10月初旬――

出勤前の旦那が
チハナに声を掛けていた。



聞き耳を立てていた私は
思わずほくそ笑んだ。

かつて一度も
旅行へ出掛ける生徒達の
「父兄見送り隊」に
参加した事のない旦那。


ここスコットランドの片田舎では
学校旅行へ出掛ける場合
生徒達は学校で集合してから
貸し切りバスで空港へと向かう。
両親(小さい子も含めた家族)は勿論
祖父母も見送りに来ると言う
その仰々しさには「戦地に赴く兵士」を
連想して止まない。
そんな一世一代の晴れ舞台の中
娘達の見送りは
いつも私一人であった(真顔


しかし、NASAとなれば
話は別なようで
多少なりと興味はあるらしい。

父親の「見送り隊」に勘付いたのか
いつもは飄々としているチハナが
ちょっと嬉しそうに
メールを送っていたのが
とても印象的だった。



NASA旅行3日前――

旦那のメモリー機能を
全く信用していない私は
彼に再確認してみる事にした。



すると
旦那の回答は――






おやすみ
ベイビー
永遠に・・・





この一連の会話を聞いていた
モモカは冷笑。

そしてチハナはと言うと

「前に日時と時間をメールした時
ダッダから『OK!分かった☆』
って返信が来たんだけど
あれは一体何だったんだろうね?」


と、眉根を寄せていた・・・