
部下育成やチームのコミュニケーションの活性化をおこなう | |
プロジェクトの進捗管理をおこなう | |
社内のノウハウや知見を管理し共有する |
これら組織運営に関するマネジメントが適切におこなわれることで、生産性向上や円滑な業務の遂行、製品・サービスの品質の担保などが期待できます。
人材管理に関するマネジメント
メンバーのスキルや特性に合わせた配置・育成をおこなう | |
メンバーのモチベーション維持を図る | |
メンバーのパフォーマンス向上を図る |
これら人材管理に関するマネジメントにより、適材適所の人材配置やモチベーション維持による作業効率・生産性の向上が見込めます。
メンタルヘルスに関するマネジメント
心の健康のサポートをおこない、精神的な負担を和らげる | |
ストレスの緩和とコントロールを図る |
ストレスや不安などメンタルヘルスへの負担は、作業効率や人間関係に負の影響をおよぼす可能性があるものです。メンタルヘルスに関するマネジメントにより、離職や休職の防止も図れます。
学びと実践を積み重ね適切なマネジメントを
不確実で予測困難なVUCAの時代、マネジメントを担う管理職の重要性はますます高まっています。
管理職は、自身の職位などから求められる役割を理解し、適切なマネジメントを実施できるよう企業を取り巻く情勢やリスクの変化や最新のマネジメント手法などの情報を集めながら、学びと実践を重ねていく必要があるでしょう。
また、これからのマネジメントにおいては高い視座を持つ意識が重要です。情報収集と学びを継続し、よりよいマネジメントにつなげていきましょう。