断定の助動詞「なり」の連用形は、どうして「なり」と「に」のふたつがあるんだ?
もともと「体言 に・あり」だったからです。
「に」と「あり」が結合できるものは「なり」になっていきました。
「に」と「あり」が結合できない場合は「に」のままで表記されることになります。
体言 に て あり
体言 に ぞ ある
体言 に し あり
体言 に も あり
体言 に こそ あれ
などの表現は、「て」とか「ぞ」が間にあることによって、「に・あり」が結合することができません。このときの「に」は、文法の分類上「断定の助動詞の連用形」と考えます。
じゃあ、
にんじんにてあり
の「に」は「断定の助動詞の連用形」ということか。
そうです。
なお、「あり」は、「おはす」や「はべり」などの場合もあります。
「おはす」も「はべり」も、敬意をぬけば「あり」に近い動詞ですから、要するに「あり」に準じた語があれば、「に」は断定の助動詞と考えます。
とにかく、「断定の助動詞の連用形」の「に」は、「て」とか「ぞ」とかをはさんで、後ろに「あり」とか「はべり」といった「あり」っぽい動詞が来るということなんだな。
基本的な理解はそれでOKです。
あとは、時代によっても違うのですが、「体言にあり」が、そのまま「にあり」のままになっている文もあります。
特に、後ろに「ず」があって、否定文になっている時は、「に」と「あり」が「なり」に詰まらずにそのまま残っているケースがあります。
「この川、飛鳥川にあらねば」
などというケースですね。
これは、
「この川、飛鳥川ならねば」
とはならないのか?
なっている場合もたくさんあります。
このあたりは、言語の特性上、「必ず」はないということですね。
ルールっぽく言っておけば、
後ろに「ず」を伴うときは、「体言にあらず」というように、「にあり」が「なり」になっていない場合がけっこうある。
となります。
まとめ
注意点として、次の4点をおさえておきましょう。
①体言+に+あり の場合の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形である。
②「に」と「あり」の間には、「て」「し」「も」「は」「ぞ」などの助詞が入ってくることがある。(例:「にてあり」「にぞある」など)
③◆尊敬語「おはす」(訳は「いらっしゃる」)
◆丁寧語「はべり」(訳は「あります・ございます」)
などの語は、敬意をとると「あり」なので、
「体言 に はべり」
「体言 に おはす」
などの「に」も、断定の助動詞「なり」の連用形と考える。
④ 「体言 に あら ず」
などのように、後ろに「ず」があり、否定文になっている場合は、「なり」になっていない場合も多い。
こは貴きにんじんにぞはべる。
このときの「に」は断定の助動詞の連用形と考えます。