とし【利し・疾し・敏し】 形容詞(ク活用) - 減点されない古文

とし【利し・疾し・敏し】 形容詞(ク活用)

スパッ!

意味

利し・鋭し

(1)鋭利である・よく切れる・鋭い

疾し・迅し

(1)勢いが激しい

(2)(速度が)速い

(3)(時期・時間が)早い

敏し・聡し

(1)すばやい・すばしこい

(2)鋭敏だ・感覚が鋭い・さとい

ポイント

ぐ」と同根の語という説があります。感覚的には、「スパッ!」ということでしょうね。

そのことから、もとは「鋭い」ということを意味したと考えられています。

でも、古文だと、「疾し」の意味で用いて、「速い」「早い」って訳すことが多いよね。

おそらくですが、シャキシャキしていて、スパッとした動きを、「鋭利な刃物のように速い」とか、「突風のように素早い」という比喩的感覚で、「とし」と言うようになったのではないでしょうか。

言語生活の実態としては、人間の動きを形容することが多いので、「速い」「早い」という意味での使用頻度が増えたのだと思います。

そのうち、この「速い」「早い」という意味での「とし」の連用形「とく」は、副詞として定着していきます。

例文

剣刀 諸刃のときに 足踏みて 死なば死なむよ 君に依りては (万葉集)

(訳)剣刀の諸刃の鋭いのに足を踏みつけて、死ぬなら死のうよ。あなたのためなら。

春やとき 花や遅きと 聞き分かむ 鶯だにも 鳴かずもあるかな (古今和歌集)

(訳)春(が来るの)が早いのか、花(が咲くの)が遅いのかと 声を聞いて判断しようしたら そのうぐいすさえも 鳴かずにいることだよ。

大蔵卿ばかり耳とき人はなし。(枕草子)

(訳)大蔵卿ほど耳の鋭敏な【耳ざとい】人はいない。

とき時はすなはち功あり。(徒然草)

(訳)すばやい時は必ず成功する。

さるべき人は、とうより御心魂のたけく、御まもりもこはきなめりとおぼえ侍るは。(大鏡)

(訳)しかるべき【のちに偉くなるはずの】人は、早くから【若い時から】ご胆力が強く、(神仏の)ご加護も堅固であるようだと思われますよ。

ここでの「とう」は、連用形「とく」のウ音便です。