プライムデーのセール対象には面白かったKindle本が結構ある。
そこで毎年の「〇〇年に読んで面白かった本」で紹介した中から抜き出してみた。
ブクマして満足したお前、今が買い時だからな。
プライムデー
今年もプライムデーがやってきた。
Amazonはいつもセールをやっているイメージがあるが、やはりプライムデーは特別だ。値引きレベルが通常のタイムセール祭りとは違う。もちろんKindle本の話である。
Kindle本もよくセールになるが、プライムデーで初めてセールとなる本も多い。しかもKindle本は場所をとらず、腐ることもない。あと少しでポイントアップキャンペーンを達成できるという人に、Kindle本は最適な選択肢と言えるだろう。
「2022年上半期に面白かった本」を書くついでに過去の記事を眺めていたところ、プライムデー対象の本がそれなりにあることに気がついた。そこで2018年からの「〇〇年に読んで面白かった本」の中から、抜き出して紹介する。
【目次】
2018年
2018年は5選中3つが対象。プライムデー率が最も高い年であった。
『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』
投資家ウォーレン・バフェットの伝記。一番面白いのが上巻だが、セール対象となっているのは上中下の合本版のみ。とはいえ上巻単体がKindle版で1,045円*1であるのに対し、合本版は1,485円*2でしかない。普通に合本版を買って良いのでは。
この伝記の素晴らしい点は、公認でありながら畜生エピソードをちゃんと記載していることである。特に俺が好きなのは、金儲けのために友人を池に沈めた話だ。これについては記事で取り上げたことがあるので、気になった人は読むといい。この手の話が色々とある。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』
インテルの元CEOであるアンドリュー・グローブが在職中に書いた本。タイトルからしてマネージャーに向けての本ではあるが、俺はむしろ製造業の新入社員にこそ読ませるべき本であると思う。それくらい分かりやすく、製造業の基本が書かれている。
もちろんマネージャー向けの内容、つまりマネージャーのやるべきことについても、かなりのページを割いている。彼はマネージャーの仕事は突き詰めると「部下のモチベーションを上げること」と「部下を教育すること」だと述べた。「管理」ではない。そんな内容なので、本しゃぶりではコーチングの記事を書くときに使ったことがある。
『われらはレギオン 1~3』
人工知能として蘇ったボブが無限増殖して宇宙探索を行うSF小説。自分自身のコピーが作られることは否定的に扱われがちな気がするが、このボブは違う。むしろ積極的に自分のコピーやバックアップを作り、それぞれがやりたいことを好き勝手に行う。
新しい星系へ行くと、舞台がガラリと変わるのも本作の特徴だ。コピーが同時並行で星系を攻略していくので、まるで複数の作品を同時に読んでいるような感じがする。原始時代から宇宙戦争まで同じ主人公が行うあたり、劇場版ドラえもんの何作かを一つにまとめたような作品と言えばいいだろうか。コピー&宇宙探索により、なんでもかんでも打ち込める便利な物語構造だ。
今年の4月に続編が発売されたが、とりあえずこの1~3で一旦完結している。続編の4上下はまだセール対象ではないので、とりあえずこの3冊を一気に買ってしまうのがおすすめ。
2019年
2019年は1冊のみ。
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』
一般向けな行動経済学の本の中でも定番中の定番で、とても面白い。なので超おすすめと言いたいが、以下の記事を読んでから判断してもらいたい。
端的に言えば、『予想どおりに不合理』の著者であるダン・アリエリーが共著者である論文について、データ捏造があった。捏造があったのは確かで、状況的にはアリエリーが一番怪しいが、彼はデータを提供した保険会社の手によるものだと述べている。本件について、英語版のWikipediaには大した続報は記載されていなかった。その代わりと言っては何だが、彼は適切な承認を得ずに被験者に電気ショックを行い、それが原因でMITを辞めたという話*3が追加されていた。何をやっているのだか。
『予想どおりに不合理』には様々な行動経済学の話が収録されており、データ捏造に関連する話は一部である。さすがに他のも全部データ捏造や再現性が無いなんてことはないと思う。故に今でも本書を読む価値はあると思うが、今から購入するのであれば、この件は知っておくべきだろう。
2020年
2020年からは3冊。読む本に早川書房が増えてきた。
『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』
ダン・アリエリーの件に触れた直後に行動経済学の本を紹介するのはちょっと気が引けるが、本書を紹介しないわけにはいかない。本しゃぶりでも『スイッチ!』*4とセットで繰り返し使っているし。
本書を読むと、時間だろうと金だろうと、いかに欠乏状態に陥らないことが大事であるかがよく分かる。一度欠乏状態になると、脳のリソースがそれに集中してしまうため、それによって新たな欠乏状態が生み出される悪循環となる。だから欠乏状態にならないよう、常に余裕を持って優雅たれと言われるのだ。
読んだからといって実行に移せるとは限らないが、やはり問題意識があるとないとでは違う。少なくとも俺は本書を読んでから、意識的にプライベートでもタスク管理するようになって、生活の質が上がったと感じている。
『セガvs.任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争』
