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学校の教室で飼われることになったハンフリーは、人間の言葉がわかる。だから、子どもたちや先生の悩みに気づける。ハンフリーは、みんなの力になろうとする優しいハムスター。だから、知恵をしぼって奮闘していく!
週末に子どもたちや先生の家に順番に行って世話をされる中でいろいろな家庭の事情が見えてくるところが面白い。それぞれの家庭が抱える悩みをハンフリーがほぐしていくのはもっと面白い。
とりわけ好きなシーンは、教室で夜を過ごすハンフリーのもとに清掃員アルドが訪ねてくる場面。何度もあるんだけど、寂しい夜に光が差すような安心感や、アルドの人生が変わっていく期待感があって好き。何より2人の友情の深まりが感じられて素敵。
ケージの中からは鍵が開けられるっていう設定がポイントで、そこからワクワクする展開がいつも始まる。気づかれないうちにケージの中に戻るのもいつもドキドキする。
学校でも人気の本で、中学年の女の子を中心によく読まれている。うんうん、確かに面白い。きっと読みながら、登場人物と自分やクラスの子を重ねながら楽しんでいるんだろうな。学校生活が題材だから自分を重ねやすい。
「チャント聞イテ・アート」「手ヲアゲテ・ハイジ」などなど、子どもたちが先生にいつも言われるセリフが愛称になってるところとかとっても楽しくて、読んでると学校の子どもの顔が浮かんでくる。反対に、「声ヲ出シテ・サヤ」の姿には、励まされたりしている子もいるかもしれない。
子どもだけじゃなく大人もいろんなことを悩みながら生きているんだって感じられるところもいい。ハムスター目線だから、そういうことも暗くなりすぎずにからっと描かれていて、人は変われるということもしっかり伝わってくる。明るくて前向きな作品で、子どもたちに勧めたいと思った。
「犬には背中を見せちゃいけないってことも、たまにはテレビを消すのも悪くないってことも、学んだよ。
子どもたちや先生、校長先生にだって、なやみがあることもね。だれかがほんの少しはげますだけで、勇気を出せることもあるんだ。
いちばん大切なのは、たった一ぴきの小さなハムスターでも、だれかの役に立てるってこと。」(P211)