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良書。1990年代以降のDRAM半導体メーカーの凋落、今なお日系メーカーの強い分野とその背景の分析、総じて一番思うことはイノベーションとは技術と市場の結合であって、市場と結合しない独りよがりの技術は淘汰されること。これは多くの人が教訓として心がけ、明日の産業衰退の種にもう2度としないよう決意することだ。
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日本企業のDRAM全盛期時代に日立製作所に入社、その後エルピーダメモリに出向、日本の半導体産業に警鐘を鳴らし続けている湯之上隆氏の著書。
一言:サムスン強え(いろんな意味で)。ヤクザかよ…。
おもしろかった。以下学び↓
・日本の「イノベーション」=「技術革新」という認識が、イノベーションのジレンマに陥ることにさらに繋がる。
・サムスンは「売れるものを作る」。日本企業は「作ったものを売る」。
・インテルはイノベーションのジレンマに陥り、iPhoneの市場拡大を見誤り、iPhone用のプロセッサへの投資を断った。
サムスンは模倣で伸びた企業。NECからDRAM、iPhoneからスマホのノウハウ。そこにはグレーな点もあるが…。
はじめて知ったんだけど、サムスンとAppleは訴訟沙汰になってたのね。
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少し前にシャープが経営破綻したのは何故かということを調べるために、関連の本を数冊読んだ。シャープの場合には、液晶の事業経営の失敗が会社の破綻に結びついた。本書で取り上げられているのは、同じく電機業界であるが、主に半導体である。
かつて、日本の電機メーカーは、DRAMの分野で世界シェアの80%を占めていた。メモリーをやっていた会社も、東芝・富士通・NEC・日立・三菱電機と多く、日本の半導体事業はこのまま高収益が続くと考えられていた。
ところが、今や日本の電機メーカーのDRAMは壊滅状態であり、その後に参入した、別の種類の半導体、SOCでも日本メーカーは存在感を示すことが出来なかった。
日本の半導体でDRAM分野で負けたのは、DRAMの主な用途がメインフレームコンピューターからPCに変った時である。メインフレームとPCでは、DRAMに求められるものが異なる。メインフレームでは、性能であり、品質で、コストの優先順位は相対的に低い。ところが、PC用のメモリーはコストが最優先となる。日本のメーカーは、メインフレーム時代に製造していた、高品質・高性能、しかし、高コストのDRAMをつくり続け、負けていったのである。
DRAMから撤退した日本は、SOCという分野の半導体に進出した。これは、ASICと呼ばれる、アプリケーション・用途を特定したカスタムLSIであり、事業に必要なものは、マーケティングとシステム設計力であったが、ここでも、高品質・高性能の半導体づくりにこだわり、結果を出すことが出来なかった。
こうして考えると、シャープの液晶と同じように、結局は、マーケットの変化を事業に取り込むことが出来なかった、あるいは、もっとひどい言い方をすれば、市場を知らなかったことが敗戦の原因ではないかと思う。韓国のサムスンと、日本メーカーの違いを筆者は、「サムスンがマーケティングを何より大事にして、売れるものをつくるのに対して、日本メーカーはマーケティングを軽視して、つくったものを売る」と書いている。鋭い指摘であり、その通りではないかと思う。