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令和6年(2024)のGWの大掃除で発掘された本で、記録によれば2年前の年末に読み終わった本です。この本の著者である高橋氏には今までも多くの著作を読ませてもらってきていますが、私の興味のある「地政学」に絞って本を書いてくれたので、当時本屋で見つけて嬉しくなってすぐに買って読んだのを覚えています。
その後に時間が取れずにレビューを書くのが今になってしまいましたが。今年の誕生日で社会人生活も一区切りをつけて、少し時間を確保できるようになりました。読み放しだった本の要点を振り返って、このように纏めて、さらには興味のある分野についてさらに読書やできれば講座に参加してみたいと思っています。
以下は気になったポイントです。
・地政学=地理の政治学とは、地理的な条件が一国の政治や軍事、経済に与える影響を考えることである。一言で定義するなら、世界で起こってきた戦争の歴史を知ること、である(p18)
・人工換算後の戦争による死者の絶対数は、一位が中国唐(8世紀)に起きた「安子の乱」で、実際の死者数3600万人が、換算後には「4億2900万人」となる。絶対数の一位は、第二次世界大戦(5500万人)(p34)
・イギリスは、清の人々をアヘン中毒にすることで、清に流出していた銀を、インドを介して「回収」しようとした。アヘンの輸入により、清からインドへアヘンの代金(銀)が渡り、インドがイギリスから綿製品を買うことで、イギリスに銀が渡るようにした(p54)
・アヘン戦争の後、フランスは清の属国・ベトナムへ野心を露わにする。18世紀後半の、カルナータカ戦争でイギリスに敗れ、フランス領インドから撤退することになったので、インドシナに向けた(p58)
・日清戦争の後、フランス・ドイツ・ロシアが、日清間で結ばれた下関条約に介入し、遼東半島を清に変換するように日本へ要求した、返還されたはずの遼東半島の旅順・大連は、結局ロシアが咀嚼することになる(p65)加えて、三国干渉に参加した、ドイツ・フランス、さらにはイギリスまでもが、航海周辺および清の各地を租借した(p66)
・国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。そこを埋め立てて「島」のようにしても国際法上は領土にならない。(p88)
・中国に工場を持っていた企業が撤退する、レアメタルに代表される重要物資の中国依存を下げるなど、民主主義国家の間で政策的に中国離れが進められつつある。その典型例は、IPEF(インド太平洋経済枠組み)QUAD(日米豪印戦略対話)の経済版である(p95)
・モンゴル人のキエフ公国の制服とともに、黒海・カスピ海の沿岸を含む広大な土地に、モンゴル帝国の国家(ハンクにの一つ、キプチャク・ハン国が築かれた、のちにモスクワ大公国が独立するまでの2世紀半、東スラブ人はキプチャク・ハン国の支配を受ける、これを「タタールのくびき」という(p160)17世紀末、ロシアは東方ではシベリア経営を進める一方で、オスマン帝国の勢力圏だったアゾフへの遠征により、黒海へ繋がるアゾフ海の制海権を獲得、1700年に始まる北方戦争でロシアは負けて、アゾフをいったんオスマン帝国に返却するが、その後にスウェーデンに調理して、バルト海を制する、スウェーデンに代わりロシアが北方の覇者となった(p107)
・第一次世界大戦にて、ソビエト政権は単独でドイツと、ブレスト=リトフスク条約でこうわし、第一次世界大戦から離脱。フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ウクライナほか、オスマン帝国との国境に接する地域の権利も放棄した(p141)ドイツの敗戦により、この条約は破棄されることになるが、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、フィンランド、ウクライナの独立の承認は継続された(p141)
・ウクライナはかつて核保有国だったが、日本の非核三原則のように核を廃棄した、その結果、ロシアから侵攻を受けたのも事実である。もしウクライナが核を保有していれば、ロシアもそう簡単に侵攻できなかっただろう。この意味で、日本の非核三原則や憲法9条があれば国の安全が保たれるという日本の平和主義は、リアルな国際社会では全く無力であることがわかってしまった(p168)
・第一次世界大戦当時、ロシアはバルカン半島で、バン・ゲルマン主義を掲げる、オーストリア=ハンガリー帝国、それを支援するドイツと対立していた。一方、ドイツ陣営には、同じゲルマン民族である、オーストリア=ハンガリー帝国、第二次バルカン戦争でセルビアやギリシアに敗北した、ブルガリアがついた。こうして、イギリス・フランス・ロシアを主とした連合国と、ドイツ。オーストリア=ハンガリー帝国を主とした同盟国が形成された(p131)
・ウクライナがロシアに蹂躙されるのを目の当たりにして、フィンランドもスウェーデンも、NATO加盟こそが最強の祖国防衛策であることに気づいてしまった。NATOは集団的自衛権の塊である、そこに両国が入ったのは、「戦争をしたくないから」に他ならない、集団的自衛権を認めた方が、戦争確率がさがる(p204)
・戦争リスクを下げるには、1)独立国としてふさわしい軍備をして牽制効果を高める、2)同盟関係を結ぶ、3)民主主義国同士で自由貿易を行う関係を築く、4)国連に加盟する(p270)
2022年12月22日読破
2024年6月7日作成
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戦争を分析すると国の思惑が見える。視野を広げて日本を見なければいけない。国の性質、地理的関係性を理解しなければ、議論を始めることができない。論点は逸れるが、日本人の国に対する帰属意識は低下しているように感じることがある。これからの日本がどうすればいいのか国政の議論を深めるためにも国の大切さをもう一度見つめ直すところから始めようと思った。
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思っていたほどの学びはなかったかな、、
集団的自衛権と集団安全保障の違いは興味深かった。(自己防衛と警察の違いと同じ)
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地政学を「戦争の歴史」と定義し、具体的な事例を挙げながら各地域のこれまでとこれからを論じています。
やや筆者の立場への偏りはありますが、官僚として外交の最前線を見てきた方の言葉には説得力を感じました。
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地政学と名の付く本を初めて読んだ。地理的要因を考慮した政治・歴史学。一文ごとにちゃんと文脈的つながりや理由があり、ストーリーとして納得感が高く分かりやすかった。面白い、が、基本的に戦争の歴史なので、世界の緊張状態が伝わってきて、気が滅入る部分もあった。。
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学校の授業で取り上げたら良いのにと思います。
どうしても日本国内にいると、視野が狭くなってしまう。マスのゴミがしょーもない報道しかしないし、、、(だからゴミ)
それぞれ国々の立場があって当然なのに、どうしても善or悪で物事を考えてしまいがちです。
『一般教養』としての地政学、とても勉強になりました
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中国、ロシア、ヨーロッパ、アメリカの4つの地域に焦点を当て、地理的な要因に触れつつ、戦争の近現代史について流れを解説した本。
世界史を通史で学んだことない私には学びが多かった。特に、民主主義国家どうしでは戦争をする可能性が低いという「民主的平和論」は初めて知ったので印象に残った。また、近隣国との防衛費の差が大きいほど戦争が起こりやすくなるというのも、国際政治学では当たり前の話とのこと。中国やロシア、北朝鮮など、隣国には民主度の低い国が多く存在するため、日本は戦争抑止に関心を持って注意する必要があるという。
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近世以降の、主要各国の紛争や戦争の歴史を説明した本であり一般的な地政学とはやや異なる。社会主義や独裁国家は戦争をする事が多く、民主主義国家同士の戦争は稀である。と言う部分はピンカーも言っているが、感覚的に合っていると思う。戦力の均衡が戦争抑止効果を持つとなると世界各国の軍事費の増大は避けられないのではなかろうか。