セガ・オブ・アメリカ (SOA) の社長となったトム・カリンスキーが主人公。任天堂一強の米国ゲーム市場で、セガのシェアを伸ばそうと奮闘する。ハードもソフトも作っているのは日本であるから、彼が自由に行えるのはマーケティングだけ。にも関わらず、セガの市場シェアを3年で5%から55%にまで伸ばすから強い。
俺はあまりゲームをしないし、カリンスキーの時代のゲームに思い入れも無い。それでも本書が面白かったのは、読書体験が『ローマ人の物語』に近いからだろう。カリンスキーの奮闘を読んでいて俺が思い出したのは、ポエニ戦争の英雄ハンニバル・バルカであった。大国に攻め入り、大胆な奇襲を駆使して局地戦に勝利。破竹の勢いで瞬く間に勢力図を塗り替えていく。しかし本国との折り合いがつかず、最終的には足を引っ張られる形で敗北し、トップの座を降りる。流れがよく似ているのだ。
そんなわけで、メガドライブ世代の人におすすめなのは当然として、歴史小説好きな人も楽しめるタイプの本だと言えよう。
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
mp3の歴史を解説した本。mp3の開発から始まり、メインはインターネットでの海賊版音楽の興亡の解説となる。当初、技術力で勝っていたが政治で規格競争に破れたmp3は、違法コピーのデファクトスタンダードとなったことで、主流へと上り詰めた。
本書から学べることはいろいろあるが、やはり一番面白いのは違法コピー集団の内側を知れること。集団には規律があり、コピーから公開まで分業化されている。それなのに互いのことは知らず、名前どころか人種さえも知らない。匿名の集団でもここまで機能するのかと感心してしまう。
結局、彼らが違法コピーに邁進するのは「やりがい」を求めてのことだった。やりがいを感じていたからこそ、主人公の一人は、CD工場の管理職になっても盗みを辞めなかったのだ。そういう意味では、マネージャーは本書を読むと何か得られるものがあるかもしれない。マネージャーの仕事の一つは「部下のモチベーションを上げること」なので。
2021年
また早川書房が3連発。基本読書のせいだな。
『最悪の予感 パンデミックとの戦い』
『マネーボール』や『世紀の空売り』で有名なマイケル・ルイスが、いかにしてアメリカの新型コロナ対策が失敗したかを書いた本。どんなに優秀な人を集めて金をかけても、組織として機能しなければ意味がない。違法コピー集団は機能するのにアメリカ疾病予防管理センター (CDC) は機能しない皮肉。
読み終えると、本当に「どうすれば良かったのか」と考えてしまう。あるいは「組織はどうあるべきか」と。なぜなら、アメリカは情報不足で失敗したわけではないからだ。それどころか適切な対策も考案されていた。新型コロナよりはるか前の2006年に。効果のありそうな対策が考案され、然るべき人が提言までするのに、なぜか実行されない。その結果がパンデミックだ。なぜできなかったのか。
今回紹介した本の中でも、特に本書は続きを読みたい。ただ今すぐにではなく、何年か後にパンデミックが収束したところで。CDCの何が問題で、どうやって改善したのか。それを知りたい。まあ、パンデミックが収束するとは限らないし、CDCが改善される保証も無いのだが。
『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』
本書は親ガチャ大ハズレした女性がなんとか学校に入って、家族の呪縛から解き放たれる話である。読むと義務教育の大切さが良く分かる。こういうどうしようもない家族から子供が救われるには、ある程度の強制力が必要だ。
「親ガチャ大ハズレ」は過言ではない。特にヤバいのが父親で、陰謀論にハマった狂信的な現場ネコとでも言うべき人物だ。政府も医者も信じず、子どもたちを学校教育から遠ざける。幼い子供に廃品解体の仕事を手伝わせるが、安税衛生は一切無視のスピード重視。そのため子供に対しても父親自身に対しても、労災が次々と発生する。
母親は父親の言いなりでしかもスピリチュアルだし、兄はDV気質で著者に暴力を振るう。そんな家ならさっさと出ればいいのにと思うが、簡単に縁は切れない。著者は大きくなった後も学校が休みのたびに実家へ戻り、昔の生活に引き戻されようとする。どうも現実はスパッと解決編とはならないようだ。
本書もまた、読んだ後に「どうしたらいいのか」となるタイプだ。
『三体』
記事で取り上げたのは2と3だけど、これはセットなので。一通り読んだ上で、やはり俺は第二部が一番好き。第一部だけ読んで止まっている人は今回のセールをきっかけに第二部だけでも買って読め。わたしはあなたの破壁人です。
2022年
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
これだけはネタバレを踏む前に読め。俺が言えるのはそれだけだ。
終わりに
去年のプライムデーおすすめ本記事で紹介したのは全て早川書房であったが、今年は日経BPも入った。おそらくセールをするかは出版社しだいなので、毎年同じようなラインナップがセール対象になる。そのため、こうやって切り口を変えたほうが様々な本を紹介できて良い。
なお、対象とする年を直近5年としたのは、2017年以前に紹介した本は大半がプライムデー対象ではなかったためである。2014年、2015年、2017年はゼロであった*5。それが2020年から早川書房が増えたので、直近5年なら記事として成り立ったのだ。もう一度書いておくが、基本読書のせいだな。いつも参考にしています。
去年のプライムデーおすすめ本記事
こちらは本しゃぶりで繰り返し使ったことがある本を選んでいる。今年も全部プライムデーセール対象なので、参考になるはず。