『ドラえもん』タタミのたんぼ/未来からの買い物 - 法華狼の日記

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他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』タタミのたんぼ/未来からの買い物

ひさしぶりに前後とも原作ありで、ダイジェストOPがEDへ移動。


「タタミのたんぼ」は、ひとつだけ残った餅を争って叱られたのび太ドラえもんが、秘密道具で餅を作ろうとする。しかし製造機はモチ米を入れなければ餅を作らないので……
寺本幸代コンテ演出で2006年にアニメ化した短編を、善総一郎コンテ演出で再アニメ化。餅ができる過程のディテールを細かくするアレンジは共通していて、どこをより詳細に描くかで違いが出ている。
田植えの適当さをのび太が注意される場面や、稲の花をていねいに見せるアニメオリジナル描写は共通。そこから今回は天候の急変を原作以上に細かく激しくして、サスペンス性を高めつつ現代的な印象を作りだしている。秘密道具に設定された苦労だけでなく、窓の外からスズメが食べにくるイレギュラーを足したりも。収穫した稲を逆さにして干す場面を入れて、達成感と余韻を作りだしたのも良いアレンジ。そうした農耕描写に尺を使ったかわり、米から餅を作るために脱穀や精米が必要という原作の説明が省かれている。
田植えで泥だらけのまま歩いて床が汚れていく様子を、デジタル技術で背景美術をていねいに変化させた場面など、映像面も緻密で良かった。多数のスズメやイナゴもちゃんと作画している。ただ、つきたてなのに餅の弾力や粘性が感じられない作画だったのだけは残念。


「未来からの買い物」は、のび太が自分や家族に欲しいものがたくさんあることを痛感していた時、ドラえもんの残したカタログを見つける。そこにはさまざまな秘密道具が載っていた……
2007年に「未来の買いものはご用心」というサブタイトルでアニメ化ずみ。前回も今回も基本的には原作通りで、映像でさまざまな道具を見せるところに面白味がある。
今回は友人を原作より多く登場させて、その秘密道具を出してやるかたちでカタログの素晴らしさを強調。全体的に作画もていねいで、のび太がぼやきたくなるのもわかる冒頭の自転車の朽ち具合や、未来の自転車を使う時に市街地を数秒だが背景動画で表現したこと、自転車が空中でバラバラに分解するアニメーションなども目を引いた。
しかし自転車の分解にいたるまでチェイスは、2007年版に軍配をあげたい。当時に背景動画に用いていた3DCGの市街データを応用して、ゲームのような主観視点をまじえて表現していたのだ。2005年のリニューアルからしばらくつづけられたその手法は、TVアニメでは珍しくも面白い試みだったし、かなり成功していたと思うのだが、なぜ数年でやめたのだろうか。