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失われた命との対話
2024/11/12 08:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おじ屋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル文学賞受賞の報を聞いて、早速ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」を読んでみた。
モノトーンの写真と、散文詩(のような小説)に囲まれた、生と死の境界を描いた
白い世界がそこで展開する。
その美しい詩的な文章は漠然としたイメージを伝えるだけで、巻末にある「作者の言葉」を読むまで、正直言ってサッパリ分からなかった。
どうも、生まれて直ぐに亡くなってしまった、自分の姉と精神的な交流が描かれているらしいことは理解できる。生と死の狭間にある限りなく白いその場所は、
巻末の文章を読むことで、彼女が訪れたワルシャワからホロコーストに繋がって、その輪郭がはっきりと私の中で表れた。
去年私が見た映画「関心領域」と重なる世界がそこにあった。
魂を介しての死者との交流。
「白い」のは、死者たちの焼かれた後に残る骨や灰、そしてその煙、無垢のまま死んでいく魂の色。
生まれてまもなく死んだ姉、意味もなく殺される多くの市井の人々、ガザを空爆で失ったパレスチナの人たち、独裁者の一言で命を奪われるウクライナの人々、etc.
言葉を理不尽な死によって奪われた人達との魂の交流を、文学という世界を通して描いているのだと理解した。
あまりにも悲しくて美しい白い世界だった。
そこにいたかもしれない私、私だったかも知れない彼女
2024/10/18 20:15
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「白い」ものが、美しく、鋭利で、澄んだ、はかなげな言葉で、「痛み」が詩のように連ねられていく。散文詩を集めたように見えるが、3章から成る長編小説だということに、途中で気づく。文字で描かれた情景が映像として脳裏に浮かぶのだが、読後に心や頭を占めているものを言語化するのは、とても難しい。
白いものについて書く「私」が第1章。断片的な言葉の連なりの中で、25歳だった母親が、へき地で誰の助けも得ることができずに1人で自宅で出産し、生まれたばかりの女の赤ちゃん(私の姉)を失った事実が明かされる。
白い産着はそのまま荼毘に付すための白装束に。2章では、この世に生まれ、生きていたはずの彼女の魂が、本来なら生まれなかったはずの私の身体で旅をする。死者の声に耳を澄ませ、そこにいたはずの人を思う。
読んでいると、さまざまな事象が頭に浮かぶ。白く名付けようもない何か。
想像力とも違う、頭と心が時空を旅するような。説明できないのにインパクトがある。
ハン・ガン作品の中でもとりわけ「余白」の多い作品だ。
またいつか
2024/04/04 12:21
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投稿者:ダタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇跡的傑作という言葉に惹かれ
手に取りましたが、
期待値を上げ過ぎたせいか、
少々肩透かし感が否めず、
入り方を間違えたようです。
もっとフラットなテンションで読めば
感じ方は違ったと思います。
他の方の感想にもありますが、
慌ただしい時に読むと、
作品の静謐さと上手くシンクロ出来ず、
勿体無い感じになってしまいます。
静けさに満ちた雰囲気は好きなので、
またいつか読み直したい。
散文詩集
2023/06/26 13:59
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
「白い」ということから連想する様々な事象、事物を次々に語っていく散文詩というべきもの。翻訳者の言葉が機縁になってワルシャワに滞在した著者が語っていくところは時系列を曖昧にした小説のように語るところもあり、一筋縄では行かない。ゼーバルトの『アウステルリッツ』に似ている印象も持ったが、ほかにそんな感想はないだろうか。