カッツモデルとは?ビジネスに必要な3つのスキルと人材育成に活用する方法を解説
カッツモデルは、人材育成や人事評価に用いられる理論です。組織を3つの階層と3つのスキルに分け、階層に応じた必要なスキルやその割合を導き出すフレームワークとして活用されています。
この記事では、カッツモデルを形成する3つの階層と3つのスキル、カッツモデルを人材育成に活用する方法を解説します。
カッツモデルとは?
カッツモデルとは、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱した理論です。職位による3つの階層と3つの能力で形成されており、役職に応じて必要な能力の割合が異なります。
3つの階層は、経営者・幹部クラスを指す「トップマネジメント」、中間管理職クラスの「ミドルマネジメント」、主任・リーダークラスの「ロワーマネジメント」に分けて考えられます。
必要な3つの能力のうち「ヒューマンスキル」はどの職位においても一律に必要とされますが、「テクニカルスキル」「コンセプチュアルスキル」は、職位の高さにより必要とされる割合が異なります。
ロワーマネジメントでは実務的な能力であるテクニカルスキルの割合が最多です。一方、経営者・幹部クラスを指すトップマネジメントでは、総合的な判断能力や先を見通す力であるコンセプチュアルスキルの割合が大きくなります。
それぞれの階層と必要とされるスキルについて詳しく解説します。
カッツモデルを形成する3つの階層
まず、カッツモデルを形成する3つの階層について説明しましょう。
トップマネジメント(経営者・幹部クラス)
トップマネジメント層には、経営陣(CEOや取締役、執行役員など)が挙げられます。
経営方針の決定や戦略の策定など、企業全体の業績を上げるための方策を検討し、その結果に対して責任をもつ立場でもあります。現場での作業や指示に直接関わることはあまりありません。
ミドルマネジメント(中間管理職クラス)
ミドルマネジメント層には、部門長や課長などの中間管理職が含まれます。
主に担当する部門や支社、支店などの業績に対して責任をもつ立場です。トップマネジメント層が決定した経営方針や戦略にもとづいて方針を決定し、部門や支社ごとの具体的な数値目標などを決定します。
部下に組織の方針や指針をかみ砕いて伝えるとともに、モチベーションの維持や向上のために働きかけたり、現場の意見を経営陣に伝えたりする役割も担っています。
ロワーマネジメント(主任・リーダークラス)
ロワーマネジメント層は係長・主任・グループリーダーなど、現場で業務にあたり、指揮を執る立場です。指示や方針に忠実に従い、実行できる能力が必要とされています。
また、一般社員であっても、プロジェクトリーダーなどの社員をまとめる立場になるとロワーマネジメント層に含まれます。実務的な能力のほかに、社の方針を理解して一般社員の業務に落とし込む能力も必要です。
カッツモデルを形成する3つのスキル
次に、カッツモデルで3つに分類されるスキルについて説明しましょう。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務知識や関連する技術など、仕事の方向性を決める力を指します。具体的には、顧客対応スキル・問題解決力・パソコン操作スキル・プレゼンテーションスキル・業界や職種特有の資格など、業務推進に必要な能力です。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、ビジネスマナーやコミュニケーション能力など、その人が身につけている仕事のベースとなる力のことです。人間関係の円滑化や関係構築に必要なスキルで、階層や役職によらずすべての人に求められています。他に、傾聴力・リーダーシップなどが挙げられます。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、複雑な物事の大枠を理解し、本質をとらえる力のことです。組織や部門を率いていく立場にある経営陣や管理職は、組織全体のみならず、業界や世界情勢などの政治的・社会的・経済的な状況を正確にとらえ、客観的に判断する必要があります。
柔軟な発想や探求心、知的好奇心といった性質は組織を発展させるために欠かせません。そのためには、概念化能力・洞察力・俯瞰力などが役立ちます。
また、筋道を立てて考える論理的思考(ロジカルシンキング)、意識の偏りを見つけるのに役立つ批判的思考(クリティカルシンキング)も時には必要です。個別の事象から意味や法則を見いだすことにより本質をとらえ、固定概念にとらわれない思考により課題の解決策や効果的なアプローチを導きだすことができます。
こうしたスキルを身につけることで、古い慣習や習慣にとらわれず生産性の向上につなげたり、新しい分野で活躍したりするなど組織の成長につなげることができるでしょう。
カッツモデルを人材育成に活用する方法
カッツモデルを人材育成に取り入れることにより、組織に必要な人材の洗いだしやスキルの明確化が期待できます。また、足りない能力を補うための研修や人材配置の見直し、社員のスキルアップや動機づけにも役立つでしょう。
どのようにしてカッツモデルを人材育成に活用するのか、具体的にお伝えします。
ステップ1:各階層において求める能力をリストアップする
まず、各企業の業務内容などにもとづいて各階層で求められる能力をリストアップしましょう。
それぞれの職位に応じて必要なスキルをできる限り具体的に挙げ、実務面・精神面・思考判断能力面などについて細かく分析します。それぞれを3つのスキルに分類し、現状の能力を強化させるのか、ゼロからスキルを身につけていく必要があるのかまで細分化して検討することが重要です。
どの企業にも当てはまるような一般的な内容ではなく、自社ですぐに役立てられるよう具体的なスキルに落とし込んで考えましょう。
ステップ2:役職・スキルに応じた研修を実施する
ステップ1で導きだした求める能力をもとに、それぞれのスキルを身につける、または強化するための研修を実施しましょう。
たとえば、ロワーマネジメント層においては、業務推進に寄与するスキルを中心に研修を実施するとよいでしょう。顧客や電話応対の質を向上するためのスキルや現場責任者としてのスキルに関する研修、プレゼンテーションスキルや営業力の強化を目指す研修、商品知識や職務に関連する資格についてなど実践的な研修が有効です。
ミドルマネジメント層に対しては、リーダーシップやコミュニケーションスキルを向上させるための研修、ハラスメントを防止するための研修などが効果的と考えられます。実務的な事柄よりも思考力や課題解決に結びつく考え方などを強化する必要があるでしょう。また、スキル不足を感じる場合の多い語学や財務・会計知識に関する研修も有益といえます。
トップマネジメント層には、リスクマネジメント、コンプライアンス順守に関わる研修などによって経営力や意識の向上を図りましょう。適切に状況を見極めたり、新しい事業に乗りだしたりする際にもコンセプチュアルスキルが大いに役立ちます。思考力や発想力を強化するために、時には社外アドバイザーや他業界の専門家の意見に耳を傾けることも大切です。
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まとめ
カッツモデルは人材育成や人事評価に活用されており、組織内の職位による3つの階層と、それぞれの役職において必要とされる3つのスキルの割合を導きだすものです。適切に分析し活用することで、必要とされるスキルや人材の明確化に役立てられます。
カッツモデルへの理解を深め、自社に必要なスキルを抽出し、人材育成に活用しましょう。